30歳夏、臓器をいっこ取った話。(1)

この世に生まれて30年と少し、健康な事が何よりの自慢だった。

38度を超す熱なんて滅多に出したことはなかったし、膝をすりむく以上の怪我もした事がない。
健康診断は常にオールAだったし、生理痛もほとんどなければ周期も一定。
バランスよく食事は取っているつもりだし、日々適度な運動を心がけている。
検診や予防接種、出産以外で病院にお世話になることは無いだろう、と漠然と思っていた。

なのに今、おへその下には10cmを超える大きな傷があって、私の右の卵巣は無くなってしまったらしい(見えないからよくわからないけれど)。
人生とは何が起こるかわからない。
一寸先は闇、だ。

原因は卵巣出血。
排卵のある女性なら誰でも発症する可能性があって、80%は自然に止血し症状が消退するらしい。
私の場合は1週間の入院を経ても貧血が悪化の一途を辿り、ショック症状を起こしたため輸血、翌日手術となった。
一度止血しかけていたがおそらく再出血している、ということだった。


お腹を開けて初めてわかったことだけれど、出血箇所が運悪く動脈だったために出血が多く、肝臓の位置まで血が溜まっていたらしい。
術前、術中の出血量は合わせて2900ml。
再出血を起こしたのが病院内じゃなかったら命に関わっていた、と聞いてぞっとした。

これもお腹を開けてわかったことだけれど、子宮内膜症を発症していて右の卵巣にはチョコレート嚢胞ができていたらしい(卵巣に腫瘍があることは半年前から知っていたのだけど、MRIも撮った上で血腫なので心配ないと言われていた。内膜症は自覚症状がなかったので診断がついていなかった。どうやら婦人科関連の疾患はお腹を開けてみないとわからない事がたくさんあるらしい)。


卵巣は残す前提だったが止血が難しく、さらに卵巣の状態が悪かったので摘出せざるを得なかった、と説明を受けた。

手術前から、動脈から出血している可能性があるので卵巣を摘出せざるを得ない可能性があると聞いていた。
手術室で目覚めたとき、下腹部全体の重くズキズキとした痛みから、腹腔鏡手術では済まなかったこと、そして右卵巣は残せなかったのであろうことを察した。
だから病室で卵巣を残せなかったと聞いた瞬間はやっぱりね、以上の感想はなかった。


右の卵巣だけで済んでよかった。
お腹の傷は頑張った勲章。
先生、生かしてくれて有難う。
生きてるだけで丸儲け、生きているって素晴らしい!!!

死んでたかもしれない、という言葉のもつパワー、そして強い痛み止めの副作用のせいなのか、私は完全に術後ハイになっていた。




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