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【読書】2020年7月に読んだ本まとめ

こんにちは!

今回は、先月一ヶ月間に読んだ本について記事を書きたいと思います。この一ヶ月で読んだ本まとめは、本を読むだけで満足したり、冊数を読むことに傾斜しないためにも定期的にやっている試みです。それでは、早速みていきましょう!


読んだ本まとめ

一ヶ月に読んだ本は以下の通り。

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総評

一ヶ月で読んだ本は35冊。その内訳は以下の通り。

- 小説・エッセイ → 3冊:国内0冊、海外(翻訳)3冊
- その他→ 32冊

7月の読書冊数は35冊。6月は38冊だったので、読んだ本の冊数としてはやや減です。体感としても読書以外に費やす時間が長かった印象はあるので、まあ妥当かなと言ったところです。

noteには継続して書いていますが、パソコンをいじったりものを作ったりという意欲自体はまだまだ衰えていないですし、まだ書いていないネタも結構あったりするのでこの傾向はしばらくは続きそうだなぁと思います。なんというか、やり始めるときりがないですし、手を伸ばす範囲もどんどん広くなっていくのでなかなか際限がない感じですね。沼は深いですw


今月のマイベスト小説&ビジネス書

毎月恒例となっていますが、その月で最も印象に残った小説・ビジネス書を紹介します。

小説部門

草を結びて環を銜えん

先月のマイベスト小説は、SF作家ケン・リュウの短編集「草を結びて環を銜えん」です。このケン・リュウという作家は中国にバックグラウンドを持つアメリカのSF作家で、自ら作品を手がけるのに加え、中国作品の英語翻訳などもやっている方です。ちょっと前に話題なった中国SFアンソロジー「折りたたみ北京」を編集したり、話題沸騰中の「三体」の英訳を務めていることでも有名ですね。

日本で出版されているケン・リュウの短編集は単行本としては「紙の動物園」「母の記憶に」「生まれ変わり」の3冊、前者の2つはそれぞれ二分割されたうえで文庫化されています。この「草を結びて…」はこのうちの「母の記憶に」の片割れとなる短編集で、全体的な傾向としてはSF色が他に比べると薄く、中国の寓話的な話がおおいという印象ですね。特に後半の作品群はほとんどSFといえる要素はないと言えます。

個人的にケン・リュウの魅力は文章のやわらかさ・しなやかさだと思います。SFというとどうしても硬い・冷たいイメージを持っている方が多いと思いますが、この方の話からはそれとは対極の温かみを感じます。雰囲気的にも、バックグラウンド的にも同じく中華系アメリカ人作家のテッド・チャンに通じるものがありますね。あまり単純な二元論に帰結するのは避けるべきだとは思いますが、このあたりは東洋・西洋の考え方の違いも影響しているのかも知れません。

個人的に面白いなと感じた短編は「存在(プレゼンス)」と「シュミラクラ」の二作品。どちらもこの短編集のなかではSF色が強めの作品で、前者はリモート介護の話で後者は「シュミラクラ」と呼ばれる、人間をシミュレートする装置についての話です。どちらも10~20ページという非常に短い短編ではありますが、これらの作品があぶり出す問題意識は現代を上手く投影しているなと感じます。このあたりの機微はさすがケン・リュウですね。

特に「存在(プレゼンス)」が突きつける課題は、日本も含めた国々がまさに直面しているやりきれなさのような物を描いており、他人事ではないなと感じます。ここでは話の本筋を紹介することは避けますが、要するにリモート介護ができるようになり、親元を離れた場所で自分の幸せを追求できるようになった反面、「リモートで介護しているからそれでよい」とは簡単に割り切れない人間の葛藤を描いている作品です。

この作品は現代のリモートワークの流れよりも前に書かれたものですが、リモート化の流れはこれからも間違いなく進んでいくことでしょう。この作品にかかれているようなリモート介護が成立するようになるのも時間の問題だと思います。それによってお互い物理的な場所に制約されない生活が出来るという大きなメリットはありますし、それによって双方にとって幸福な生活が出来るようになるケースも多いでしょう。しかし、なかなかそれだけでは割り切れない何かがあるのは人間なわけで、そのあたりの描写は現代人にちくりと刺さるものがあるのではないか、そんな風に思ってしまいました。

また、ここではあまり触れませんでしたが、後半の中国色の強い寓話もどれもなかなか読み応えがあって面白かったです。特に最後の短編である「万味調和」は、アメリカに移住してきた中国人の団体と現地アメリカの女の子の交流を描いた作品であり、なんとなくケン・リュウのルーツのようなものを感じてしまいました。もちろん筆者がどのような意図でこの作品を書いたのかはわかりませんが、「アメリカに渡ってきた中国人」という存在に、ケン・リュウ自身の思いが込められているような気がしてなりません。


