TakramCast「Context Designとは(前編)」

Takramの渡邉康太郎が提唱する「Context Design」とは。一冊、一室の本屋「森岡書店」や、石けんの形を借りた手紙「Message Soap, in time」のデザインプロセスをふまえながら、その内容や意義を、渡邉が語ります。(聞き手:Takram田川)

田川
今日は最近キーワードになってきているコンテクストデザインについて、渡邉くんに話を聞いていこうと思います。

渡邉
はい、よろしくお願いします。

田川
よろしくお願いします。TakramでStory Weavingの話もあったし、森岡書店とかLalitpurとか、いろんな事例も出てくる中で、渡邉くんが去年からコンテクストデザインっていう話をし始めて。自分の肩書きもデザインエンジニアからコンテクストデザイナーへと変え始めて。そこら辺の経緯とか、何をそれで伝えたいのかとか、ここから何が起こってくるのか、というあたりの話を聞いていければなと思います。

渡邉
なるほど。

田川
渡邉くんが「コンテクスト」に込めた意味とか、そういうことを考えるようになったあたりの話を、まずは聞かせてもらえますか。

渡邉
はい。コンテクスト。Story Weavingという考え方は、何年か前に、Takramで働く中でできてきた考え方です。

田川
5年ぐらい前?

渡邉
5年ぐらい前ですかね。そういう名前の本も作ったりしました。その延長上にあるといえば延長上にあると思ってます。

Takramにいる人たちは、多分大きく分けると3グループぐらいの人たちがいて、デザイン・アート系のバックグラウンドから来てて美大から来たような人たち、もともとはエンジニアリングの教育を受けてきた人たち、ビジネスその他を勉強してきた人。

皆、「なにかしらこれだ」、という社会で認められる、強い一つの技を持ってる人のほうが多いかもしれない。例えばソフトウェアにすごい強いとか。グラフィックデザインができるとか。欣哉さんも機械工学出身だし、インダストリアルデザインのバックグラウンドもあるし。社会に認められる強い価値というか、グラフで言うところのスパイクがそこにあると思うんですけど。僕自身が、大学の学部とかビジネスのジャンルでの強いスパイクがどこにあるんだろうな、といったら、なかなか説明しづらくて。難しいなというのは常々思っていたところでした。

実はしかし、僕自身が興味がある、物作りの作法みたいなのを考えると、必ずしも物を作らなくても良いな、ということを思っています。作らずしても、デザインすることはとても強いメッセージを発することができるなと思っていて。例えば森岡書店のプロジェクトでいうと、僕たちは一切物は作っていない。

けれども、森岡さんという人が、遠山さんと一緒に新しい「1冊だけの書店」という、今までになかったものを始めるにあたって、かけがえのない出会いの場をしつらえたり、それを端的に説明するための「1冊1室」っていうブランドステートメントを用意したりして、それによって多分に彼のビジネスが軌道に乗るためのアシストができたんじゃないかな、という気がしています。

それは、コンテントとコンテクストでいうと、コンテントが物、コンテクストが文脈、っていうふうに端的に表すと、コンテントを作ってもいいし、作らなくてもいいっていうような、一つの解法とか許しみたいなのがあってもいいかな、というのが解釈の一つです。

もう一つは、コンテクストっていわゆる本に書いてあるような「文脈」っていう意味とはちょっと違って。例えばアートがあるときに、これは何々の文脈に沿っているとか、乗っているっていう表現は、ある一意の解釈を強要するじゃないですか。「これはあくまでダダイズムの文脈で」、とか。多分そういうことじゃなくて、受け手に決断が委ねられているっていう意味での、人に許されるコンテクストの糸口がそこに開かれてる、っていうものを目指したいと常々思ってます。

田川
渡邉くんは常にそれを言ってるよね。ユーザー1人1人が補完することで、1人1人の物語ができあがる、みたいな。

渡邉
まさに、まさに。

(つづきはTakramCastでお楽しみください!)



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