闇深いグレートリセットの起源

この投稿はF. William Engdahl氏の2023年4月14日の記事(下記のリンクを参照)の抄訳です。
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
また、日本人に伝わりやすいように原文にはない文言や説明を追加している場合がありますので、ご承知おきください。
英語原文:


闇深いグレートリセットの起源
 
寄稿者:F. William Engdahl
Global Research、2023年4月14日
 
クラウス・シュワブが提唱する世界のグレートリセットとやらには新しいオリジナルのアイデアは一つたりともない。それを知っておくことが重要だ。第四次産業革命やステークホルダー資本主義もシュワブ自身が考え出したものではない。クラウス・シュワブは、グローバルなテクノクラシー計画、すなわち企業の力と国連などの統治体制を統合するコーポラティズムを広める口達者な広報担当者以外の何者でもなく、この計画の起源は1970年代初頭以前に遡る。国連の支配のもとで地獄のような地球規模の独裁を実現する計画が数十年かけて進められてきたが、グレートリセットはそのアップデート版にすぎないのだ。この計画の重要人物は、デイヴィッド・ロックフェラー(David Rockefeller)とその弟子のモーリス・ストロング(Maurice Strong)だ。やがてチェース・マンハッタン銀行会長として知られることとなる故デイヴィッド・ロックフェラーは、1970年代初頭時点で間違いなく世界政治において誰よりも影響力を持っていた。
 

新しいパラダイムの創出
1960年代末から1970年代初頭にかけて、デイヴィッド・ロックフェラーと直接結び付いていた国際サークルがエリート団体やシンクタンクを次々と立ち上げた。たとえば、ローマクラブ(Club of Rome)、世界自然保護基金(WWF)とつながりのあるThe 1001: A Nature Trust、ストックホルムで開催された国連人間環境会議、レポート『成長の限界』(原題『Limits to Growth』)を作成したMITの研究チーム、デイヴィッド・ロックフェラーの三極委員会だ。
 

ローマクラブ
1968年、デイヴィッド・ロックフェラーはアウレリオ・ペッチェイ(Aurelio Peccei)とアレキサンダー・キング(Alexander King)と共に新マルサス主義のシンクタンクであるローマクラブを設立したアウレリオ・ペッチェイは大きな影響力のあるイタリアのアニェッリ家が所有する自動車会社フィアット(Fiat)でシニアマネージャーを務めた人物だ。フィアットのジャンニ・アニェッリ(Gianni Agnelli)はデイヴィッド・ロックフェラーの親友であり、ロックフェラーのチェース・マンハッタン銀行の国際諮問委員会のメンバーだった。二人は1957年に親しくなり、ジャンニ・アニェッリは1973年にデイヴィッド・ロックフェラーの三極委員会の創設メンバーになった。アレキサンダー・キングはOECDの科学技術プログラムの責任者であり、NATOのコンサルタントでもあった[i]。そしてここから、人間が世界の汚染源だとする新マルサス主義運動が始まることとなる。
1971年、ローマクラブは大きな欠陥のあるレポート『成長の限界』を発表し、急速な人口増加と石油などの固定的資源が原因で文明が終わりを迎えると予測した。このレポートでは、資源の消費状況が大きく変化しない限り、抑えられないほど急激な人口減少と産業力の低下が生じる可能性が極めて高いと結論付けられている。これはMITのコンピューターサイエンスチームが行ったインチキのコンピューターシミュレーションに基づいており、レポートには「世界の人口増加、産業化、環境汚染、食糧生産、資源の枯渇が現在の傾向のまま進めば、100年以内に地球上での成長の限界に達する」という大胆な予測が記されている。これが1971年のことで、1973年にはクラウス・シュワブがダボスで開催した3度目の年次ビジネスリーダー会議にアウレリオ・ペッチェイを招き、集まった企業のCEOに向けて『成長の限界』のプレゼンを行わせている[ii]。
1974年、ローマクラブは「地球は人間という癌におかされている」と高らかに謳い、さらに「世界は人口過剰、食糧不足、再生不能な資源の枯渇、環境の悪化、劣悪な統治体制といったグローバルな問題が相互に絡み合うかつてない苦境に直面している」と主張した[iii]。そして、世界全体のシステムを再構築する必要があると訴えた。エネルギー危機や食糧危機などの危機を解決するには社会規範(価値体系と人類の目標)の劇的な変化が必要であり、社会の変化と個人の考え方の変化を起こさなければ有機的な成長を実現することはできないというのだ[iv]。
 1974年のレポート『転機に立つ人間社会』(原題『Mankind at the Turning Point』)でローマクラブは次のように主張している。

「国や地域間の相互依存が強まることは、独立が弱まることを意味する。自国の独立を部分的に放棄するか、少なくとも自国の独立の限界を容認しなければ、国家は相互依存関係を築くことはできない。今こそ、すべての限りある資源を全世界で分配して新しいグローバル経済システムを土台とした有機的で持続可能な成長を実現するための基本計画を立案する時だ」[v]

