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さらば快適な日々

体感数億年ぶりくらいに前髪を切った。

実際は数年ぶりである。
5~10年ぶりといったところだろう。

一週間ほど前のことだ。

前髪を切った、というか正確に言うとなかった前髪を作ったのだ。

もうこれ(前髪)は本当に存在意義が分からない。
前髪と共に人生を送っている皆々様を尊敬する。

私が最近までアイコン画像のようなワンレンロングで生きてきたのは髪型に対して誰かに良く見せようといった類のこだわりが一切ないからだ。
どんな形状であれどうでも良い。
他人様に不快感を与えず私の生活の邪魔さえしなければ。

なのでもし男だったら坊主(自らバリカンで刈る)か逆に放置したロン毛を一纏めにして生きてゆくタイプである。
それが許されない職種ならテカテカガチガチのオールバックにしていただろう。

なのに数年(オリンピックよりは長いスパン)毎に前髪を切るのはなぜなのか。
急に何か変えてみたくなったり血迷ったり人に唆されたりだとか、都度理由は様々だけれど毎回違わず後悔してきた。
まず似合わない(主観)、クセ毛なので整えるのが難しい、湿気でうねるなど見た目問題が山積である。
次に生活する上での問題。
何よりもまず邪魔なのである。
視界が悪くなる、デコがかゆい、眉毛(の生え際)かゆい、まつ毛(の生え際)かゆい、頬かゆい、とにかく毛先の当たる顔面のありとあらゆる箇所がかゆい。
そんなわけで私にとってはデメリットしかないこの前髪。
しかし5年以上経つとそんな前髪があることによって生じる不快感や生活の不便さを忘れ始めるらしく何年かに一度やらかしてきたわけである。

だが今回は忘れていたのではない。
現在所属する店の長(おさ)の命(めい)なのである。

私は今、他業種の職に従事しているわけだが主戦場がTwitterから他媒体に変わっただけで相も変わらず自撮りをオンライン上に垂れ流し続けている。
入店してしばらく経った頃、長がこのような事をおっしゃった。
「〇〇(私)の画像の評判があまりよろしくない。ここはいっちょイメチェンしてみようぞ」と。
店では顔出ししていないため、化粧を変えたところで発信する上では意味がないので手っ取り早く髪型を変えてみようとなったのだ。
デコ丸出しの立ち上げ(ているつもりはなかったけれど邪魔だから後ろに流していた)が老けて見えるそうなので若く見せるにはやはり前髪だろうと。

正直気乗りしない。
いや、はっきり言うと断りたい。
不快で不便で(私にとっては)メリットなんぞひとつもない。
しかし私にはこの提案(≒命令)を断れない理由があった。
この短期間で私は店の長に随分とお世話になったのだ。
世話になりっぱなしと言っても過言ではなく、もうこの界隈で生きている限り頭が上がらない訳である。
そんな私に拒否権はない。

なので今の私には前髪がある。

久方ぶりに頭頂から文字通り顔面に降りかかる前髪。
やはり覚えていた通り不快で不便、感じるのは絶望である。
こやつに対して今思うのは一刻も早くも消えてほしいという事。
いや、生えている毛に消えられては困る。
訂正しよう。
一刻も早く伸びてくれ。
やはり私は君と共に生きてゆくのは難しいようだ。
頼むから1日1cmくらい伸びてくれ。

そんな調子なので休みの日や仕事以外の時間は専ら前髪はクリップで纏め上げられており、存在しなかったかのように扱われている。
そのクリップで纏めるのにも最初は試行錯誤が必要だった。
なぜなら私にとって邪魔な毛は前髪だけではないから。
そう、顔面の真横、頭頂から耳の上辺りにかけて生えている毛である。
本来ならここの毛も一纏めにしたい所なのだが、前髪があるとそれができないのだ。

前髪を作(る羽目にな)った初日はクリップ問題で若干パニックに陥った。
え、クリップ2個いる?
前髪留める用とサイド留める用の2個いるってこと?
2個も頭にクリップ着けんの?
無理なのだが\(^O^)/
重いし邪魔だしマジで無理\(^O^)/\(^O^)/
こんな調子だった。
面倒くさがりな私にゴムやアメピンを使うなどという選択肢はない。
それらを使うと変な跡もつく。
今は何となく前髪とサイドの毛の一部を1つのクリップでゆるっと纏めてどうにか己を誤魔化している。

一時は前髪に慣れようとそのまま降ろしていた日もあったのだがストレス過多で左瞼が痙攣してきたので断念した。
本来私の望む長さまで前髪が伸びるまでは半年くらいかかるのではなかろうか。
やはり絶望的である。
しかし人間ずっとそんなネガティブな姿勢でいるわけにはいかない。

前髪があるメリットを考えてみた。
○デコに日焼け止め等を塗らなくても良い←風が吹くとアウト
○眉毛描くの適当で良い←風が吹くとアウト
○眠いけれど起きてないといけない時にデコ筋で瞼を上げようとする(しかし実際に上がっているのは眉毛だけ)という癖のせいで生じたデコの皺が隠れる←風が吹くとアウト

…やはり根本的に良く思ってはいないものに対してポジティブなイメージを持つというのは相当難しいようだ。

1日1cm毛が伸びる奇跡が起きない限り半年ほど若干ナーバスな私なので、お会いする機会があった際は「生きてるだけで偉い!!!」と大絶賛してほしい。
マジで頼む。

そしてナーバス期を越える頃には店の長が私の髪型に興味を示さなくなっていることを心から願っている。


💋