それでも世界は 輝いている 18話
「では、ヨウ君。席に戻って。せっかくだから、その辺りの話をしようか」
ヨウは項垂れる。もう一度、デスクに置かれたエレメントボールを見る。電源を切られた今は、静かに佇んでいるだけだ。
好奇の目を向けられ、クスクスと笑われながらヨウはサイの隣へ戻った。サイは気まずそうに微笑みながら、「気にしちゃ駄目だよ」と励ましてくれた。その事が、余計ヨウを傷つけた。
ソフィアだけが目的で此処に入学したのではない。ジンオウからの指示で、ヨウはローゼンティーナで調べなければいけないことがある。ソフィア獲得は、あくまでヨウの目標と言うだけだ。
「大丈夫だよ……」
顎肘をつき、ヨウはエドアルドの話を聞く体制に入った。
正直、ソフィアの事は概略を知っているだけで、詳細な仕組みを知らない。
エドアルドはデップリとした腹を摩りながら話し始める。小さな声だったが、デスクにあるマイクから拡声される。
「ソフィアは、メタエーテリアルの精霊をこちらに呼び寄せ、封印した物です。精霊の格にもよりますが、上位の精霊にもなると人格が存在します」
エドアルドの声に会わせ、目の前に浮かぶスクリーンの表示が切り替わる。上位の精霊は、オリジナルソフィアを初めとする数点と、御剱全般に宿っていると書かれている。
「そのため、オリジナルソフィアと御剱は、宿る精霊との相性が物を言います。たとえ、リアクターや繰者が超人的な能力を秘めていたとしても、精霊との相性が悪ければ、使いこなすことはどころか、ソフィアライズも転神もできません」
「それを、改良したのが量産型ソフィアなんだ」
サイはヨウにだけ聞こえる声で言って歯を見せる。
「ローゼンティーナで生産されるソフィアは、相性という最大のハードルをグッと下げた物です。もちろん、下位の精霊ですから、その力はオリジナルソフィアには遠く及びませんが、それでも、ソフィアという兵器は人類が手にした武器の中でも強力な物となっています」
兵器。その言葉に、ヨウは不安になる。
昔、人類は核兵器を抑止力として生産、管理していたらしい。使わない兵器。だが、ひとたび核兵器が放たれれば、それは大きな脅威となる。魔神戦争のおり、人類は核兵器でメイキョウに立ち向かおうとした。だが、それは失敗だった。人類は地球を汚染しただけで、結局は敗北した。
魔神機には既存の兵器は疎か、核兵器すら歯が立たなかった。魔神戦争終了後、メイキョウはこれまでの仕来りや因果を断ち切るため、地球をガイアと改め、その技術力を用いガイアを再生させたが、まだその再生は完全では無く、地域によってはまだ人の住めない場所も沢山存在していた。
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