これが、国連のアジェンダ21、2030アジェンダ、2020年のダボス会議のテーマとなったグレートリセットの原型だ。
 

デイヴィッド・ロックフェラーとモーリス・ストロング
1970年代にロックフェラーの「ゼロ成長」計画の牽引者として最も影響力を発揮したのは、デイヴィッド・ロックフェラーの長年の友人であるモーリス・ストロングというカナダ人石油王だった。モーリス・ストロングは、車両による輸送、石炭発電、農業を通じて人間が排出する二酸化炭素が原因で全世界の気温が急激に上昇して地球を脅かす(いわゆる地球温暖化)という科学的に間違った理論を広めた初期の重要人物の一人だ。
1972年にストックホルムで開催された国連人間環境会議の議長として、ストロングは「環境を守る」という大義名分のもと世界中で人口を削減し生活水準を引き下げるという計画を推進した。ストロングは自身の過激な環境保護計画について次のように述べている。

「地球にとっての唯一の希望は、産業化した文明が崩壊することではないだろうか。それを引き起こすことが私たちの責任ではないだろうか」[vi]

これが今、偽物の世界的パンデミックにまぎれて行われているのだ。
ストロングを国連の大規模な環境保護活動の責任者に選んだのは奇妙だ。デイヴィッド・ロックフェラー、アスペン研究所(Aspen Institute)のロバート・O・アンダーソン(Robert O. Anderson)、シェル(Shell)のジョン・ラウドンなど、「環境保護の清らかさ」を訴える人物が次々と現れていたが、ストロングも彼らと同様に石油開発によってキャリアと莫大な富を築いていたからだ。
ストロングはまだ18歳の青年だった1947年にデイヴィッド・ロックフェラーに出会い、その時からストロングのキャリアはロックフェラー家のネットワークと密接に結びつくこととなった[vii]。デイヴィッド・ロックフェラーの友人になったことで、弱冠18歳のストロングに国連財務官ノア・モノー(Noah Monod)の部下として国連の重要なポストが与えられたのだ。ロックフェラーのチェース銀行は国連の資金を都合よく処理していた。これはのちに公的な機関から個人的な利益を得るためにストロングが導入する「官民パートナーシップ」の典型だ[viii]。
ストロングは1960年代に石油企業パワー・コーポレーション(Power Corporation)の社長になった。モントリオールを拠点とするエネルギー関連の巨大コングロマリットである同社は、やがてポール・デズマレー(Paul Desmarais)に買収された。カナダ人調査ジャーナリストのエレーヌ・ドゥーワー(Elaine Dewar)によると、世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」プログラム出身者であるジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)の父ピエール・トルドー(Pierre Trudeau)など、選り抜きのカナダ人政治家の政治運動資金を不正に調達するために、パワー・コーポレーションが利用されていたという[ix]。
 

第1回ストックホルム地球サミットと第2回リオ地球サミット
1971年、ストロングはニューヨークの国連事務次官となり、スウェーデンのストックホルムで開催される国連人間環境会議の事務局長にも任命された。  また、同年にはロックフェラー財団の理事に任命され、同財団からストックホルムで「地球の日」プロジェクトを立ち上げるための資金提供を受けた[x]。ストックホルムでは国連環境計画(UNEP)が創設され、ストロングがその責任者となった。
1989年、ストロングは国連事務総長に任命され、1992年の環境と開発に関する国際連合会議(UNCED、第2回リオ地球サミット)を指揮することとなった。そして、国連の持続可能な環境保全目標である「アジェンダ21」の草案作成と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の創設を監督した。アジェンダ21はのちにクラウス・シュワブのグレートリセットの基礎となる。また、世界経済フォーラムの理事でもあったストロングの計らいで、シュワブはリオ地球サミットの主要顧問を務めた。
国連リオ地球サミットの事務局長であるストロングの委託を受け、ローマクラブのアレキサンダー・キングはレポート『第一次地球革命』(原題『The First Global Revolution』)を執筆した。同レポートには、二酸化炭素によって地球が温暖化するという主張は無理やり変化を起こすために考案された策略にすぎないことを認める次のような記述がある。

「人類の共通の敵は人間だ。
人類が団結するための新たな敵を探す中で、私たちは汚染、地球温暖化の脅威、水不足、食糧不足などがぴったりだと考えた。これらの危機はどれも人間の干渉によって引き起こされているものであり、考え方や行動を変えなければ克服できない。
つまり、本当の敵は人類自身なのだ」[xi]

クリントン大統領がリオに派遣したティモシー・ワース(Timothy Wirth)も同じことを認め、次のように述べている。

「私たちは地球温暖化の問題を乗り越えなければなりません。たとえ地球温暖化の理論が間違っていたとしても、経済政策と環境政策の観点から見れば正しいことをすることになります」[xii]

