それでも世界は 輝いている 21話

『……よくやった。次、サイクロフォン!』

 溜息交じりにメイは良い、ヨウは緊張した面持ちのサイと交代した。

「がんばれよ」

 ヨウの言葉に、サイは人形のようにコクコクと頷いた。

 明らかに緊張している。彼は、実践には向かないと言っていたが、どうやらその通りのようだ。サイの放つ光弾は標的に掠る事さえできず、バッテリーをからにしてしまった。

 悄然と項垂れるサイに、心ない者達は笑うが、ヨウはサイを温かく迎えると、「次頑張ろうよ」と声を掛けた。

 一階にあるレストランで夕食を終え、サイと部屋に戻ろうとしていたヨウは、ロビーの中心で出来ている人だかりを目にした。食事に行くときには無かった人だかりだ。

「もしかすると、光輪祭の案内かもしれない」

「光輪祭?」

「四半期に一度、各寮生の代表グループが様々な課題をこなして、優勝を争うんだ。春にやるのは華輪祭、夏にやるのが光輪祭、秋が朱輪祭、冬が黒輪祭なんだ」

 何かが張り出されている。あまりの人の多さに、ヨウは背伸びをしてみたが、人の頭が邪魔で何が書いてあるのか全く分からない。頭一つ小さなサイは、危うく人の波に飲まれそうになり、這々の体で脱出していた。

「クソッ、何も見えない……」

 諦めて空くのを待とうと思った矢先、肩を叩かれた。

「ヨウ君」

 シジマだった。その後ろには、勝ち気そうな表情の赤毛の少女が立っていた。確か、生徒会のアリティアだ。そのアリティアの後ろには、大きな眼鏡を掛けた控えめな少女が立っている。彼女はヨウと目を合わせると、ニコリと微笑んでくれた。

「ヨウ、学校には慣れたかしら?」

 腕を組んだアリティアはヨウの横に来ると、人混みの生徒達の肩を叩いた。

「ちょっと、あんた達、退きなさい!」

 アリティアが声を張り上げると、ざわついていたロビーが一瞬にして静まりかえった。モーゼが海を割るかのように、人混みが割れ、アリティアは我が物顔でその間を突き進む。アリティアの後ろに眼鏡の少女が付き従い、ヨウとサイもシジマに促されアリティアの後に続いた。

「光輪祭か……。あ~……、やっぱり、今年も私の名前が上がってるわね」

 「シノの奴、余計なことをしちゃって」と、アリティアが隠すこと無くシノに愚痴を言う。

 ホログラムの掲示板には、代表者の氏名が五名書かれていた。その中の一人に、アリティア・ジジル・ウォンの名前もある。どうやら、この五名がリーダーとなり、他四名のメンバーを集めて光輪祭に出場するようだ。ただ、公平にするように、競技中にソフィアライズできるのは事前に届け出のある二名までとされている。リーダーが他のメンバーを全員ソフィアリアクターにしたとしても、競技中にソフィアライズできるのは固定の二名まで。他の三名は生身のまま競技に挑むようだ。

「ジジちゃん、仕方ないよ。ジジちゃんの立場なら、もう出るしかないって……」

 少女はアリティアの事を「ジジちゃん」と呼んだ。アリティアは渋い表情をしながら、こちらを振り返った。

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