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清掃ロマン小説「汚れたウエスで涙を拭けるか」

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社会の底辺から夢を見る清掃員たちのハートウォーミングノベル 新作です。鋭意執筆中。筆が進み次第、少しずつアップします。
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清掃ロマン小説「汚れたウエスで涙を拭けるか」第二話

清掃ロマン小説「汚れたウエスで涙を拭けるか」第二話

「小林さん、死んだらしいよ」
先輩アルバイトの高畑さんの言葉にはあまりにも現実味がなく、瞬時には理解出来なかった。
それ以上何も言わずにハイエースにポリッシャーや送風機を積み込もうとする高畑さんの顔を僕はじっと見ていた。
何も言わない僕のリアクションを見て、嘘でもついてると思っていると思ったんだろう。
高畑さんはもう一度、さっきより少しはっきりとした発音で「小林さんが死んだ」と告げた。

今朝まで

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清掃ロマン小説「汚れたウエスで涙を拭けるか」第一話

清掃ロマン小説「汚れたウエスで涙を拭けるか」第一話

前々日の夕方18時から働きづめで、深夜3時。
もう家を出てから34時間経っている。
クタクタの身体からは鼻につくきつい汗の匂いがする。
蟹工船でも流石にもう休ませてもらっている時間ではないだろうか。
殺すなら殺してくれ。

今が人生の底だ。
そう自分に言い聞かせるようにモップで剥離剤を床にべったりと塗りたくっていく。
剥離剤とは、清掃に使う薬剤で、何層何年にも渡って塗布されたワックスを溶かして床の

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