ASMRに関するいくつかの提言

プロセス

七時半に起床。洗顔や軽い髪のセットを整え、九時に家を出る。最寄駅から乗車率85%の二日に一回は座れる急行列車で難波駅へ。そこから地下鉄で三駅分立ったまま淀屋橋駅へ運ばれる。京阪淀屋橋駅の始発特急、四号車の二階。京都方向を向いて左手の窓側の席。ほかの車両の席から人一人分高い位置から車窓を眺める。京橋までは地下を走るので、五分ほど退屈な影色の景色と、反射した自分の顔を見て徐々に明るくなるタイミングを待つ。やっと外に出たと思えば、すぐに京橋駅の巨大な屋根の下にもぐっていく。JRとつながっている京橋駅のホームはいつも満員で、ホームドアがなければ何人か零れ落ちるのではないかと心配になるほど、人がソロゾロに固まっている。皆、この車両に乗ろうと少しずつ歩を前に進めるのだが、席に座れるのは15人もいない。自分は座れている幸福感と少しの罪悪感で心臓の位置を悟りながら、視線はたった今隣に座った女性からまた窓の外へ移る。雑居ビルが立ち並ぶ街並みの中に、一人だけ背丈が足りない幼稚園と、その三角形のグラウンドを見たあたりで、私は瞼のブラインドを下げる。ここから大学まで45分。合計1時間45分の通学のプロセスに嫌気がさして、家を出るのを放棄して、ただただ怠惰な一日を過ごす。

ワンデイルーティン

そんな一日の朝はいつも決まって、昼まで二度寝。そしてゲームや映画鑑賞で非生産的な時間を非生産的だなと感じつつも、気にしないことにして一日を過ごす。これが私のワンデイルーティン

大阪府民カミングアウト

私は寝る前、たまにASMRを聞きながら寝る。見栄を張っても仕方がない。ほぼ毎日聞く。ASMRと聞くと真っ先に思い浮かぶのは、至近距離での囁きなどで愚かな人たちの鼓動を早くするものだろう。しかしながらASMRというのはそういうものだけでないというのも、ご存じでしょう。音によって人々にある種の快感を与えるものは様々なものがあるのだ。私が聞いているのは至近距離での囁きなどで愚かな私の鼓動を早くするものです。見栄を張っても仕方がない。西園寺メアリ、龍ヶ崎リン、猫又おかゆ、その他のASMRの動画を更新している方々に今一度感謝を。

本題

さあそろそろ本題に入ろう。ここまでほとんどタイトルと関係ない話を読み切ったあなたへ拍手を。さて、私がよく聞くタイプのASMRだが、その内容のほとんどに聞いてる人を癒そうとする意図がある。本人がどう思っているかは分からないが、少なくともその動画内では癒しを与えるというコンセプトのもと、セリフや振る舞いをしている。それは結構。私も大いに癒してもらっている。悪くない、悪くないとは思うんだ。でも俺言わなくちゃいけないことがあるんだよね。動画内でたまに聞く「生きてるだけで偉い」「今日も一日頑張ったね」ってセリフ、あれなんだろうね。あれやばくね?胸、痛くね。いやなんていうか、言いたいことっつーのはーーーーーー。ごめんな友よ俺はもう行くよ!!!行くな。ここで話を聞いておくれ、MOROHAのおふたり。とはいえ、MOROHAのお二人が言っていることはよくわかる。わかるどころか、これこそが今回の本題なのだ。「生きているだけで偉い。」そんな訳ないだろう。私は長すぎる通学時間と、つまらなさすぎる大学生活に嫌気がさして、授業をさぼって家で虚無な時間を貪る怪物なのだ。そんな生物が偉いわけないだろう?心にもないことを言わないでくれおかゆ。もしかしたらそれは君の優しさなのかもしれない。だが違う。これが俺の君へ送る唯一の否定だよおかゆ。それは優しさからの一言ではなく、問題を無視した、無関心故の一言だ。生ごみを蓋つきのごみ箱に捨てるように、気に入らないアカウントをブロックするように、優先座席で眠ったふりをするように、君は見ないようにしているんだ。怠惰からなるカスを、「生きてるだけで偉い。」という免罪符を与えるだけで、見えないようにビニールシートをかぶせているだけだ。「今日も一日頑張ったね。」頑張ってないんだよメアリ。やめてくれそんな心にもないことを言うのは。何も頑張ってないんだよメアリ。君の優しさからなる励ましの言葉だということは重々承知している。だからこそ俺は、声を大に叫ばなくてはならない。いいや、そんな情けないことを大声で叫んでも意味がない。頑張ってないんだよ今日一日。


甲本ヒロト

私が言ってほしい言葉は、「頑張ったね」ではなく「頑張れ」なんだよ。誰か「頑張れ」と言ってくれよ。そう思いながらいくつもの動画をあさり聞いた。そして見つけた一つの動画。THE BLUE HEARTS『人にやさしく』。これだ、これこそが俺が欲しかった言葉。喉が焼き切れそうな大声で放たれる甲本ヒロト全力の「頑張れ」。嗚呼、なんて救われる曲なんだろう。最近の浮気がどうの、セフレがどうの、恋人居るけど昔のあなたに未練あるんですよみたいな甘ったれたカス曲の、何億倍もまっすぐで図太い芯が通ったこの曲。この曲を書いた人のASMRがあれば。甲本ヒロトのASMRがあれば。

本当に欲しいもの

甲本ヒロトのASMR。そんなものを聞きたいわけないだろう。いや、好奇心は確かに聞きたいと私の目安箱に投書している。しかし、寝る前のまったりした時間に甲本ヒロトのASMRはあまりにも味が濃すぎる。そもそも、寝る前に「頑張れ」などと鼓舞されても困惑するばかりでありから、「頑張れ」は昼間、ブルーハーツの曲を聴くことで解決しようと思う。
 では私はメアリやおかゆに何を求めているのか。それは「生きているだけで偉い」という諦めの言葉でも、「今日も頑張ったね」という虚偽でもない。私が欲しているのは承認なのだ。何もしなかった今日。体調不良でも何でもないただのサボりのカス。そんなカスを見ないふりして蓋をするのではない。そんなカスを、偉いなどという、つぎはぎの薄っぺらい言葉で覆わずに、「君ってカスだよね。でも、カスでいいんだよ。」と認めてあげる。弱さを弱さと認めたうえで受け入れる。受け入れられる。これこそが私の、いや私たちの安寧へ繋がるのだ。

理想

さて、ついに私の欲するものへとたどり着いたわけだが、それを誰が言うかも重要だということは皆もわかっているだろう。そう、年端も行かない子供に認められたとて、誰が喜ぶだろうか。そもそも、昨今のロリ信仰に私はいささか疑問を呈しているのだが、これはまた今度話すとしよう。自分自身の弱さを認めてくれる存在。そう、お姉さんである。その大きな身体と優しさで、私の弱さごと包み込んでくれる高身長ショートカット低音ボイスのお姉さん。それこそが私の理想でありサンクチュアリなのだ。これからもよろしくお願いします龍ヶ崎リンさん。


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