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小説

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#神聖かまってちゃん

【SKCファン小説】良い時間をっ!

 ボーカルの男が激しく唾を飛ばしながらマイク越しに叫ぶ。 「今だけは! おまえらの日々の苛立ちを解き放て! 知識なんてものが頭に鍵をかけるんだ! 今だけは! 何も我慢しなくていい!」  ベースが激しく唸りを上げる。  ドラムとピアノ、そしてバイオリンが弾むようにライブハウスを包み込んでいく。 「ぐだぐだな俺たちだから‼ 魔法を唱えて解き放て‼」  ギターを掻き鳴らし、ボーカルの声が再びライブハウス中を駆け巡る。 「さあ、行くぞ‼」  跳ねまわるように軽快なピアノと力強

【SKCファン小説】一人酒しながら読む話

※見開き1ページ相当の小説です 「今日も今日とて嫌なことばっかりだ! シラフでやってられるか! 飲むぞ!」  飲み過ぎないように気をつけるのは大前提で。ビールを開けて、キンキンなシュワシュワをグビグビっと流し込む。 「ああ、ウマい!」  たまんねぇな! 疲れた身体が生き返るような感覚がする。 「枝豆、唐揚げ、餃子! そしてビール! やっぱ最高だな!」  誰もいない部屋に独り言が響く――それがなんぼのもんじゃい。  一人酒最高!  スマホを取り出してSNSを見ながら。

【SKCファン小説】恋、友達

※『彼某』という単語を「かのがし」と読んで、彼・彼女以外も含めた全てに通用する三人称として使用しています。ご了承ください。 「じゃあ、部活行くよ。またあとで」 「うん。頑張って」 「そっちも勉強がんばれー」  掃除が終わった教室で二人は淡白な距離感でそう言い合った。友達は振り返ることなく教室から出て行って、そんな背を彼某は微かに寂しげな目をして見送った。  最後に手を振るぐらいしてくれてもいいのに。  そんなぼやきを心でする。  分かってる。そんなことをする訳がない。

【SKCファン小説】僕は歌って行く

「行くぞ、みんなぁ!」  少年は拳を振り上げて叫び、直後、帆が力強く何かを受けて、彼だけを乗せた小さな帆船が動き出す。無風の中で力強く張っている帆は、まるで胸を張るようだった。  彼の白いシャツが太陽を浴びて燦々と輝く。海原の中にぽつねんと浮かぶその背中が、徐々に小さくなっていった。  翌日は大時化だった。狂喜乱舞に殴りつける雨と風は帆船を破壊しそうなほどで、束縛的な怒涛が立ち上がることを許さない。痛くて、寒くて、それでも少年は懸命に堪えていた。  天気は更に荒々しくなる