それでも世界は 輝いている 25話
「帰ってきたのね? ね、ヨウは? 一緒なんでしょう?」
由羽は素足のまま縁側から飛び降り、ジンオウに駆け寄る。
「ヨウの奴か? あいつは……」
ジンオウは無精ひげを弄りながら、青空を見上げた。
「ん~、今頃、ローゼンティーナだろうな。もしかすると、この時期なら、下手をすれば光輪祭に出ているんじゃないか?」
「ハァ?」
由羽は甲高い声を出す。
「ちょっと! ジンオウ! ローゼンティーナってどーいう事よ! 乙姫の未来視で、ヨウをローゼンティーナに行かせるなって言ってあったでしょう!」
「ああ、あの未来視な。おう、無視した」
あっけらかんと言い放つジンオウ。由羽はワナワナと両手を握りしめた。この男を殴り倒してやりたいが、由羽の非力な体術など彼はそよ風程度にしか思わないだろう。それどころか、反撃されて地面に転がされるのがオチだ。
「クッ! それで、乙姫に用って訳? ええ?」
由羽は凄んでみるが、ジンオウは何処吹く風だ。大概、明鏡の人物は由羽が凄めばすぐに折れるが、この男は別だ。
「おう、そうだ。だから、呼んできて欲しい」
「それは命令? 知ってるでしょう? 私は、私自身の命令と、ヨウの命令しか聞かないわ!」
「少し見ない間に、身長と胸だけじゃなくて、態度もでかくなったか。いや、どちらかというと、胸は余り成長していないか?」
「なっ! ジンオウ!」
由羽は顔を真っ赤にして胸を押さえる。確かに、乙姫や同年代の友人に比べると、由羽の胸の成長は若干遅れている。自分でも分かっているが、あえて指摘されると恥ずかしさと怒りがわき起こってくる。
「冗談だよ。俺とお前は、同格だ。冗談抜きで乙姫に用事があるんだ。頼む、あいつを呼んできてくれ」
「………」
ふて腐れる由羽。だが、次の一言が由羽を動かすことになった。
「未来視でも出ているだろう? 世界は荒れる。恐らく、この流れは止められない。そうなれば、ヨウの奴も巻き込まれる」
「え?」
「すでに、ローゼンティーナにはコビーとレアルも向かっている」
「コビーとレアルが?」
「ああ」
「なんてこと! レアルの奴、私に抜け駆けしてヨウと遊ぶ気でしょう! 乙姫を連れてくれば良いのね!」
「レアルが遊ぶかどうかは分からんが、コビーは羽目を外すだろうな。羨ましい」
「乙姫を連れてくるから、中で待ってて!」
言うが早いか、由羽はサンダルを突っかけて社から出て行った。
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