ビジネス書部門

安心社会から信頼社会へ

今月のマイベストビジネス書は山岸俊男さんという方の「安心社会から信頼社会へ 日本型システムの行方」という本です。この本を読もうとしたきっかけは6月に読んだ糸井重里さんの「インターネット的」という本で紹介されていたことです。この本にかかれている内容が自分の問題意識と非常に近く、それでいて心理学やゲーム理論的な考え方を使ってスマートに説明していたことが印象的で、今回のベスト本に選びました。

この本がかかれたのは1999年という約20年前の本ではありますが、現代にも続く日本の集団主義文化の問題点を非常にきれいに解説した一冊です。個人的には、日本人論の本としては山本七平さんの「空気の研究」と並ぶくらいの名著だと感じました。その問題意識としては、「日本社会が直面している問題は、安定した社会関係の脆弱化が生み出す「安心」の崩壊の問題であ」るということです。ここから議論をスタートさせて、従来型のコミュニケーションのあり方について論じて行きます。

この本で繰り返し述べられているのは、「基本的に日本人は他人を信用していない」ということです。さらに、それを単なる人々の意識の低さや人格の悪さに帰結させることなく、「他人を信用しないことが得になる」という「構造」に着目しているのがポイントです。明確にその言葉が書かれているわけではありませんが、内容的には「ゲーム理論」的な解釈だなと感じました。

日本人は他人を信用していない(つまり、社会的不確定性が高い)。だからこそ、互いに「コミットメント」を結ぶことで社会的安定(安心)を得ようとする。しかし、そういった「コミットメント」は多大なる「機会費用」を必要とし、それが社会の非効率に繋がっているというわけです。僕はこれは現代にも続く日本の閉塞感の核心をついていると思います。

「コミットメントによる機会費用」というとちょっとわかりにくいかも知れませんが、いわゆる「昭和的終身雇用」を例に取るとわかりやすいと思います。終身雇用とは、会社から社員への「定年まで解雇をしないこと」と社員から会社への「定年まで会社に忠実に働き続けること」という互いの「コミットメント」によって不確実性を減らしている例だと言えます。現在の日本の大手企業にとって、過去に交わしたこのコミットメントが多大なる負担となっているのは言うまでもないでしょう。これが機会費用による非効率の典型的な例だといえると思います。

そのような形で心理学的実験やゲーム理論的な考察から日本社会の問題を構造的に解き明かしていくのがこの本の内容です。後半の解決策については(現代から見ると)少し物足りない気はしますが、それでも現代の問題点を理解する上では非常に見通しがよくなる一冊だと思います。おすすめです!


やはり本屋があると多様性が出る

7月に読んだ本を並べてみて思うのは、「バランスが良い」ということです。小説が少ないのと、もうちょっと重めの本を増やしたいなと言う気持ちはあるものの、ジャンルとしては結構上手く散らすことができたと思います。最近ハマっているテクノロジーや生物系だけでなく、ほどよい感じで経済や歴史、数学、心理などが混じっていて全体的に見ると多様性という面ではだいぶ改善されたと思います。

まあ、やはりその要因は本屋にいけるようになったことですね。特にブックオフにいって10~20冊くらい気になる本をまとめて買うみたいなことがまた出来るようになったので、それによって様々な本を選べるようになったのは大きいです。先月も書きましたが、Kindleとかだと「大量にある本のリストの中から、なんとなく気になる本を手に取る」みたいなことをやるのが難しいんですよね。

例えば、今月読んだ「日本の食卓からマグロが消える日」とか「日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか」とかって、タイトルを見るとすごく面白そうだと思うんですが、こういうのをKindle shopで見つけるのは困難なんですよね(まあ前者はちょっと期待はずれではあったのですが…)。それが必ずしも紙の本の(本質的な)有意性かと問われると結構微妙な気はするのですが、少なくとも現状は電子書籍でそれがうまくできる仕組み・サービスが現状無い以上、紙の本を売っている本屋に行くしかありません(将来的にそういうことが出来るサービスが出来る可能性は否定しませんが)。

ただまあ、ちょっとこれからどうなるかがわからないのが悩みどころでは有りますね。個人的にはよほどのことがなければ以前のような大規模な営業停止はないと思っていますが、あとは自衛とそもそも本屋業界が生き残っていけるのかと言う問題ですね。こればっかりはちょっとわからないので、なんとか書店に行かなくてもいろんな本に出会える仕組みを考えたいところです。VR本屋とかデジタルツイン的なものが遅かれ早かれ出てくると思っていますが、そのあたりがどの程度使えるかは未知数です。


まとめ

今回は7月に読んだ本のことについてまとめてました。なんだかんだ、こうして振り返る機会を設けることで考えさせられることも多いので、これからも毎月継続していくつもりです。

それでは、また!


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