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Mリーグ監督責任論

【監督は結局なにもできない】

 「Mリーグ」の「TEAM RAIDEN / 雷電」の成績が悪いことで、ファンの一部から「監督責任論」が噴出しているようである。
 特に昨夜(12月7日)、雷電が連続ラスだったことでファンの不満がTwitter上を賑わせた。

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 だが、結論から言えば、監督が責任を感じて何かをしても、チームの成績にはほとんど影響しない。
 他の集団競技と違って、選手交代はできないし、試合中に選手に指示を出すこともできない。
 たとえば「この局は守れ」とか「リーチにオリるな」と伝えることはできないのである。
 また、南3局から守りの切り札を投入、ということもない。
 あくまでも個人戦の集合体であり、プロ雀士個人が責任をもって戦うだけである。
 唯一、競技面で監督が関われるのは選手起用である。
 が、それもほとんどが選手のスケジュール調整だったり、回数の調整でしかない。
 監督というよりはチームの運営を任されているマネージャーだと言った方が実態に近いだろう。
 だが、チームにおける「重み」としては「監督」なのである。
 だから唯一、作戦面で関われる選手起用に重きを置くのだが、これも空しい作業であるとしか言いようがない。
 
 Mリーグ発足当初は「緒戦トップなら連投」というセオリーで運用したチームもあるが、見事に2戦目ラスというケースが続き、その方式は取りやめられた。
 
 また、前回トップ取った人を積極的に起用しようと考えるのが普通の発想かもしれないが、それすらも全く意味がないことに気づかされる。
 
 冷静に考えると、半荘1戦だけで調子の良し悪しなど分かるわけがない。
 ましてや、対戦相手が入れ替わり、場所替えもあるのだから、バリバリのオカルト派雀士でも「予想不可能」と言うだろう。

 だから、チーム成績が悪いからといって、監督を責めるのはお門違いなのである。

【誰が強いかを知ることもできない】

  とはいえ、重みとしての「監督」なのであるから、ファンの皆さんの怒りの矛先が向かうのも理解はできる。お前、役割と責任が重いんだぞと。
 それはたぶん、愛すべき選手たちに言葉の槍を突き刺したくないという心理からだろう。あまりよく知らない「監督」というシルエットになら、槍でも石でも投げつけやすい。

 だが、監督も1人の人間だし、私たちファン以上にチームの不調に心を痛めているのは間違いない。
 会社からは「どうなっているんだ」と言われるし、ファンからもなじられる。目の前にいる選手たちは十分努力しているし、明らかに悪いのは配牌とツモだ。
 
 『おれは一体、誰にどのような指導をし、どういう方針で指揮をとり、どこに向かって進めばいいのか』

 そんな悩みで、毎晩頭を抱えているに違いないのだ。

 仮に、監督が心を鬼にして選手を全員取り換えたとしよう。それで勝てる確率は何%ぐらいアップするかというと、結局は大して変わらない。そもそも、誰が強いかを判断することすらできないのが麻雀だ。
 もし、監督が「こいつは強い、こいつは弱い」と判断できるぐらいなら、監督自らが一番強いことになるので、監督が選手として出た方が良いということになる。

 目利きが難しいからタイトル獲得歴などの実績で選んだとする。その実績がずっと続く実力だと仮定したとしても、今の選手たちより何割も強いということは考えられない。トップ率にして1%とか2%の差のはずで、仮に10%違うとしても、成績が大きく変わるわけがないのだ。
 しかも、今のMリーガーたちは皆、それなりに実績を残している人たちばかりである。
 それをひっくり返してまで選手を入れ替える理由はどこにもないのだ。
 
 私が思うに、監督ができる唯一の競技面での仕事は、選手の心のケアだけだと思う。

 負けた後は気持ちがささくれだってしまう。普通の試合なら、すぐに次の試合に出られるが、Mリーグは間隔が長い。月曜日にラスを引いて、来週の火曜日にまたラスを引いたら、次の出番まで、約3週間負けっぱなしみたいな気持ちで過ごさねばならない。

 私のようなヘボ選手でも、リーグ戦の成績は気になるもので、マイナスが大きい状態でその節を終えると、早く来月の戦いをやりたいという気持ちにはなる。
 雀荘で負けた人ほど、翌日来店しがちなのと同じ現象だ。

 そういった打ち手の心理を察してケアをするのが監督の唯一の仕事だと思うが、チーム状態が悪いと、むしろ監督が一番心を病んでしまう。そういった最悪の状態になるのが麻雀というゲームの特徴なのだ。

【監督交代がもたらすもの】

 「U-NEXT Pirates」は初年度を終えたところで監督が代わった。
 そして優勝したのだが、単純に監督が代わったから優勝したというだけではないだろう。
 もちろん、監督が持っている運気や徳、雰囲気、ムードなど、さまざまな目に見えない「力」が働いた可能性はある。また、起用法など、選手がやりやすい方法がとられていたのかもしれない。
 だが、それはあくまでも「選手が気持ちよく打てた」というだけであって、それがそのまま優勝につながるほど麻雀は簡単ではない。プラス材料ではあるかもしれないが、そのまま優勝とまではいかないのである。そして、交代が結果的に良かったかもしれないが、前の監督がダメだったということにはならない。
 そもそも、監督交代は人事やその他の事情によるものであって、成績不振などで解任されたわけではないのだ。

 「セガサミーフェニックス」は今シーズンが始まる前に新監督が就任した。

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