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病院に行けば、こんな私でも必要としてくれる患者さんがいる、という心の支え。

「この病院で何年」「あの病院で何年」なんて、ちゃちゃっと書き終わると思ってたんですが、ついつい、エピソードが盛り上がってしまいますね。この辺り、まえがきみたいなものなのですが、避けて通れないエピソードが多いことに気付いた今日この頃です。

③平成12年・総合病院169床・千葉県(その2)

今のところ、この千葉の病院で働いた期間がいちばん長いです。10年と6ヶ月働いていました。千葉県と茨城県の境目のようなところにあったので、茨城県の職員がとても多かったです。茨城県の方は、千葉県で働くと少し給料がいいらしく、1時間とか2時間とかかけて車で通勤するスタッフも多く在籍していました。

この病院は、院長やドクターがフランクで、よく仕事終わりに食事に行ったり飲みに行ったり、夏は院長の自宅のベランダで花火大会を眺めながらみんなでバーベキューをしたのも楽しい思い出です。

そして、170床規模ではあるものの、大学病院やもっと大きな病院と違い、「4月になれば新人が入職してくる」という病院ではなかったので、季節外れに入職したいちばん若い自分が、その後数年ずーっといちばん下っ端でかわいがってもらえる立場でした。気さくなおばさん達が多く、夜勤の時によく、自家製のおかずをごちそうになったりしたのが懐かしいです。

働いておきながらこんな事言うのは恥ずかしいというか申し訳ないというか懺悔の気持ちでしかないのですが・・・

この病院で働いていた頃の自分、最低のナースでした。

まず、年齢が若く精神的にも未成熟、さらには「自己責任」などという言葉をまだ知らない時期なので、悪い事は全部人のせいにするようなメンタルだったんです。

大阪から千葉に出てきて、とにかく彼と一緒にいたくて仕方なかったので、とにかく仕事を定時に上がる事しか考えていませんでした。患者さんにも優しくなかったと思います。

プライベートでも、摂食障害が悪化したり、やっと遠距離恋愛ではなくなったのに、物理的距離は縮まっても心理的距離の縮め方をしらなかったので、どんどん彼に依存し、恋愛依存症の状態でした。

仕事のストレスとプライベートの状況、自分のメンタルの弱さが重なり、うつ病にもなりましたし、8年程一緒にいた彼と別れた後は、うつの波がどん底まで落ちて動けなくなってしまい、あわや師長に大阪に強制送還されるところまでいってしまいました。

そんなナース、ちゃんと働けるわけないじゃん。

でも、働き続けていました。すごい。

ナースって、よっぽどの大問題を起こさない限り、クビになったりしません。せいぜい部署が移動するくらい。時々あり得ないくらい色んな意味で仕事ができなかったり、ありえないくらい横暴で他者と人間関係が築けなかったり、薬を常用しているような精神疾患のナースもいるのですが、「質」よりも「人数」を従事する今の看護社会では、「あんなナースでも、1人分の価値がある」ということなのですね。

「あんなナースでも、1人分」の意味。

病院では、看護師の配置基準という物があります。

何人の患者さんに対して何人の看護師が働いているか、ということですね。

これが、看護師の人数が多いと「看護が手厚い」とされて、病院に入る収入も変わってきてしまいます。だから、この看護基準が適応されたとき、どの病院も必死になって看護師を集めていました。また、退職等で一気に看護師が減ったり、産休に入る看護師が多かったりするとこの基準が満たせなくなることもあり、常に看護師の人数は看護部の悩みのタネなんです。

だから、この配置基準で多く収入を得ようとすると、あまり看護師ひとりひとりの質を見極めずにとりあえず誰でもコーイ!というのが、中小規模の病院にありがちなんです。

これが、国公立病院や大学病院になると、入社試験などがありふるい落とされます。要は、よい病院は看護師も働きたい人が多いので質の良い看護師を集める事ができ、そこそこの病院は、通勤しやすい場所に住んでいる看護師を手当たり次第・・・・みたいな感じですね。やたらと給料が良かったりして、新幹線を使って通勤している看護師もいたことがあるけど、それって、ほんと、ヤバいですよね。

私が、不真面目だったり自己中心的だったり、病気で倒れたりしながらも働いて来れたのは、そんな背景と、そんな自分でも一緒に働いてくれていたスタッフのみなさんと守ってくれていたであろう上司のおかげなんだなあと、今になってやっと気付けました。

うつ病でどん底に落ちても回復できたのは、常にナースとして必要とされていることを感じられたから。

病院に行けば、こんな自分でも必要としてくれる患者さんがいる、というのはとても強い心の支えでした。

この時、准看護師として働き始めて10年目になろうとしていました。

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