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「動物と機械から離れて」読書メモ

結構前に読んだ本で、メモだけしていたので、そのメモです。

金儲けを目的として必死に働く人たちのお陰で、私たちはみな経済的に裕福になるかもしれない。だが、経済的な必要から自由になったとき、豊かさを楽しむことができるのは、生活を楽しむ術を維持し洗練させて、完璧に近づけていく人、そして、生活の手段にすぎないものに自分を売り渡さない人だろう。
しかし思うに、余暇が十分にある豊かな時代がくると考えた時、恐怖心を抱かない国や人はないだろう。
人はみな、長年にわたって、懸命に努力するようしつけられてきたのであり、楽しむ様には育てられていない。
特に才能があるわけではない平凡な人間にとって、暇な時間をどう使うのかは恐ろしい問題である。
ー「孫の世代の経済的可能性」ジョン・メイナード・ケインズ

ケインズが100年前に予測した未来が今ですが、経済的には豊かでもまだまだ多くの人が働く時間も長く、ゆっくり過ごせていないように感じます。

勤勉は美徳である。という価値観や、自分の人生から仕事を引いた時に残るものの少なさとか、理由は多くあるのでしょうが、このケインズの言葉は改めて考える時代なのだと感じます。

日本人が大きな理念や物語を失い、ただモノや記号を消費するだけの時代ーそれを東(哲学者)は「ポストモダン」と呼ぶーに入り、それは人間の動物化を意味すると説いた。

戦後は豊かになることが幸せとも繋がり、そこで偉大な経営者や企業も生まれて、実際日本は奇跡的な経済成長も成し遂げました。ゴール達成!おめでとう!というのが現代だと思いますが、結局その先の大きな物語を描けずに、さらなる経済成長を求めるしかない、というのが今の日本の主流ですね。

正直、資本主義も含め、日本のこの傾向(経済成長を求め続ける)は当面続くのだと思います。ただ、その流れに身を委ねる人が幸せになるとは僕は思わないので、自分でどういった方向性が良いのか、それに向かってどうするのが良いのかを考えるのは大事なのだと感じます。

「大人になったら働いて家族を養うという旧来的な仕組みは、実は充実感が大きいわけです。しかし、ロボットやAIが労働をかなりやるようになったら、ベーシックインカムが導入されて、労働の充実感が減少し、生活にぽかっと穴が空いてしまう。週40時間労働だったのが、週20時間で良いとなったときに、残りの20時間をどう有意義に過ごすのか、このままいくと、多くの人が早々と定年になったオヤジみたいになってしまいます」
ー松原仁

共感します。人生ー仕事=残るものがない。みたいには絶対なりたくないです。

Aiがその膨大な感情データをもとに、あらゆる消費行動においてレコメンデーションを行う世界がやってくるかもしれない。そうなると「人間の動物化」が進むのではないか。

人間の動物化=思考停止。であり、実際、考えなくても成り立ってしまう世界になりつつあり、それは怖いことだと思います。どうしたら良いかを全てGoogle先生が教えてくれる時代は、その瞬間は楽かもしれないけど怖い。

わたしが落ち込んでいる時でも、ソーシャルメディアは「美しくあれ、幸せであれ」と常にプレッシャーを与えてくる場所です。なので、本当の感情をオープンにできません。
人々のウェルビーイングが向上するためには、安心できることが重要。

ソーシャルメディアの弊害の部分ですね。

自由の条件は、「自由から逃走するという自由」を認めることです。
21世紀にはいり、努力すれば生活がよくなるといったヴィジョンを多くの人が信じられなくなっている。ゆえに、努力しない自由も保障されるべきでしょうね。大屋

これもそう思います、がんばらなければ生きている意味がない、と思わされるような世界では生きたくない。

「働くことの意味を剥奪されると、人は存在の理由を失う」
ドストエフスキー

働くことには、金銭的報酬だけではなく、存在意義にも関わってくる、と。
昔は、大企業の清掃の写真とかがいても、この大企業の一翼を担っているというものがあったのが、ジョブ型やアウトソースになると、そこで働いている人は、存在意義を感じにくくなる、と。そうなった時に、自分の拠り所をどうするのか、どう寄り添えるのか、を行政は考えて欲しいですね。

人間と動物の差異は「欲望」と「欲求」である。
人間は欲望を持つが、動物は欲求しか持たない。動物の欲求は他者なしに満たされるが、人間の欲望は本質的に他者を必要とする。
アレクサンドル・コジェーヴ

人間の欲望は本質的に他者を必要とする、、、いいですね。消費などは全て差異を作るためのもの、という指摘もありますが、差異をつけたいのは、全部他者がいるから、です。
人は協力することによって、他の動物より強くなり生態系の頂点に立ちましたが、その一方で他人を気にするという部分をどうコントロールするのか、課題ですね。

「人間に残された唯一の能力は、見えないものを見る力。データにないものを考える力と言って良い。人間はその力をもっと働かせるようにならないとデータに動かされる存在になってしまう」山極寿一
曖昧なものを曖昧なままで了解しあうのが、動物の、特に異種間コミュニケーションである。

曖昧なものを曖昧なままで了解する。。。いいですねえ、、、

自分が何が正しいかを判断する思考力がなければ、雰囲気に流されてしまうだけでしょう。齋藤幸平

そうですねえ、、、、

「私たちに自由意志があり、それを実現するのが、自由だという発想の困難は、肝心の自由意志が非常に不確かで、把握が難しく、一貫しない点にある。自由のためには何よりも自由に使える時間の余白が必要であり、余剰の資金が必要である。つまり、自由が継続的に保証されるためには、他の何かを「しなくていい自由」が不可欠なのである。平野啓一郎。

まずは、最低限の余裕、余白が持てるぐらいのお金は必要。そうですね、本当にお金なくてもやっていける強者以外は、まず自分に必要なお金を得るところ、からですね。

20世紀的な幸福感、それも戦後の大量生産・大量消費を背景とした物質的、経済的幸福感は、かなり色褪せてしまったということだ。幸福は、モノ的で外在的なものから、よりコト的で内在的なものになりつつある。そして、AIの普及は、人間が「自分にとっての幸せとはなんだろう?」と考える機会と時間をより増やすことにつながっていくのではないか。
AIによって、ルーティンな仕事の代替が進むことを嘆くのではなく、ルーティンでない、新しい仕事を、生き方を作ろう。

まず、ある程度安心できるお金(人によって異なる)と、健康な心と体、これを確保したあとは、こういった幸福論などを考えたりできる、というのもいいですね。僕も、こういった本を読んだり、葛藤したり、矛盾を感じたりは好きですが、それができているのもある程度のお金の安心感と健康な心と体がある、と思っているので、そこをちゃんと作っていきたいと思います。

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