それでも世界は 輝いている 14話

「二期生まで、相部屋よ」

「はい」

 ヨウは頷く。

 シノはもう一度ディスプレイに手をかざすと、呼び鈴が鳴らされた。「はい」と、中から声が聞こえ、すぐに扉が開いた。

「こんばんわ、サイクロフォン。突然だけど、話はマリアから聞いているわね。今日から、彼と相部屋になってちょうだい」

「………はい」

 サイはシノの顔を見て頷くと、伏し目がちな瞳をこちらに向けた。

「俺はヨウ・スメラギ。よろしく、サイクロフォン」

 ヨウが手を差し出すと、サイは弱々しくその手を握り替えしてくれた。

「じゃあ、ヨウ君。細かいことは、サイクロフォンから聞いてちょうだい。何かあったら、私かアリエールに連絡頂戴」

「はい」

「頑張ってね」

 シノはヨウにハグをすると、自室へと引き上げていった。シノの姿が消えるまで、ヨウとサイは見送っていた。

「改めてよろしく、ヨウ君。僕のことは、サイって呼んで。みんな、サイって呼んでいるんだ」

「よろしく、サイ。俺のことは、ヨウで良い」

 ヨウはサイに招かれて部屋に入った。

 思ったより、部屋の中は広々としていた。入り口の正面、西側には大きな掃き出し窓、その前にはテーブルがあり、左右の壁にベッドが置かれ、足下にはウオークインクローゼット、頭部には小さいながらも机があった。入り口のすぐ横には小さな流し台があり、その脇のドアの向こうはトイレのようだ。何も無い殺風景な部屋だが、その分室内が広く見えた。

「シャワールームは、各階に一つあるから、好きな時につかえるようになっているよ。食事は食堂が三階にあるし、一階と地下にはレストランがあるから、そっちで食べても大丈夫。僕が、北側を使っているから、ヨウ君は南側を使って」

「分かった」

 ヨウは少ない荷物をベッドの上に放ると、その上に腰を下ろして溜息をついた。

 色々あった一日だった。だが、悪くない一日だった。明日から、慣れない集団生活が始まると思うと、少しだけ緊張してしまう。

 サイは中央のテーブルに着き、もじもじとしながらこちらの様子を伺っている。

「どうかしたか?」

 ヨウは壁にもたれ掛かり、サイに尋ねる。

「ん? ああ……いや、あの……」

 サイは言い淀む。

 ヨウはシノから渡されたプレートとブックを確認してみる。パーソナルデータや電子マネーは、世界中にあるデータバンクで全て記録されているため、最新のデータで全て引き継いでいる。これで、外部との連絡も取れるが、アリエールから用意されたこの端末は間違いなく盗聴されているだろう。信用はされているのだろうが、アリエールとシノは、ヨウに戦ってほしくないのが本音だろう。

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