詩みたいな【音色】#シロクマ文芸部

小牧幸助さんの企画「ラムネの音」に参加させていただきます☆

お題「ラムネの音」から始まる物語

【音色】(409文字)

ラムネの音色は雨音に似てるよ
そう言うと
ラムネってなに？って君は聞いた
美味しい飲みものだよ
おいしいの？
君の目が輝く

聴きたい？
のみたい

ぼくは冷蔵庫からラムネの瓶を出す
これだよ
君は透明な青い瓶をめずらしそうに見る
そしてラムネの瓶の口に触れる
この丸いのはなに？

よく見て、聴いててごらん
そう言いながらぼくは
ビー玉を押し込む

かしゃんっ
しゅるるるるるるるる……

君は目をみはる

コップにラムネを注ぎ入れる
しゅーーーふわぁ
しゅふぁ
しゅふぁ
ぷちゅ
ぷちゅ
ぷち
ぷち

君はじっと耳をすます

言われた通りに
よく見て、聴いている

そしてコップを手にとって
そおっとひとくち

どう？
うん

あまおと……
かどうかはわかんなかった
でも、とってもおいしいね

ぼくたちは笑い合う
感じ方はちがっても
喜び合うことはできる

やがて窓の外から
ほんとうの雨音が聴こえてくる
ぴちょ
ぴちょ
ぴち
ぴち

君とぼくはじっと耳をすます

ぷちゅ
ぴちょ
ぷち
ぴち

ラムネの音色と雨音が
重なり合っていく

君とぼくの心も

おわり

© 2024/6/30 ikue.m