それでも世界は 輝いている 20話

 ローゼンティーナの授業は多岐にわたった。

 数学、現代文、歴史、そうした基本的な授業は当然として、機械工学からセフィラー学をこなし、戦闘訓練は毎日のように行われていた。

 一週間、ヨウは慣れない集団生活に溶け込もうと、積極的に動いた。まず、サイが友人達に紹介してくれた。ブラックウッド・ロッジの寮生である彼らは、快くヨウを迎えてくれた。彼らもまた、ヨウとゼノンの戦いを見ていたのだ。

「あの時は残念だったな。お互いが生身の戦いなら、絶対にヨウが勝っていたんだけどな」

 射撃訓練の際、褐色の肌をした青年、タパス・グリアーノが残念そうに言う。

 誰もが口を揃えて同じ事を言うが、やはり結果は結果だ。決められたルールの中で勝てなければいけなかった。相手がソフィアを使おうが使うまいか、負けてしまっては意味が無い。

「いや、ゼノンは強かったよ」

 率直な感想だった。ソフィアを使っていなければ、ヨウの圧勝だったかもしれないが、それでも、ゼノンはソフィアの扱いには長けてた。もしヨウがソフィアを持っていたとしても、結果は変わらなかったかもしれない。それは、同時に自分にまだまだ伸びしろがあることを示していた。

 エレメントボールでの素養の検査は残念な結果に終わったが、それでも、ヨウはソフィアを手にすることは諦めていなかった。それも、おいおいこの学園で学んでいけば良いことだろう。

『次は、ヨウ・スメラギ。前へ』

 放送でヨウが呼び出された。

 ヨウは前へ出て、腰のホルダーからハンドガンを取る。つい先ほど、ヨウが教師であるメイ・カササギから渡された物だ。黒いジャケットにサングラスをしたメイは、口を真一文字に結んでおり、何を考えているか分からない年齢不詳の女性だった。聞いてみたところ、誰も彼女の年齢を知らず、さらに彼女が笑っているところを見たことが無いという。

 射撃訓練場は、何も無いだだっ広い部屋だった。入り口から十メートルほどいったところに、赤いラインが引かれており、生徒はそのライン際に立って出現する標的にプラズマガンを打ち込んでいた。

 ヨウが赤いラインの際に立つと、ブザーが鳴り響く。

 ヨウは右手を上げてハンドガンを構えると、電源入れた。僅かなチャージの後、発射可能を示すグリーンのシグナルがグリップの先で点灯した。

『開始だ』

 眼前に無数の青いラインが降り注ぎ、光が集約して標的を生み出した。

 青く輝く標的は、人形の物もあれば獣形のアタラの姿をした物もある。約二十メートル先の標的に向かって、ヨウはプラズマガンを撃った。青い奇跡を残し、プラズマは標的の中心部を貫き粉砕した。実弾の銃とは違い、プラズマガンは発射時の衝撃も音も少ない。威力も申し分なく、今はプラズマを用いた銃が主力となりつつある。

 最初の標的を破壊したヨウは、さらに出現した標的を続けざまに打ち抜いていく。通常、バッテリー一つに付き、一度に撃てる光弾は三〇発程度。ホールドして威力を高めれば、撃てる弾数は減るが威力が上がる。

 ヨウは次々と出現する標的を的確に打ち抜き、合計十体に命中させた。

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