マガジンのカバー画像

小説

27
書いた小説のまとめ
運営しているクリエイター

#見開き1P

【見開き1P】平成メモリ

「平成ってどんな時代だったと思う?」  友人に訊かれてまず思ったのは平成の全てを見ていないのに答えるのは難しいというものだった。なにせ平成の一桁に生まれている。とりあえず出来る限り記憶を呼び起こしてみる。 「ゲーム機、ビー玉やコマの発展形のおもちゃ、大勢で一グループのアイドル、ギャル、クールジャパンと題してサブカルを大々的に取り扱うようになった、小型ミュージックプレイヤー、ネット、スマホ、kawaii、不景気、少子高齢化、環境問題、コンプライアンスが言われ始めて、あとテロ

【見開き1P】ナメクジ世界 is what it ought to be

※見開き1ページ相当の小説です  白いナメクジが黒いナメクジと盤を挟んでいる。盤は切り株の断面にあり、八×八の方眼となっている。その中央の四マスには白と黒の小さなナメクジが二匹ずつじっとしていた。 「もう少しいいところに住みたいと思ってな、勝たせてもらうぜ?」と黒ナメクジ。 「ごめんけど、俺も負ける訳にはいかないんだ」  ナメクジたちは牛のように大きく、そして白ナメクジのその巨体から親指ほどが分離した。それは小さなナメクジの姿を形成すると、動き出し、盤に乗って黒ナメクジ

【見開き1P】魔剣士ジャッコは一夜を駆ける

 黒いマントを着たかぼちゃ頭が日本刀を振り下ろす。白い浮遊体は見事に両断され、 「ぎぃやああっ」  断末魔を上げると、蒸発するように宙へと消えていった。  かぼちゃ頭は刀を鞘に納めると、休む間もなく走り出す。刳り貫かれた内部に灯る炎が揺らめき、両目がきらりと光る。  日本はまさにハロウィンの真っ只中。さりとてジャックオランタンを置いているのは何軒だろうか(日本に限った話ではない。多くの家はただただハロウィンを楽しんでいるのだ)。  今夜は年に一度、霊が家々を尋ね、同時に

【SKCファン小説】一人酒しながら読む話

※見開き1ページ相当の小説です 「今日も今日とて嫌なことばっかりだ! シラフでやってられるか! 飲むぞ!」  飲み過ぎないように気をつけるのは大前提で。ビールを開けて、キンキンなシュワシュワをグビグビっと流し込む。 「ああ、ウマい!」  たまんねぇな! 疲れた身体が生き返るような感覚がする。 「枝豆、唐揚げ、餃子! そしてビール! やっぱ最高だな!」  誰もいない部屋に独り言が響く――それがなんぼのもんじゃい。  一人酒最高!  スマホを取り出してSNSを見ながら。

【見開き1P】翼を支えるものは

 いつか終わる。  あの日、空港で君の答えを待っていたとき、僕は悟っていたと思う。それでも見ないフリをして、告白を受け入れてくれたことに舞い上がった。誤魔化して、なんとかなると期待して、頑張って。不安になる自分を否定して。  それでも僕は今こうして一人きりの人生を歩んでいる。  一人になって半年、僕に出張の仕事が与えられた。都合上あの日の空港を使わざるを得ない感じで、すぐさま代わってもらうことが頭を過ったが、こんな理由でなんて未練がましい気がして諦めた。当日はできる限りギリ

【見開き1P】赤い海と青い海

※見開き1ページ相当の小説です  魚は赤い色をしています。  魚には様々な種類がいますが、あらゆる魚が同様に〈不思議なもの〉を作ることができます。その〈不思議なもの〉の色や形は様々で、それが種類を決めるのです。  その〈不思議なもの〉を食べに鳥がやって来ます。鳥はお礼に小さな生き物を落として、魚はそれを食べて生きてます。  魚は山で生まれ、川を下って海にやって来ます。川を下る間に魚は多くのことを学び、自分が作れる〈不思議なもの〉を知ります。そして、どこに行けば同じもの

【見開き1P】目の違和感

※見開き1ページ相当の小説です  眼球がグラグラする。綺麗にくぼみに収まっていない感じだ。  今さっき寝返りを打ったところで、目が揺れて目が覚めた。嫌な目覚めだ。それにしてもしかし、寝てしまった理由が不明だ。ここはショッピングモールのコーヒーショップの床の上であり、流石にこんなところで寝落ちするほど疲れていなかったはずだ。 寝返りを打つまで顔が向いていたところにはガラス越しに斜陽が落ちており、目元の辺りが太陽を浴びていたと分かる。外はすっかり茜色だ。  それにしても、

【見開き1P】おまじない

※見開き1ページ相当の小説です  その人は面倒臭がり屋で、年中コタツを仕舞わないほどでした。夏場には暑苦しいぐらいですが、冷房がきき過ぎてコタツに入ることもありました。それで満足でした。寝るのも面倒になってゲームを始めて気づけば深夜テンションで朝を迎えることもあります。それでもちゃんと会社に向かいます。  社会でうまくやっていけてる自信はありません。周りを見れば色々な人がいて自分と同じような人も見かけますが、自分よりはうまくやっていけてるように見えます。みんな自分よりも足