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バッグの中身って

なぜ他人のバッグの中身に興味を持つんだろう。

「what's in my bag」「お洒落な人のバッグの中身」みたいな特集や動画がたくさんありますよね。需要のある、人気のコンテンツなのだと思います。

そういう記事を見て影響されてした買い物がたくさんあります。あれはカタログ代わりでもあり、憧れを刺激する広告でもある。

大抵ああいう記事で紹介されるのはヴィトンやシャネルやサンローランやプラダや…とにかく世界の名だたるハイブランドのアイテムたち。確かに可愛いと思うんです。実際、持ってるとテンション上がるんですよ。例えばキーケースとか、私の場合は一人暮らしの時の鍵って家の鍵くらいしかなかったから玄関以外で手に取ることほぼないわけです。でもバッグの中に入ってるだけで、それがちらっと見えるだけで嬉しくなれるんですよ。超定番、ジミーチュウの星のやつセールで買って使ってました(ちなみにあれ傷むのけっこう早いと感じました)。

お財布やカードケース、スマホカバーにメイクポーチ。こういうものは、日常生活で人の目に触れやすいものだからいいものを持ちたい。でもこの場合の「いいもの」って、「愛着を持って長く使えるもの」というよりは「自慢できるハイブランドもの」であったなぁと思うんです。自分の選び方が。もちろんハイブランドのものは上質なレザーアイテムが多いのでそこはイコールであることもままあるんですが、気持ちの比重として。だって買うときに「これは20年後の自分が持っても違和感のないデザインかな?」とは考えずにパステルカラーやポップなものを選んでましたから。

OLになりたての頃は仕事が忙しくて、会社と社宅の往復ばかりの毎日でした。週末や平日の夜に友達や恋人とご飯を食べたりお茶したり、そういうときにしか「バッグの中身」たちは人目に触れない。もちろん自分は毎日目にするわけだけど、自分がその小物によって「テンション上がる」の魔法は1年も持ちません。1年後には、また違うバッグの中身が欲しくなる。そういう日々を、いつまでも繰り返していました。27歳で結婚するまでは。

今振り返ると「バッグの中身」を素敵にしたいがためのショッピングって、その衝動って、すごく不思議なものだったと思うんです。ハイブランドの小物が欲しい気持ちはどこから来るんだろう。そこそこの値段でも「可愛い」と思うアイテムがたくさんあるというのに、最も高額なアレが欲しい。むしろそこそこの値段のコレの粗を探したくなってしまう。「可愛いけど、やっぱりもうフルラは年齢的に違うかな…」「ケイトスペードはやっぱり皮の質が安っぽい気がする…」みたいな。実際は何歳が持ったっていいし、皮の質なんか私にわかりっこないのに。ただ高い方が欲しい心理。


私の夫はお坊ちゃん育ちなので、身につけているものは学生時代からいいものでした。でもころころと新しいものに変えるということはなくて、本当に気に入った上質なものをメンテナンスしながら何年も何年も使い続けている。長く愛されて磨き込まれたレザーは経年美化が進んでいて、新品の輝きがチープに見えてしまうほど。私は夫のそういったスタイルを見て、自分の買い物の仕方や考え方を改めたくなりました。今でもハイブランドの小物は買います。でも「本当に気に入ったもの、メンテナンスによって10年後も愛せるもの」を基準に選んでいます。

「セールだから」で小物を買うことはやめました。高いものが安く買えるから欲しいだけじゃない?定価なら欲しくないんじゃない?そもそもそんなに気に入ってないんじゃない?いろんな質問を自分に投げかけると見えてくること、私は「高いモノ」が欲しかったのだという真実。「高いモノ」でいっぱいのカバンに憧れていたということ。

OLになって自分でお金を稼いで、欲しいものを買うこと。それは悪いことでもなんでもない。私は頑張っている。真面目に働いている。沢山の理不尽に揉まれながら毎日仕事をして、その対価として得た給与で好きなものを買うことがわたしの喜び。

そういう風に考えていました。今も基本的には変わりません。でも夫を見て自身を顧みたことで、ただ「消費」するだけの買い物はだいぶ減ったと思います。気持ちの上で。

そして「バッグの中身」特集に全く興味がなくなりました。もはやあれは広告のようなものだと思っています。そういえば雑誌を読むことも減ったな。雑誌は私にとって、物欲を刺激する最たるコンテンツでした。見なければ入ってこない(サロンで出されたりすると眺めちゃうけど)。

改めて考えると、頑張って頑張って稼いだお金を注ぎ込んで、背伸びして買うほどの価値がある小物なんて本当にごく僅かしかないと思いました。将来は広い家を買いたいしいい家具に囲まれたい。浪費している場合ではないのです。それが仕事を頑張るモチベーションになるような、10年後も愛せるような、本当に素敵な小物ならいいけれど。

でも記事に載る誰かさんたちの素敵なバッグの中身は、大抵の場合翌年には総とっかえに近いレベルで変化しているものです。彼女たちと自分は違う。私は私の基準にあった「いいもの」を、いつまでも大事にする生き方で頑張っていこうと思います。




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