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小学生のうちにタッチタイピングを身につけるメリットを考える

タッチタイピングは重要です(結論)。ただ入力が早くなるだけでなく、入力しながら思考できるようになります。

ガラケー時代、中島美嘉さんは「夢うつつになりながら頭に浮かんだ歌詞を、手に持った携帯に打ち込む」と語っていました。画面を見ながらの操作とは違う次元に脳が入るのが想像できると思います。

タッチタイピングも同じで、意識を本題に集中したまま自分の考えを文章にできる、というのがタッチタイピングの要です。母国語だとしゃべりながら考えられるのと同じ現象です。ではなぜ、小学生のうちからの習得なのでしょうか。

小学生のうちにタイピングを身につけるメリット

文字習得と語学学習

ひらがなは1文字、アルファベットも1文字。意外とそう思っている方は多いですが・・・

  • ひらがな=音節文字

  • アルファベット=音素文字

ひらがなは1文字の中に母音と子音の二つの音素が入っているため、音の最小要素ではありません。この認識はローマ字習得なんて目の前のレベルではなく、言語学習において切っても切り離せない大事な要素です。

「STOP」を「ストッ」sto-pu
「BED」を「ベッ」be-do

外国語を話す時に語尾から母音を抜いた発音ができず苦しんでいる人をよく見ますが、これは50音の音節が音の最小単位だとそれまでの経験でインプットされていることが原因です。

ローマ字入力を通して、ひらがなは母音と子音の組み合わせであることを感覚的に学習すると、外国語学習で「子音で終わる音」に出会った際にも感覚的に飲み込むことができます。

そのため、ひらがなを習得して間もない小学生のローマ字習得は日本語の音の仕組みをメタ的に捉える良い経験になる訳です。

課題にかかる時間を短縮

この1、2年の小学生のICT化は目まぐるしいものでした。あっという間に一人一端末になりましたね。これからはは、デバイスに文字入力をした上で料理して提出、という種類の課題が格段に増えることになります。

例えば「今日の日記」という課題があったとします。

  1. 考えるのと同じ速度でスラスラと打ち込む

  2. 考えながらゆっくりキーボードを見て入力

  3. 手書きで下書きしたものをキーボードを見ながら入力

1と3では、倍以上の時間がかかるのではないでしょうか。時間をかけることも大事かもしれませんが、今時誰も筆と墨で筆算をしないのと同じで、時間のかけ所はその時その時の環境に合わせて見直さないといけません。

中学生になってからでは遅い

小学生も忙しいですが、中高生はさらに忙しいです。本人の強い意志がないと、中学生以降にタッチタイピングを身につけるのは困難になる上に、既に我流の癖もついてしまっています。

間違った指使い以上に深刻なのが、キーボードを見る癖。これは一度身につくとなかなか取れないので、まだ経験のない小学生のうちにキーボードを「見ない」癖をつけることはものすごい時間短縮です。

具体的にタイピング習得のために必要なことは?

ハード面

物理キーボード必須です。タブレット上に表示されるバーチャルキーボードでタイピング習得、は不可能です。触感がないのに手元を見ずにホームポジションに戻ることはできません。

モバイル用のbluetoothキーボードには注意してください。キー1つ1つが小さすぎるとホームポジションに指を置く感覚は身につかないし、本体が滑っても快適なタイピングはできません。

わが家ではiPadにMagic Keyboardを装着して使わせています。

手元を見る癖をつけさせないためには、本当はキーボードの文字を全て隠してしまいたいところです。タオルを手にかける方法もありますが、子供だとなかなかうまくいきません。キーに貼る黒いシールが市販されています。

ソフト面

オンラインソフト、アプリ。無料のもの、有料のもの。たくさんあります。好みに合わせてでいいでしょう。ただ、注意したいことが2点あります。

  1. 画面にキーボードの画像が表示されるもの

  2. いきなりローマ字に突入せず、最初はホームポジションやホーム行から少しづつ進むもの

1について。何度か既に出ているように、タイピング習得の唯一にして絶対のルールは「手元を見ない」ことに尽きます。そんなに大事か、と思うかもしれませんがそんなに大事です。手元を見ながら練習を進めてしまうと、手元を見るという癖が強化されてしまい、かえってタッチタイピング習得から遠ざかってしまいます。

そのために必要なのは、画面にキーボードの絵が表示される種類のソフトを使用することです。キーの場所がわからなくなった時に、手元を見る代わりに画面上のキーボードを見ることで、手元を見る癖を予防できます。

指の色分けも複雑すぎると情報が頭を素通りするので、このくらいシンプルなものが理想だと思います。

2について。ローマ字についても書いたとおり、タイピング学習=ローマ字学習だと捉えがちです。しかし、本来タイピングとローマ字は全く別領域の学習。2つの難関が一気に降りかかると、タイピングのハードルが高くなって嫌になってしまいます。

まずはf j f j ・・・a s d f a s d f・・・ のように意味のない練習を続けて、アルファベット26文字の位置を覚えるので十分です。sub tab dogなどの簡単な英単語も出てくるでしょうが、英語学習、なんて考えは取らぬ狸の皮算用です。ただの文字の羅列として割り切ってください。間違っても「このdog」って意味わかる?などと脱線してはいけません。タイピングも英語も身につかなくなってしまいます。

目の前にアルファベットが表示されたら、すぐさま該当するキーに指が動くようになって初めてローマ字の練習に突入です。(先にローマ字に突入すると、ローマ字で使わないキーの習得がおろそかになり、英文入力で支障が出ます)

最近リリースされたソフトですが、ホームポジションと文字習得重視からのローマ字入力への発展、画面上にキーボードの絵が表示される、ゲーム性が高くかわいいインターフェイスで子供が飽きない、と文句のつけようがありません。しかもデスクトップアプリ、タブレット用アプリ共にリリースされていて、広告なしで無料。最高です。ひれ伏します。

そんな偉そうなこと言うのは(オフトピック)

子供のタイピング習得についてかなり熱く語ったのには、それなりに訳があります。1980年代生まれで30代の私が小学生に上がった頃は、パソコンは一般家庭に普及する前でした。

そんな中、タイピストだった祖母が中古のワープロを私に与え、タイピングを仕込みました。カシオのワードプロセッサーで、白黒でしたがタイピング用のプログラムも入っていました。今みたいに楽しいものではなく、ひたすら文字を打ち続けるものでした。

おかげでブラインドタッチ(と当時は言いました)を身につけ、ほどなくWindows95の普及、iMacのリリースと、パソコン通信〜インターネット黎明期を成長と共に過ごした私は、令和になった今、仕事の一貫でとあるコンソールを触ってプログラムする機会が多くあります。

そうすると。この感覚、誰かに伝わると嬉しいのですが。キーボードに触れている右手を通して、脳がコンピューターに直結している感覚があるんです。頭に思いついたことが、そのまま手先を通って実現されていくこのシームレスさ。

同業者に話を聞いても、なかなか同じ人は見つかりません。皆、これを実行する場合はどのコマンドを打つんだろう・・と考えながらコンソールを触ると言います。

コンピューターも外国語も、あくまでツールだからそれで何をするかが大事。つまり、ツールの使い方に一手間取られることなく、その先の実現へ労力を割けるようになってほしい。これが私の子供たちへの願いです。

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