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プロ麻雀界近代史 バビロンの誘い

【仙台の黒田さん】

 旅打ちに行った期間は正味2ヶ月半ぐらいだった。

 各地方で色々な方にお世話になった。

 仙台でパンクした時は日本プロ麻雀連盟東北本部長の黒田容吉プロにお世話になった。

 渡辺参郎編集長は、困っても知り合いは訪ねるなと言っていたが、仙台で資金が尽きた時は黒田さんに連絡してくれたようで、ご自宅に2週間ほど泊めてもらった。

 最初にお邪魔した時、黒田さんから「おめーら臭えな。風呂入ってこい」と言われた。

 その時の私たちは金がぜんぜんなくて、野宿を繰り返していた。銭湯には3日以上行けていなかったから、やはり臭かったのだろう。

 野宿は本当に嫌だった。

 新聞紙で布団を作ったが、5月の東北は寒かった。

 公園で寝ていたら野良犬がきて、私のメガネを咥えて持ち去ろうとした。

 飛び起きて、オイ! と叫んだら、犬はメガネを落として走り去った。

 その先には飼い主と思われる人がいたが、たぶんその人は、私たちとは違う、筋金入りのホームレスだった。

 そういう経験をしたことを原稿に書いたから、参郎さんもあぶねえなと思って、黒田さんに連絡してくれたのかもしれない。

 黒田さん家の風呂は、相棒のHと2人で一緒に入れるぐらい広かった。

 風呂から上がると、黒田さんの奥様が冷やし中華を作ってくれていた。とても美味しかった。

 奥様は中国の人だったので、さすが本場の味ですね! と言ったら「冷やし中華は中国にはないよ」と笑われた。

 黒田さんが「うまいだろ?」と近づいてきて「オイお前ら、まだ足が臭えぞ、食べたらもっぺん風呂入って、足をちゃんと洗ってこい」と言われた。

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