燐寸箱 001/映像脚本
【登場人物】
・坂井真紀(サカイマサキ):三十三歳、男。
・岡崎友紀(オカザキトモキ):真紀の友達、三十二歳、男。
○三階建てアパート・外景
うつむきかげんで外階段を上って行く男―岡崎友紀(三十二歳)。
○真紀の部屋・外
友紀が玄関のチャイムを押す―チャイム音。
真紀がドアを開ける。
友紀「久しぶり」
真紀「ああ」
部屋へ入る友紀。
○真紀の部屋・内
テーブルの上に大量の燐寸箱が散乱している。
友紀「(マッチを見て)うわッ、スゲェな! これ、どうしたんだよ?」
真紀「こナいだ実家に行ったら、親父が『こんなの見つけた』って、出して
来たんだよ」
友紀「オヤジさんのかァ。それにしても、スゲェ量だな」
真紀「ああ」
友紀「今どき、喫茶店に行っても、マッチなんか置いてないから、ある意
味、貴重だよな」
真紀「ああ」
友紀「これ、どうするんだよ?」
真紀「ああ…」
友紀「どうした? まさか、片想いの女、いや女性と上手く行かないからっ
て、どこかに放火でもする気じゃないだろうな!?」
真紀「そんなことしねぇよ!」
友紀「ホントかよ? 怪しいなぁ」
真紀「しないって!」
と言いながら一つのマッチを取る。
ブラックアウト。
○マッチを擦る音
パッと火が灯る。
○レトロな喫茶店・内
真紀と友紀が向い合わせで座っている。
友紀「(周りを見回し)えッ、ここ、どこだよ!?」
真紀「(手に持ったマッチを見せ)ここだよ」
友紀「ここだよって、なんでこんなレトロな喫茶店にいるんだよ!? さっき
までマサキの部屋にいたのに…」
真紀「だろ? そうなんだよ」
友紀「何がそうなんだよ?」
真紀「あの大量のマッチの中から一つを取ると、そのマッチに書いてある場
所へ行けるんだよ」
友紀「取るだけで?」
真紀「いや、そこに行きたい!と念じながら取るんだ」
友紀「へぇ。って、そんな訳ないだろ! 夢か? 二人で同じ夢を見てるの
か?」
真紀「あッ!」
○真紀の部屋・内
テーブルを挟んで、真紀と友紀が座っている。
真紀「ダメだよ、否定的なことを言っちゃ!」
友紀「ど、どういうことだよ!? マサキの部屋に戻ってる!」
真紀「トモキが夢だなんて言うからだよ」
友紀「だって夢だろ! 何故かわからないけど、二人同時に同じ夢をみたん
だよ」
真紀「起きたまま?」
友紀「いや、一瞬の睡魔に襲われたんだよ、きっと」
真紀「そうじゃないって! じゃあ、もう一つ取ってみるぞ。いいか?」
友紀「え、あ、ああ…」
真紀が大量のマッチの中から一つを取る。
ブラックアウト。
○マッチを擦る音
パッと火が灯る。
○銀座の高級クラブ・内
真紀と友紀がボックス席に並んで座っている。
友紀「マサキのオヤジさんは、こんな店にも来てたのか!?」
真紀「みたいだな。おい、キレイなホステスさんが来るぞ!」
友紀「ダメだ、高い!」
真紀「あッ!」
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