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金魚の肺呼吸

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泳ぐこと詠むこと。 水の中から見える世界は狭いか広いか。
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2017年6月の記事一覧

愛の底~底を知る

愛の底~底を知る

卑しく尊いは愛にある。
生まれながらにして無になく有する。
それは軈て変貌自在となり、

凍りつくもの
沸点を超え僅かなものへ。
 
 
余るに足りず均衡の妙。
そこに心倦むも死してなおも添う。
 
 
 
空の底より解しがたい。唯知るは、
生きるため。

雨の日はロールケーキ

雨の日はロールケーキ

身体中にシーツのまとわりついて目覚める夜は、
宵宵の雨のおかげ。

寝床を這い出れば、そこには水たまりと言うには大きすぎる程の池が出来ていた。天井からの水滴には幾つもの歪んだ顔が映る。酷く
 
 
疲れた夜。

夢のなかでは順調そのものだった。
目覚めれば現実は悪夢の天秤を傾ける。
 
 
傘を差すか、レインコートを被るのかは池の底で潜思する。
足枷が重いのか、底が深いのかいつまでと水面には手が届

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底を知る

底を知る

底は浅くない、狭くない。
分際を知るに疎密を掬う。

金魚すくいの広義をおもふ。
まるの枠に薄い薄い和紙を張り
水底に沈める。
 
 
和紙の面と水面を垂直に
和紙の面と水面を平行に

金魚の逃げ惑う波の広がる。
そこに金魚在れば。
 
 
 
水草の老人は蹌踉めく
足の無くとも揺らめく。
そこに金魚在れば。

縦波と横波の交わるところ掬ひ、
幾つもの金魚を映し水泡と帰す。

底に報いる。

つゆのひと

ひとりを矜持とす。
往時に向けた背に自負といふ鏡はない。
とつおいつするのちの始末だった。

生まれたならば死ありのまわり合わせ。
そのようなものにおもふ。
 
 
そこに雨でも降れば仕合わせ。
風の齎す情けあり。
 
 
 
雨垂れの染み入る土の馨る。
漸う泥水となりてひとり。

潜水魚

潜水魚

腹を膨らませた。人波には浮き輪がいる。
腹に期待はしたくない。けれど、
 
 
軌跡を知るに潜水をそして
腹をへこませる。
 
 
水底の廓大にして波は生まれる。
泡沫に消えゆくどこぞの魚などない。あるのは
 
 
 
明けても暮れても膨らむにへこむ腹を
沈むに交う潜水魚。

そうあることに忸怩たる思いが、
夕暮れを果無む。
 
 
 
水は鳴いている。