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古建築散歩vol.4 [檜皮」編

檜皮(ひわだ)とはなにか?

前回の古建築さんぽでご紹介した三田市大川瀬の住吉神社の境内林の中には、真っ赤な木肌のヒノキが3本ほど立っていました。

これは樹皮を剥いたあとの状態と書きましたが、ヒノキの木は生きたまま皮を剥いても枯れないため、昔から建物の屋根の材料として使われてきました。この、屋根材としてのヒノキの樹皮を「檜皮(ヒワダ)」といいます。今回はその檜皮の採集の様子をご紹介したいと思います。

檜皮の採集

檜皮を剥くヒノキですが、ヒノキであればなんでも良いというわけではありません。樹齢は約80年以上のものを選ぶそうです。
ヒノキが生きたまま皮を剥いでも枯れないのが何故なのかわかりませんが、同じように皮を剥いたとしたら杉は枯れてしまうそうです。昔の人はよく木のことを知っていたのですね。

さて、ヒノキの皮の採集をするためには、当然ですが木に登ります。

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ロープの端に足をかけるための小さな木があるだけの、木登り道具。

木の幹にこのロープを体ごと巻き付けて、上手に登っていきます。
皮を剥く道具は木製です。「カナメモチ」というモチノキ科の雑木で職人さんが自分で作ります。粘りがあり柔らかく、皮を剥く時に木を傷つけないために、カナメモチが使われてきたそうです。

道具トリミング

ヒノキは生きたまま皮を剥いても枯れない、と書きましたが、傷を付けてしまえばやはり枯れてしまいます。枯れないように剥くのは職人技ですね。

檜皮の荷造り作業


剥いたヒノキの皮を山から降ろしたあとは、荷造りという作業に移ります。

そろえてるところトリミング

山から降ろした皮を重ねて、ある一定の幅(8寸=約240mm)に揃えて束ねます。束ね終わったら長さを2尺5寸(=約750mm)で切り揃えていきます。長さについては、オーダーによって3尺(約900mm)にすることもあるそうです。
ちなみに出雲大社の場合は長さ4尺(約1.2m)で、大きい屋根の場合には、大きな寸法で揃えるそうですよ。

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荷造りするとこんな感じです。1坪(3.3平米)の屋根を拭こうと思ったら、大体150キロの檜皮が必要です。1本のヒノキから仮に平均10キロ採集出来るとしたら、1坪で15本のヒノキに登らなければなりません。
普通の戸建住宅30坪の屋根を葺くためには、450本のヒノキが必要です。檜皮は材料代としてはいくらにもなりませんが、このためにかかる手間を考えると気が遠くなりますね。

寸法を揃えた檜皮をまとめる

幅と長さを揃えたあと、最終的には一つの塊にまとめます。これを一丸(ひとまる)といって、約30キロ分の檜皮になります。

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檜皮の採集は、冬の間の仕事。寒くなって木が活動を休んでいる間に、皮を剥くことでヒノキの生存を脅かすことなく、その恵みを頂くのです。
そうして夏の間に、屋根材として使うため採取した皮を掃除をしたり、更に成形したり、もう一手間をかけたあと、ようやっと一枚一枚屋根に葺かれていくのです。


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