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ハイボール濃いめでお願いします#1 池袋でインプロヴィゼーション

窮鼠猫を噛む、火事場のクソ力なんて言葉が表す瀬戸際の一撃。
人の潜在能力は追い込まれてから本領を発揮したりする。
それは限界を超える為に切磋琢磨したスポーツ選手やアーティストだけではなく日本経済を支えている多くの社会人や学生たちだって同じ事。
けど、その潜在能力が顔を出した時、人々に注目されて賞賛に値する物かどうかは人によりけりと言える。

滑稽が放つ機転

Mr.お馬鹿さんこと増谷と言う男がいる。
名古屋から東京に帰ってきて久しぶりに再開した同級生に「俺ガクトだから」と理解に苦しむ発言で後の学生生活を散々な色に染めてしまった。
駅前の自宅に朝っぱらから生ゴミを捨てられ、女子から白い目で見られる様は実体験ではないが聞かされてから何年も経つが具合が悪くなる。
そんなハードコアな日々を過ごして来た増谷も高校、大学と進学し恋人もでき、持ち前のタフさで彼女と楽しいひと時を堪能する日々を送る。
薔薇色のLOVE LOVE日和ばかりではなく不法投棄みたいに捨てられた女性に気まぐれに呼び出されてヘコヘコ行けばドタキャン喰らうところが増谷らしくて僕は好きだった。
増谷を弄り倒してる唯一無二の親友に行く事を止められても行って馬鹿を見る辺りが男のチンケなロマンが香る行為は解らなくもないが
「残念=増谷」の方程式を完成させてしまうので無念で仕方ない。
そんな残念トップレベルの彼も男の性、浮気をしてしまった。
池袋のホテルに彼女と休憩に入り営みを終え、寝て起きたら彼女の機嫌はブラックホール真っ只中。
空気は張り詰め不機嫌が毛穴から毛穴に伝わってくる。
何か話さなくてはと声をかけても小声で「知ってるんだから」の一辺倒。
さっきまでの愛のあるシャウトしてた人とは思えない変わり様で増谷は戸惑いの渦中にいた。
取り敢えず退出時間なので外に出ると浮気がバレてますよと、諭吉がセットでも欲しくない申告をお見舞いされた。
詳細を増谷は聞かなかったけど瞬時に事の一部始終を把握した。
目の前の女は寝てる俺の指を使って携帯電話の指紋認証を......
どっちが悪いかと言えば浮気した方だけど
「そりゃないぜ、とっつぁん!!」な緊急事態発動中。こんな時に男なら潔く謝罪すればいい、正にそれに尽きる、いや、それしかない!!
漢増谷は小雨が降る池袋の片隅で通りすがる人々の目を気にせず最大限の謝罪
「土下座」を繰り出した。
「電話してよ、その女に」
傍から見れば、ごもっともな意見ですが御多分に洩れず増谷もポコチンiN my Head
進まない状況を停滞する沈黙と言うなの渋り。
このままじゃ傘がないわけじゃないけれど帰れないのでkeep on遊びの女を惜しみながら曇天な気分で携帯電話をかけだした。
「電話代わってよ」
切ってはいけない女同士の熱い火蓋を阻止すべく電話を代わらずに別れを告げ、それで事は丸く収まるかに見えたが違っていた。
つむじから爪先まで残念なビッチメン増谷は人生最大の機転を効かした。
未来永劫、返答は皆無の連絡先、時報に電話していた。録音された女性の声に虚しさ100%の独り言
「ゴメン、別れよう」
風前の灯にて息を吹き替えす増谷の人生最大のアドリブが池袋のラブホテル前で生まれた。
人は人生に一度だけでも起死回生の何かを捻り出せる。そんな時がまだ来てない僕もいつか出せそうだと増谷は教えてくれた。



























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