それでも世界は 輝いている 22話

「はぁ~、もう、仕方ないわね。光輪祭のメンバーは五人か……」

 顎に手を当てたアリティアは、何かを思いついたかのように指を差し点呼を始めた。

「1、2、3……」

 一人目は、眼鏡の少女、二人目はシジマ、三人目はヨウで、最後の指はヨウの後ろに隠れるようにいるサイに向けられた。

「そこの小さいの」

 呼ばれ、背中にいるサイが「ひっ」と小さな悲鳴を上げた。

「聞こえないの? チビ、あんたよ、あんた。おかっぱ頭の眼鏡チビ。あんたで四人。私を含めたこのメンバーで光輪祭に出るわ」

「ぼ、僕が? 無理だよ! いや、あの……無理です……」

 サイは小さい体をさらに小さくしてヨウの後ろに隠れてしまった。しかし、アリティアは手を伸ばしてサイの耳を引っ張ると、強引に前に引きずり出した。

「決定よ。私の言うこと、聞けないの?」

 不機嫌そうなアリティアに問われ、サイは首を縮めた。

「……いえ、でも……、勝つことを考えるなら、僕じゃ無くて、ほかに出来る人が沢山いますし……」

「勝つ気はないの。だから、誰でも良いの」

「誰でもって……」

 サイは視線を上げてアリティアと一瞬だけ目を合わせるが、すぐに目を逸らしてしまった。アリティアは「異論は認めない」と言うと、今度はヨウを見た。

「此処で話すのも何だし、そこの喫茶店に入りましょうか」

 否定できない響きを持ったアリティアの言葉。ヨウが返事をする前に、アリティアはさっさと歩いて行ってしまう。

「悪い人じゃ無いからさ……」

 盛大に顔を引きつらせながら、シジマはヨウとサイの背中を押して歩き出す。

 サイではないが、光輪祭のメンバーに選出されてしまった。アリティアは仕方なく出場するだけのようだが、サイと自分は全く意味合いが違う。どんな競技があるのか、それすら知らされていないが、各寮の代表者と言うことは、かなり上位のエストリエ達と戦うことになるのだろう。

 なすがまま、ヨウはアリティアの正面に座ってしまった。

「隣にいるのは、私の親友、レイチェルよ」

「レイチェル・ミナ・ヴァリウスです」

 レイチェルは頭を下げる。ヨウとサイも頭を下げた。

「ヨウ・スメラギです」

「サイクロフォン・ラドクリフです」

「さて、知ってると思うけど、一応自己紹介を、私はアリティア・ジジル・ウォン。エストリエの第五席よ。この後ろに立ってるのが」

「シジマ・カーネギー。二人とは友人です」

「あら、そうなのね。なら、話が早いわ。今回、光輪祭はこの五人で出るから。レイチェル、手続きをお願いね」

 一方的に話を進めるアリティアに、レイチェルは難色を示す。

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