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「つながり過ぎた世界の先に」読書メモ

気鋭の哲学者マルクス・ガブリエルの新著です。
ZOOMでのインタビュー形式の書き下ろしのようで、かなり読みやすくなっているので、おすすめです。サクッと読めます。

気になった部分メモです。

ポスト・パンデミックの世界においては、持続可能なビジネスモデルで真に倫理的な企業が大成功を収める、と著者は言っており。それがウィルスから得た最大の気づきとのことです。

ここでテスラやフェイスブックは倫理的な企業を装っているだけで、実は悪どい企業である、と一刀両断しています。

確かにテスラは地球環境のためになるという名目でEVの車を売りながら、めちゃくちゃ電気消費量の多いビットコインを買っていたり、推進しているような感じです。マッチポンプであり、「真に倫理的」とは言わないですね。

その上で、著者は「人間は道徳的な生き物だと思う」と述べています。僕も同意です、性善説派です。

ゆえに今後は、「真に倫理的な企業」が大成功すると述べています。

また、今回のパンデミック後は枢軸時代以来の意識改革になるのではないか?とも言っています。

枢軸時代とはおよそ3,000年前ぐらいの人類がグローバルな意識を持ち、文明をもらたし、仏教やキリスト教、ギリシャ哲学が誕生したような時代です。

人間とは何か?人はどこからきてどこにいくのか?というような人間しか考えないような事を意識し始めたような時代です。ある意味、動物から完全に独立した時期なのかもしれないですね。

その次の画期的な意識の変化は近代におきました。きっかけはフランス革命で、民主的な法の支配がそれ以前のシステムよりも優れているという認識が生まれて、新しい時代に入った、と。今もこの時代ですね、民主主義のめための時代(全体主義の反動もあったものの意識を変えるほどではない)

この大きな意識改革を踏まえた上で、今回は3つ目の意識革命ではないか、と!なんというすごい時代に生きているのかとわくわくしますね。

実際に変わらないとしても、自分が時代の転換点に生きているという想いはワクワクしますね、なので、時代の大転換期だと感じたいです。

その3つ目の意識の革命が環境に対する意識の変化だ。と言っています。
この意識革命の引き金を引いたのは今回のウィルス。

自然はウィルスを通して我々にメッセージを送っている。我々も動物であり、自然の一部であるから、自然は私たちに訴えているのです。立ち止まらなければならないと。私はウィルスは地球の免疫反応だと考えています。人間が複雑な生態系をどんどん破壊するので、生態系が反撃しているのです。

本当に同意します。また、今回の著者(マルクス・ガブリエル)もそうですが、「人新世の資本論」の著者、斎藤幸平さんや、「世界は贈与でできている」の著者、近内悠太さんも全員若いです。30代中盤から40代前半。

こういった人たちが、今までの価値観(新自由主義、行き過ぎた資本主義)を転換できるような素晴らしい本を描いてくれることは、本当に嬉しいです。

むしろ、地球の免疫反応として、こういった考えの知性のある人たちを生み出してきたと考えられるのでは?とも思います。
あとはこういったことを考え実践できる人たちがどれぐらいいるかですかね、僕自身も思想や考えをすごい共感したとしても、自分の生き方に反映されているのか?と考えると、まだまだマッチできていない部分が多いので、その辺も課題として取り組んでいきたいです。

ネオリベラリズムの説明として、、
人間は基本的に利益に関心があり、可能な限りの利益を手に入れようとするのが合理的だという考えだからです。しかし利益とはそもそも何か、この理論(ハーバードの行動経済学などの新自由主義経済論)では定義されていません。なぜ最大限の金を得る努力をすることだけが利益なのか。

お金がある程度ないと不幸になりやすい現代ではありますが、お金があり過ぎても幸福になれるとは限らないので、自分に取って必要なお金とはどれくらいか?そのお金や欲望に呑み込まれずに上手く付き合っていけるか、など、考える必要はありますね。

僕がこんな本を読めたり、気持ちに余裕があるのも、ある程度金銭的な安心感があるからなので、お金は大事だなと思います。一方で、そのお金だけの執着ではその先には何もないので、あくまでお金は手段であって、それが目的にならないようにコントロールする必要はあると感じます。

著者はコロナ後のビジョンとして、「すべての人間が先住民族のように生きる社会」を提案しています。

この危機を経た後のビジョンとして、私は環境への配慮が行き届いた、技術的に進んだ世界を思い描いています。そこではもっとゆったりとしたスピードでグローバリゼーションが起き、人々が敬意と感謝の念を持って生きています。「ありがとう」という言葉が頻繁に交わされ、誰もが生きていることに感謝し、人との出会いや食べ物に感謝し、知的な生命が宿るこの地球に住んでいることに感謝しています。
それは感謝の気持ちに溢れた「ネイチャー・ポジティブ」な経済体制が、人に倫理的、哲学的洞察をもたらす世界です。消費者ではなく、洞察が主導する社会です。

このネイチャー・ポジティブな経済体制が、倫理資本主義でもあり、枢軸時代(世界に思想や哲学が生まれたころ)や、民主主義が始まったころ(それまでの王制などの価値観の転換)に続く大きい転換期なのだとしたら、なんとも楽しみな時代ですね。

しかも、この自然観などは、自然を支配する(人間が自然の上)というキリスト教的な考え方よりも、八百万の神、自然と一体というような日本人の培ってきた生命論と合致します。

自然が豊かで厳しくもある日本に住んでいる我々こそ、こういった生き方を提示していけるチャンスがあるのだと思います。

小さいアメリカを目指していくようなものではなく、違う価値観の提示をどうできるか、それに沿った人生をどう送れるのか、考えたいと思います。

とはいえ、まだネオリベラリズムや小さいアメリカを目指す方が経済の主軸であり、それを否定しながら、体現しながら生きていくのはなかなか難しい(というか覚悟を持てない、、、)とも感じています。

ただ、大きい方向性で言えば、そういった世界観になっていくのは間違いないと思うので、こういった本を読み、自分の意識を変え、それに伴い少しずつ自分の生き方もアジャストしていくような、そんな進め方をしていきたいと思います。




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