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プロ雀士超技巧伝・堀慎吾①渋川のリーチにカンチャンで追っかけ(文・須田良規)

こんにちは。
堀慎吾研究会の須田良規です。

僕は日本プロ麻雀協会A1リーグにいるんですけど、
まあ選手であると同時にやっぱり他のすごい選手の麻雀を見るのが好きなんですよね。

鈴木たろうさんがいた頃は、そりゃあ数々のゼウスの選択に心躍らせたものです。
今はそれが堀くんになってることが多いですね。

もしかしたら同じリーグの戦う相手のことを褒めたたえることを、ちょっと変に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
麻雀プロというのは妙なもので、選手と敵対するという感覚はあまりないんですよね。

もちろん試合に勝ちたいという気持ちはあるのですが、
相手の興味深い思考、自分になかった引き出しなどに触れることが、自身の知識欲をくすぐって、
面白い対局を作り上げてくれたことが嬉しくなったりします。

実際多くの一般視聴者の方は、派手な大物手の成就や息を呑むようなめくり合いがわかりやすくて楽しいと思います。
僕らも流して見ていれば一緒です。

しかし、少し麻雀に詳しい人、麻雀プロ団体に所属しているような人は、
選手がなぜこの選択に踏み切ったのか、その瞬間の思いや、それに至った選手の道程や経験の深さまで享受できると、
また違った楽しみがありますよね。

今回はそんなお話です。

2023年7月31日(月)、第22期雀王戦A1リーグ第7節A卓3回戦での局面でした。

南3局、まず南家の渋川難波が8巡目にこの258s待ちでリーチ。

すると11巡目に東家の堀がこのカン3sで追っかけリーチ。

渋川が3sを一発で掴んで・・・

「ローン12000」

渋川(ええ・・・)

角谷(あたしはカブトムシ~)

というシーンがあったんです。

この瞬間だけ切り取れば、堀が渋川とのめくり合いをカンチャンで制し、うおー渋川ツイてない!堀強い!って皆さん思うところですよね。

でもこのアガリ──、ちょっと違和感がありませんか?

というのはこれはラス前、親番堀が44700点のトップ目
2番手は北家小川裕之の38900点で5800差
そして渋川はダンラスの2400点です。

堀はここで渋川に高い手を放銃してしまうと、小川にまくられた点棒状況でオーラスになるわけです。
もちろん強い待ちなら決め手で追いかけることはありますが、これはカン3sです。
しかも渋川が多少高い手をツモったって、渋川にトップを脅かされることはありません。
普通はちょっとしないリーチなんです。
では、この選択の理由は何なのか?

僕はすぐ堀くんにLINEします。
堀くんとの連絡はこればっかりです。
しかしいつも堀くんは快く長文でその思考を答えてくれます。
いつも長くてまとめるのが大変になります。

そしてその返答の内容に、堀くんの考えの面白さ、型通りにいかない麻雀のドラマ性というものを感じたのでした。

ポイントは、渋川が7巡目に手出しした2mにあったんです。

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