日経平均株価の最高値更新を巡るテキスト

投信を多少持っているので日経平均の数字には関心がある。その日経平均が22日に史上最高値を更新したというニュースを見たが、個人的には国内の株高に前々から不信感があった。

GDPで言えば大して成長していないこの国の株高に意味はあるのか? 「異次元緩和」で大量に貨幣が供給されたことによる数値上の上昇に過ぎないのではないか。(貨幣数量説的な思考)
供給された貨幣が株式市場に流れ込み投資家の資産が額面上増えているだけならば、世間で「実感がない」とされているのも道理ではある。

今回の株高はアベノミクス緩和の重要な里程標となるかもしれず、上の様な認識を検証するには良い機会だろう。
各種の経済指標を総合できるほどの知識はないので、ロイターを中心に専門家の言説を集めてテキストを読むという形で空気感を確かめたい。

各種報道

「やや過熱感」を指摘しつつも「米景気の底堅さや国内企業の好業績」といった要因による好況として、正常な動向と解釈しているように読める。

「遅かれ早かれ最高値を超えることはわかっており、時間の問題だった。」「日本企業への評価が高まった証」などの言い方には当然のことという強い認識が滲む。
ただ日本企業を信奉している訳ではなく「旧態依然とした企業」は「優勝劣敗」によって淘汰されるべきという市場主義的な思考も見える。

「時価総額上位銘柄の一極集中相場」を指摘しつつもやがて幅広い銘柄に波及するだろうと予測。

「やっとここまで来た。34年かかった。デフレを脱却して新しい世界が始まると株価が教えてくれている。」非常に象徴的に捉えていることが一目で分かる。
バブル期と比較して「今は株価収益率(PER)をみてもとても自然体だ」として「通過点」に過ぎないという認識。

これはまぁ事実の指摘に過ぎない。

GDPなどマクロ指標は良くないのに「強すぎる株価」、日銀が緩和修正へ動いているのに「弱すぎる円」、その2つの捻じれをドル・米株の強さに起因するとしている。
「考えにくいほど」などの表現は実体経済から乖離した水準であることをはっきり主張している。

賃上げや設備投資の増加に「明るい動きが見られている」として実体的に捉えている。(行政の立場としては当然かもしれないが)
「実感しにくい面」に問題意識をはっきり持っているところは好感。

様々な指摘を含んでいるが、「東京エレクトロンのPERは50倍、アドバンテストは80倍に高まっている」という数字ははっきりAIバブルの様相を感じさせる。

「一つの節目を越えたに過ぎない」素っ気ないコメントに見えるが、「節目」という象徴的な言葉について越えたに「過ぎない」というのは更なる上昇への期待を読み取ることもできる。取引所の運営者として考えればそう読むべきであろう。

「今、日本経済が動き出している」という力強い認識。「それを国内外の市場関係者が評価してくれている。…」は具体的な株価に触れる代わりに謝意で濁したような感じか。

マイナス成長の指摘から入るかなり厳しい論調と言える。
バブル期と比較してPERではなくEPSの方が増大し、実際に収益が上がっているが「円安で海外収益が膨らんだことと、通貨価値の下落、つまりインフレで企業収益が膨らんでいること」を本質と見て、構造的な円安ドル高による歪みと認識している。

5つの因子を挙げながらも「実際のところは「米国株高」と「為替の円安」による影響が大きい」と考えられると纏めている。
「この株価が日本の経済力だなんて思わない方がいい。ぬか喜びをしない方がいい」という引用が印象的。

PERは適正、当然の結果、という2意見の一方で潜在成長率が低いという指摘も示されている。

所感

数字で言えば、基礎的なPBR改革だとかの背景も含みつつ外因的な円安・米株高が奏功した形と見るのが妥当なようだ。経済成長率に見合わないという指摘もあるが、設備投資の増加など好材料もある。
それに経済は実体だけでは回らない。デフレからの脱却と捉える向きが多いことは、心理面の転換を予感させる。私が生まれたときから存在するこの低成長経済の転換も、もしかすると現実的シナリオなのかもしれない。(米株より優先すべきとはやはり思い難いが。)


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