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無料記事「このくらいの本なら俺にも書けるでしょ」【文・木村由佳】


「このくらいの本なら俺にも書けるでしょ」

2017年冬に竹書房から発売された「麻雀勝ち組の鳴きテクニック」がこのたび増刷された。
竹書房編集部の金本さんによると、「発売から5年間、ずっと売れ続けているのは戦術本としては珍しいこと」のようだ。
本の構成者の私は、とてもうれしい。
この機会に、この本をどうやって作ったかを、改めて書いておきたい。
酒場や雀荘ではさんざん話したことではあるが、文字にするのは初めてである。

川村 晃裕 (著), 木村 由佳 (構成)

事の発端は1冊の本だった。
2017年3月に竹書房から発売された、鈴木優プロの「1秒で見抜くヤバイ麻雀心理術」。私が関わった2冊めの麻雀本である。

 
優プロがMリーガーになった今は、ちょっとお色直しをしてタイトルの「ヤバイ」が変更になった、この本だ。

当時、本の発売を記念していろんな雀荘が鈴木優プロをゲストに呼んでいた。
その日も都内のある雀荘に優プロが来るというので、私は出かけることにした。私は、自分が一緒に仕事をした人がみんなにちやほやされるのを見るのが大好きなのだ。

たまたまその日、麻雀とご飯の約束をしていた川村晃裕さんをこのイベントに連れ出すことに成功した。当時から川村さんはこういったイベント事には乗り気ではなかったが、その日福地誠さんがツイッターで、この「1秒で見抜くヤバイ麻雀心理術」を褒めてくれていたことが来る決め手となった。

川村さんは福地さんの大ファンなのだ。
 
雀荘では優プロと川村さんを紹介し、しばらく和やかに雑談した。2人とも愛知県出身で、川村さんは当時既に麻雀プロはやめてしまっていたが天鳳の強者を輩出している「川村軍団」のリーダーとして有名だった。
その後、2~3回楽しく麻雀を打ち、優さんに「これからもがんばってください。また会いましょう」とあいさつした後、私と川村さんは焼き鳥屋に入った。
席に着くなり川村さんは言った。

「俺も本書きたい」
「え? なんて?」
「俺も福地さんに褒められたい」
「はぁ?」

実は川村さんが東京に来るきっかけは福地誠さんの影響だったということを私は後から知った。

そして、ついさっきサインしてもらった優プロの本を指さし
「このくらいの本なら俺にも書けるでしょ」
「このくらいって、何よ」
つい、私も少しケンカ腰になってしまった。
 
この本は、私にとっては小林剛プロの「スーパーデジタル麻雀」に次いで2冊目。それなりに苦労した本である。

「書けるもんなら書いてみーよ」

もともと優プロが他の出版社で準備していた戦術本の企画が頓挫し、その生原稿を丸ごと渡されて、その内容を分類して企画書を書き、そのごく一部が竹書房の書籍会議を何とか通過して「心理術」に特化した本を作ることになったのだ。

当時、優プロは愛知県の豊橋市に拠点を置いていて、小学生の子供がいる神奈川県民の私とでは打ち合わせのスケジュールをすり合わせるのもひと苦労。
竹書房の会議室で金本さんと3人で牌を並べたり崩したりしながら書き直し、その中身を検証すべくいろんな雀荘に出かけていって、数人の信頼できる友人と何回も検証して吟味して作り上げた大事な1冊だった。(コレも素晴らしい本なのでぜひ読んでほしいです)
 
「川村さんに『こんな本』って言われる筋合いはないわ」
「でもこのくらいなら書けるし」
「じゃあ、書いたらええやん。書けるもんなら書いてみーよ」

すると川村さんは
「書いたるわ」と即答した。
その強い口調に、私はちょっと驚いたと同時に考えを改めた。
 
前回の「スーパーデジタル麻雀」発売後、金本さんに「今度は誰の戦術本を書きたいですか?」と聞かれて「鈴木優さんがいいです」と答えて「心理術」本は誕生した。
またそう聞かれたときに「川村さんがいいです」と言えるなら、それもありなのだ。
フリーのライターとして、仕事が途切れないのは素晴らしいこと。

「川村さんが本にする価値があること書いてくれたら、企画出すわ」
「ほんとう?」
 
このときの川村さんの目の輝きといったら。さっきまでのケンカ腰などなかったことのよう。

「帰ろう。すぐやるわ」
「え、あ、そう? とりあえず何切る問題がわかりやすいと思う」
「わかった! できたら送る!」

焼き鳥屋の支払いは2000円ほどだった記憶がある。
まだ1杯目を飲んだあたりで解散となった。

「川村さんの性格めんどくさそうなので、連絡係をしてくれます?」

その夜のうちに、川村さんからツイッターのDMで「何切る問題」10問が詳しい解説付きで送られて来た。しかも手書きの原稿を写真に撮ったものを貼り付けて。

第一印象は「え、字がきれいやな」だった。しかも書き直しがほとんどないことに驚いた。
内容を読むと「私にはよくわからんけど、もしかしたらいけるかもしれない」と思った。そしてすぐにその手書き原稿をワードに打ち直し、印刷した。
 
金本さんにはまだ「次は誰の戦術本を書きたいですか?」と聞かれてもいない。私のほうから「見てほしいものがあります」とアポを取って、持ち込んだ。
金本さんの返事は

「おもしろい。このレベルのものが本1冊分書けるなら」

私はすぐに川村さんに連絡して、「同様のものをあと10問、毛色の違うものをあと10問。すぐに作れる?」と連絡した。
私自身、麻雀がそんなに得意ではないので、自分が川村さんに出した宿題がどのくらい難しいのかさっぱりわかっていなかった。ただとりあえずもう一度、川村さんの戦術の「質とスピード」を計りたかった。

それが麻雀プロであろうとアマチュアだろうと、世の中のどこか片隅に日の目を見るべき人がいるのなら、その人を麻雀の世界の前のほうに押し出したいという気持ちがあったのだ。

川村さんはすぐにそれに答えた。次の日に、びっしり手書きの原稿をDMに送り付けてきたのだ。

私はすぐにワードで打ち直したものと、川村さんから来たメール(「自分は戦術本を書きたい」という気持ちがめんめんと書いてあった)を金本さんに送った。
すると金本さんからもすぐに返事が来た。
「本を作りましょう。ただし、川村さんの性格めんどくさそうなので、木村さんが連絡係をしてくれます?」
「要するに、今やってることをずっとやればいいんですよね?」
「そういうことです。よろしく」
こうして、元麻雀プロで、川村軍団のリーダー・川村晃裕さんの戦術本を作ることが決まった。

福地誠さんがツイッターで「最近出た鈴木優プロの本がおもしろい」と発信してから、わずか1週間後のことだった。

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