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コロナ前・コロナ中。訪問看護をしていて変わった事。

こんなことを書くと、最前線で働いている看護師たちはびっくりするかもしれない。

でも、私が今、訪問看護師をしていて一番感じているのは・・・・・

<<お菓子をもらわなくなった>>

これである。

うちのステーションは、比較的患者さんからの頂きものを断らない。
下町色がものすごーく濃ゆいので、患者さんたちが押しが強いせいもある。

「ワシのお菓子が食えんというのか??」
的な圧力を感じるのである。

私はダイエットを始めたせいもあって、月曜日に分かる一週間のスケジュールを見てお菓子回避方法を考えていた。
月曜は〇〇さん家だから、ジュースが出るな・・・
水曜の〇〇さん家は、今週はチョコレートじゃなくておせんべいだといいな・・・(おせんべいはダイエット中だけど食べられる)

出されたお菓子はその場で食べずに持ち帰る。
そうすると他のスタッフにあげたり、甥や姪にあげることができる。
ロールケーキだのバームクーヘンだの、お皿に切り分けられたお菓子なども次の訪問に急いで行かなければならないっ!!!という体でラップにくるんで持ち帰る。

これはいよいよラップにくるむことも難しいぞ・・・というケーキや生菓子などは、食べたふりして常時持ち歩いているジップロックに入れる。
(関係ないけどジップロックって変換したら実父ロックってなった。ちょっと笑った)

そして困るのが飲み物類。
ペットボトルドリンクをくれる人は神様に見える。
ペットボトルなら、お茶やお水ならありがたくいただけるし、甘いコーヒーやジュースも持ち帰れば誰かにあげることができる。

しかし、その場で飲むしかないカップやグラスに入れられた飲み物は飲むしかなかった。
お茶だと嬉しいのだが、
なんだかしらないけどジュースや砂糖入りの飲み物が出される事が多い。
(さすが糖尿病患者数が全国有数の町である)

アイスコーヒーと言われてグビリと飲んだら、加糖で甘すぎて泣きそうになったり、
緑茶かジャスミンティーだと思ったら加糖のレモンティーで甘すぎて吹き出しそうになった。
加糖が憎い。
想像してたのと味が違うと、お口がびっくりするのよ。

それらの試練(?)も、マスクひとつで大解決!!

<<コロナ対策でご自宅ではマスクを一瞬たりとも外さないことにしています!!>>

という風に、
あなたを守る為に、いただけません!なぜなら、あなたを守る為に、おうちの中ではマスクを外せないから!」
と、大声で主張できるようになった。

ケアが終わったら、私たち看護師にお菓子をあげるのを楽しみにしてくれている患者さんもいる。
いつもかわいらしい紙に包んで、いろんな種類のお菓子を持たせてくれる人がいる。
お疲れ様の気持ちを込めて、冬は暖かい飲み物を、夏は冷たい飲み物を入れてくれる人がいる。
おばあちゃんが入れてくれる、真夏のカルピスってなんであんなに美味しいんだろうか。
そういう人は、お断りしても遠慮しているのねと思ってぐいぐい勧めてきてくれる。
それを拒否することは傷つける事にもなりかねず、判断が難しいところなのだった。いただく方が平和なことが多々ある。
いつも申し訳なさと嬉しさでいただいていた。

だけど今は、コロナの名のもとに、気持ちはありがたくいただき、丁重にお断りできるようになった。

患者さんたちが私たちにくれていたお菓子たちは、やはり「不要不急」の産物だったようで、
不要不急を控えるようになった患者さんたちからは、お菓子の贈り物をもらうことがほとんどなくなったのである。
単純明快。不要不急のお菓子を買いに行くことがなくなったのだろう。

もしかしたら、「今週は看護師さんにこのお菓子をあげよう」というワクワクした気持ちを、コロナは奪ってしまっているのかもしれない。
でも、それは、私達看護師の健康のためになるし(余剰糖分がかなり減った)、患者さんの財産を守る事にもなる。
塵も積もれば山となるである。

コロナによる変化って
そんなことかよ!
のんきだな!
もっとこう、逼迫した重大は変化じゃないんかい!

読んでくれた方々、ガクーーーってなったかもしれない。
肩透かしを受けたかもしれない。

でも、こういうのんきなことが出来るのも、訪問看護の楽しい所のひとつ。

訪問看護は、
生と死のはざまをサポートしながら、お茶菓子の話をできるような不思議な空間なんですよ。

平穏死というのは、その人の寿命が「きちんと尽きる」「燃えきる」のを忍耐強く待つことでもある。
枯れていく人を見守るのは精神的体力がものすごくたくさん必要なのだ。

少しでも長く生きて欲しいという思いと、
もう、苦しまないで欲しい。
出来るだけ楽にこの世をされますようにという願い。

そんな思いが交錯する空間の中、大往生した人たちを讃えて、宴会が始まる事もあるのだ。

命を守るのはとても大事。
医療や看護が発達したことで、守られた命は星の数ほどあるだろう。

けれど、この先の超高齢化社会では、命が燃え尽きるのを見守る役目も、看護師にはあると思うんだ。

コロナは私たちから何を奪い、何を与えるのか。
きっと、医療従事者は自粛なんて無関係で、いつも以上に忙しく働いているに違いない。
でも、その中で、何かを感じることも大切だと思う。

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