【読書】2020年12月に読んだ本まとめ
あけましておめでとうございます!
今回は、先月一ヶ月間に読んだ本について記事を書きたいと思います。この一ヶ月で読んだ本まとめは、本を読むだけで満足したり、冊数を読むことに傾斜しないためにも定期的にやっている試みです。それでは、早速みていきましょう!
読んだ本まとめ
一ヶ月に読んだ本は以下の通り。
総評
一ヶ月で読んだ本は38冊。その内訳は以下の通り。
- 小説・エッセイ → 3冊:国内2冊、海外(翻訳)1冊
- その他→ 35冊
12月の読書冊数は38冊。11月は34冊だったので、先月よりは割と増えた感じですね。多少は生活リズムも整ってきて、読書の時間を確保できるようになってきたかなぁと言ったところでしょうか。一冊あたりの密度も、本の多様性としても先月・先々月と比べても改善している感じがします。
ただ、こうして振り返って見ると、12月に読んだ本はものの見事にKindleばかりですね。おそらく、最初の「女ぎらい」と最後の「それが僕には楽しかったから」を除いて全てKindleです(購入したものもあるので、全てUnlimitedなわけではない)。やはりというか、電子書籍は手軽で便利なゆえに紙の本から離れてしまっているところはありますね。それがいいか悪いかは微妙ですが、電子書籍に偏っているということ自体は意識しておいてもいいのかもしれません。
今月のマイベスト小説&ビジネス書
毎月恒例となっていますが、その月で最も印象に残った小説・ビジネス書を紹介します。
小説部門
先月のマイベスト小説はカレル・チャペックというチェコ作家の「山椒魚戦争」です。カレル・チェペックについては、昔から気にはなっていたものの読めていない作家だったので、満を辞してという感じですねw いわゆる機械人形を表す「ロボット」という言葉を初めて使った作家としても有名な方です。
物語は、人語を理解し、肉体労働ができる山椒魚が発見されるところから始まります。初めは不気味な存在としてしか見られなかったその山椒魚が、人間の言葉を理解し、人間の労働力(主に水中作業)として活用できるとわかると、瞬く間に世界中で利用されるにいたります。人間によって山椒魚の人材派遣のような管理体制ができていく様子や、人間と山椒魚の関係、社会的な受け止められ方などの経緯を描いていくという小説です。
個人的に面白かったのが、その独特な語り口です。ところどころで具体的な人物のエピソードが語られるわけですが、全体としては特定の人物に視点を固定しない形で物語が綴られ、ある種のノンフィクションやドキュメンタリーを読んでいるような読書体験が得られます。冷静に考えると荒唐無稽なわけですが、なんとなくありそうだと思わせるあたりの世界観の作り込みが見事って感じですね。
具体的には、労働力として扱うためのシンジゲートが作られて富が独占されていく様子とか、山椒魚に人権的なものを与えるべきみたいな勢力が出てくることとか、各国の保有する山椒魚の間での小競り合いが外交問題に発展する、などですね。
その辺りも含め、当時の社会を風刺したブラックユーモアのような部分がこの本の最大の魅力かなと思います。上記の紹介を読めばなんとなくわかるとおり、明らかに山椒魚が何かの暗喩として機能しているのは間違いなく、それが労働力であったり機械だったりするのかなぁなんてのを考えるのも楽しいです。便利な生活や豊かな社会を求めて作ったシステムなのに、気がつけばシステムに飲み込まれるみたいなところは、やはり資本主義的なものに対するアンチテーゼを感じます。今となってはちょっと課題設定がありきたりな感じは否めませんが、それでも全体を通して漂う雰囲気や、独特の雰囲気を持つ山椒魚の生態の話なんかは読んでいて楽しいです。
全体を通して感じるのは、人類のどうしようもなさみたいな所ですねw 僕はそういう人間の不合理的なところとかが人間臭くて好きなので、そ人間の人間らしさをしっかり描いているというのが気に入ったところです。最後の結末はちょっと意見が分かれそうなところでもありますが、個人的には「そういう終わらせ方もあるのか」という感じで、割とアリですねw
冒頭に書いた通り、カレル・チャペックの本は今回初めて読んだわけですが、その作風はかなり気に入りました!やはりSF好きとしては抑えておきたい作家の一人だとも思うので、別の本もそのうち読んでみたいと思います!
