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「ブログはもう辞めたんだ、帰ってくれ。」

──隠居して久しい俺に、男が訪ねてきた。

「ブログはもう書かないんですか。」

ブログ、か……。

「俺はもう書けない。」

「でも、みんな更新を楽しみにしています。」

「ブログはもう辞めたんだ、帰ってくれ。」

毎日必死に書いていたあの頃の情熱を失ってどれくらい経っただろうか。

「あなたのブログに心を動かされた人が沢山居ます。」

「あなたに憧れてブログを始めた人も居るんですよ。」

(いや、あいつはYouTubeに行っただろ……)

「書かないんですか、新型iPhoneのレビュー。買ったんでしょ。」

「iPhoneのレビューなんて今時いくらでも転がってるだろ。」

去年もそうだった。下書きのレビューが公開される事もなく、次の機種が出てしまった。重い腰が上がらない。腰が5トンぐらいある。

「あなたのレビューが読みたいんですよ。」

「そうか……。」

読者の期待を裏切るような物は出したくない──が、会社員の俺にはそのクオリティを出し続けるには限界があった。下書きのままの記事が増えた。

「俺には会社の仕事がある。生活もある。」

「あなたなら独立、余裕なんじゃないですか。」

簡単に言ってくれる。

あれだけ派手にやれば稼げてますよね?」

「あれはまぐれだよ。ただの運だ。」

「運だけであんな事できる人、いませんよ。」

「運も必要だ。」

「でも、あなたは持ってるじゃないですか。」

いやいや。父さん明日から宝くじで食っていこうと思うんだ、ってか?

「今月で10周年じゃないですか。今更降りるんですか?」

「良い節目だろ。」

自分もまさか10年も続くとは思わなかったが。

「レビュー、楽しみにしてますから。」

「帰ってくれ。」

男を強引に追い返した。

「また来ます。」

やれやれ。

原神も飽きてきたし編集画面ぐらいは開いてやるかね……。

(この話はフィクションです)

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