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デイヴィッド・ホックニー展

東京都現代美術館
2023.10.29

久しぶりに絵画が放つ吸引力に魅せられた気がする。

おそらく今回のキュレーションテーマとしては、60年代から精力的に描き続けるホックニーの、その創作意欲と、筆を選ばないその奔放さを横断的に見ていくということだと思う。
齢80を超えたホックニーがいまだに新たな表現を求めて、iPadに行き着くその創作へのハングリーさには畏敬の念を抱かずにはいられない。

ただしかし、これは個人的な好みなのだがデジタル独特のぼやけた筆致がいかんせん苦手で、ホックニーの作品においても同じように感じてしまった。特にアナログの作品群が素晴らしかっただけに。
でもやっぱり新しいものに常に敏感な老人というのは、それはそれで尊敬しているので、作品の精神性については感動した。

展示の構成もそのテーマを意識させるもので、
展示の前半はデジタル以前の作品群を、そして後半(階を降りてから)は、iPadでの作品群が並んでおり後半だけは写真撮影OKという構成なのだが、この展示スタイルが秀逸だった。
観客が自動的にデジタルというレイヤーを通してみるという構図であり、みながiPhoneをのぞいている様子そのものが作品のようで面白かった。

以下、個人的気に入った作品たち。

『スプリンクラー』
ホックニーのポップさと、英国人から見た米国への冷ややかな眼差しが矛盾しつつも両立していて、良かった。

A Lawn Sprinkler 1967


『ダブル・ポートレート』シリーズ
この作品がいちばん立ち止まって見入ってしまった。なぜなんだろう?2人いるのにとても孤独を感じる、ポップで楽しげな配色なのに悲哀を感じる。『スプリンクラー』と同じくその矛盾性に惹かれたのかな。

My Parents 1977

『ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作』
とにかくデカい。ホックニーワールドに迷い込んだかのような、視界全てがホックニーの筆致で埋め尽くされる体験。これはやっぱり美術館で見てこそ。
シンプルだしラフなタッチなはずなのに、行ったこともない場所、国なはずなのに、感じたことのある匂いや空気を感じた。

Bigger Trees Near Warter Or/Ou Peinture Sur Le Motif Pour Le Nouvel Age Post-Photographique
2007

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