ビジネス書部門
先月読んだ本の中で、最も印象的だったのがこちら。渡瀬裕哉さんというアメリカ政治が専門の方が書いた「なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか」。個人的には今年読んだ本の中でもとりわけ楽しく・興味深く読めた一冊であり、現代人類の問題点と将来の展望をここまで綺麗に整理した本はなかなかないと思うレベルのものでした。紋切り型の「分断は良くない」という論調とは全く違う次元の考察であり、その構造を丁寧に読み解いていく展開は非常に読み応えがあります。
この本の全体の構造としては、アメリカを始めとした先進諸国で問題となっている「アイデンティティポピュリズム」の構造を述べたのち、その対局をとして中国で進められている「デジタルレーニン主義」の現状と問題・課題点の解説、そして最後に国民国家を超える仕組みとしての「仮想通貨」論を展開していくという流れ。米中の対立という構造自体は割とありふれたものだとは思いますが、民主主義の問題の論調の中に「仮想通貨」をキーワードにした新たな視点を差し込んでいくアクロバティックな展開がこの本の最大の魅力だと思います。
僕自身としても、「仮想通貨」の存在は一般に言われているよりもずっと大きなポテンシャルを持つものだと思っています。それはまさに先月の読んだ本のまとめでも書いたことなのですが、それをさらに高い解像度としっかりとしたロジックで解説したものがこの本だとも言えるでしょう。Facebookが提唱している「リブラ」の存在や、中国共産党が構想している「デジタル人民元」のインパクトの大きさが非常にわかりやすく書かれていると思います。
また、分断の話になると、どうしてもトランプ政権的なものを批判する論調に終始する言説が多い印象がありますが、そこで議論を終わらせずに民主主義・選挙というシステムの構造的な問題点として描いていることもまたこの本の特徴の一つです。民主主義にも関わらず分断が生み出されてしまうのではなく、民主主義自体が分断を生み出すシステムだという論点は一考の余地があるでしょう(タイトルはまさに、それを端的に表しています)。
論調に関していうとちょっと偏っている部分もあるかなとは思いますが、それでも、色々と自分の中の考えが整理され、考えるきっかけとなった一冊であることは間違いありません。昨今の社会現象やこれからの世の中を考える上でも非常に参考になる本だと思うので、興味のある方は是非読んでみてください!!
2020年の総括
年明けということで、去年の読書傾向について簡単に振り返りたいと思います。
去年の読書を一言で表すと、「社会的な本の読書量が減って、価値を生み出すための本が増えた」というところでしょう。特に、具体的なテクノロジーやものづくり、プログラミングなどの実践的な本については一昨年まではほとんどなかったですが、去年はその割合が明らかにグンと増えました。
単純に自分の興味の対象がそっちにいっていたというのもありますが(このnoteを良く読んでいる方ならわかると思いますw)、人間関係・再分配の話をいくらしていても前には進まないのではないか?と考えが変わったのが大きいですね(詳しくは年末にブログに書いた下記エッセイをご参照ください)。
もちろん、社会問題を考えていくこと自体はとても大事なことだと思いますし、それに対して直接的な形で活動している人には頭が上がらないのはいうまでもありません。しかし、再分配のアプローチだけでは限界があり、それに対して新たな価値を生み出すアプローチ(上記エッセイの言葉を使うなら「パイを広げていくアプローチ」)が必要なのではないか?というのが、この一年考えてきたことです。
今までできなかったことをできるようにするために必要なのが「テクノロジー」であり、だからこそそれを積極的に吸収してきた、という感じですね(もちろんテクノロジーで全てが解決するわけではないですが)。そういう意味では、なかなか人と会いにくいご時世になったことで、人間関係的なものから少し距離をおくきっかけになったことはそんな悪くないことかなぁと思っています。
感染症の影響はまだまだ続くでしょうし、来年がどのような世の中になるかは全くわかりませんが、その中でできることを考えていきたいですね!
まとめ
今回は12月に読んだ本のことについてまとめてました。なんだかんだ、こうして振り返る機会を設けることで考えさせられることも多いので、これからも毎月継続していくつもりです。
それでは、また!
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