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菅原千瑛「BEAST戦記」06 2024年3月18日

眠れない夜

嬉しくて眠れない夜よりも悔しくて眠れない夜の方が多い。
麻雀の性質上、例えばタイトル戦では数百人が優勝を目指すものの優勝者はただひとり。つまり大概の人間が悔しい気持ちを抱えるのです。

"麻雀プロたるもの、負け慣れなければいけない"
以前、佐々木寿人プロが、文言通りではないけれどもそんな感じのことを仰っていて、これは沢山の負けに慣れることを単に薦めている訳ではなく、沢山の対局がある中で気持ちを切り替えることに慣れ、次の勝負所に生かしていくべき。
そんなニュアンスとして、本当にそうだなぁと自分の念頭においています。

負けたことに対して落ち込んでる暇があれば次の機会で勝つために今出来ることをする方が良くて。
それならば体力を回復する睡眠も勝つために出来ることのひとつと考え、悔しくて眠れない夜など無くしてしまえばいい。ということは頭では分かっている。
けれども、眠れない夜は度々やってくるのです。

この気持ちの名前

Mリーグ2023-243月の初登板は18日月曜日第2試合

3月は収録対局等が立て込んでいたこともあいまって前回登板より2週間以上もの間隔がありました。
激化する6位のボーダー争いの真っ只中です。

プレッシャーはもちろんのこと、久々に打つことやチームメイトの頑張りを台無しにしたくない、負けたくない気持ち等、様々な感情が渦巻いていました。
この日第1試合出場のチームメイト大介さん(鈴木大介プロ)が試合前のインタビューで「やはり怖い気持ちもあります。けれどもこれまでに様々な厳しい局面での経験もあるので、鼓舞して、あとは日和らずに、自分の麻雀を打ち切るのみですね」と仰っていました。

楽屋で聞いていて、この人は自分の気持ちをなんと素直に吐露する人だろう、と思いました。
私自身は「怖い」と口にすることも怖かった。言ってしまったら、ますます怖くなってしまいそうだったから。
けれども、怖いのは自分だけではないんだ、と思えて心が少し和らぐのを感じ、ふつふつと湧いてきたのは勇気でした。
そうだ、自分だけではなく、チームメイトも皆、怖かろうと何だろうと歯を食いしばって戦に出向くのだ、と。全てはチームの勝利のために。

この舞台に立つ以上、勝ちたいと思わない人間はいません。
"チームを、ファンを背負っての戦い"は想像は容易でも、身をもって経験しなければ分からないものでした。正直、想像はしていたものの実際には何倍も何十倍もきついです。
(あくまで私個人の見解ですが)

胃痛なんてしょっちゅうあるし、長年の麻雀プロ人生でも過去にはない"放銃した途端激しい頭痛に見舞われる"なんてこともありました。
寄せられる多くの心無い言葉にまんまと傷付くこともあります。
それでも、いつでもカメラの前では何でもない顔をしたり、スイッチを押すようにして笑ったりして。
応援の声に涙したりもして。
対戦相手だけではなくプレッシャーや恐怖とも戦いながら、勝つための最善手を考え続けて打つのです。得てきた経験を生かし、新たな経験を、全てを糧にしていくのです。

(ちなみに麻雀を打ち出したらあまり恐怖は感じません。あと悲しくもありません。笑)

結果が求められるということ

南4局2本場、16巡目。トップ目の瑞原明奈プロから10巡目にリーチが入っており、2巡前の14巡目にツモR、白切りで聴牌。待ちの三六は自身の目から6枚見えであり現物待ち。③は勝負しています。

2も既に通しているが5はドラ。トップを目指す限り不必要な牌は全てツモ切りとする。故にツモ切りとしました。

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