ストロングはリオで初めて「持続可能な社会」という考えを取り入れた。これは、二酸化炭素やいわゆる温室効果ガスを排除するという恣意的な目標に関連して考案された、大衆を思いどおりに操るための思想だ。「アジェンダ21」は2015年9月にローマで教皇の承認を得て「2030アジェンダ」と呼ばれるようになり、17の「持続可能」な開発目標が示された。また、国連は過去に次のような考えを表明している。

「土地というものは特有の性質を有し、人間の居住において極めて重要な役割を担うため、通常資産として扱われたり、個人によって支配されたり、市場の圧力や非効率性にさらされたりしてはならない。土地の私有は富の蓄積と集中の主要な手段でもあり、そのため社会正義に資する。しかし、抑制しなければ、開発計画を策定し実行する上で大きな障害となる可能性がある。社会正義、都市の再開発、適切な居住環境や健康的な生活環境は、社会全体の利益のために土地を使用しなければ実現できない」

つまり、「社会全体」のために土地の私有を社会主義化しなければならないということだ。これはソ連時代のよく知られた思想であり、世界経済フォーラムのグレートリセットの重要な要素でもある。
1992年、ストロングはリオで議長兼事務局長として次のように述べた。

肉の大量摂取、大量の冷凍食品やインスタント食品の消費、化石燃料、家電、家庭用およびオフィス用エアコンの使用、郊外居住など、裕福な中流階級の現在のライフスタイルと消費パターンが持続可能でないことは明らかです」[xiii]

その頃、ストロングは地球の滅亡と温暖化を喫緊の課題として警告することによって密かに国連を新しいグローバルなテクノクラシーパラダイムを押し付けるための媒体へ変容させる取り組みの真っただ中にあり、行政機関と企業の力を融合させ、選挙で選ばれていない人が「サステナビリティ」の大義名分のもとでほぼすべてのことを支配できるようにしようとしていた。1997年、ストロングは地球サミット後の行動計画である「Global Diversity Assessment」(世界多様性アセスメント)の策定を監督した。これは、地球上のあらゆる資源を支配して第四次産業革命を実現するための計画だ[xiv]。
この時、ストロングは世界経済フォーラムの共同会長を務めていた。2015年、ストロングが亡くなった際に世界経済フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブは次のように述べた。

「世界経済フォーラムの創設以来、モーリス・ストロングは私の指導者であり、良き友人であり、欠かせないアドバイザーでした。そして長年にわたって財団の理事を務めてくださいました」[xv]

イラクの石油食糧交換プログラムでの不正疑惑で国連を追われる前、ストロングはローマクラブの会員、アスペン研究所の理事、そしてロックフェラー財団とロスチャイルド財団の理事だった。また、ルシファー・トラスト(ルシス・トラスト)の礼拝堂であるTemple of Understanding(TOU、会得の神殿)の幹部も務めた。ニューヨークのセント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂にあるこの礼拝堂では、「羊や牛を祭壇に連れて行って祈りを捧げるなどの異教徒の儀式が行われており、堆肥と虫を入れた器を礼拝者が祭壇に運ぶ際にアル・ゴア(Al Gore)副大統領が説教を行った」という[xvi]。
これがシュワブのグレートリセットの闇深い起源だ。グレートリセットが実現すれば、私たちは「地球を守る」ために昆虫を食べなければならず、私有財産も失うこととなる。この計画は何十億人もの「普通の人」を排除することを目的としており、暗い地獄へと続いている。
 

注釈
[i] Biographies of 1001 Nature Trust members, Gianni Agnelli, accessed in http://www.bibliotecapleyades.net/sociopolitica/sociopol_1001club02.htm
[ii] Klaus Schwab, The World Economic Forum: A Partner in Shaping History–The First 40 Years: 1971 – 2010, 2009, World Economic Forum, p. 15, https://www3.weforum.org/docs/WEF_First40Years_Book_2010.pdf
[iii] Quoted from Club of Rome Report, Mankind at the Turning Point, 1974, cited in http://www.greenagenda.com/turningpoint.html
[iv] Ibid.
[v] The Club of Rome, Mankind at the Turning Point, 1974, quoted in Brent Jessop, Mankind at the Turning Point – Part 2 – Creating A One World Consciousness, accessed in http://www.wiseupjournal.com/?p=154
[vi] Maurice Strong, Opening Speech to UN Rio Earth Summit, Rio de Janeiro, 1992, accessed in http://www.infowars.com/maurice-strong-in-1972-isnt-it-our-responsibility-to-collapse-industrial-societies/
[vii] Elaine Dewar, Cloak of Green: The Links between key environmental groups, government and big business, Toronto, James Lorimer & Co., 1995, pp. 259-265.
[viii] Brian Akira, LUCIFER’S UNITED NATIONS, http://www.fourwinds10.com/siterun_data/religion_cults/news.php?q=1249755048
[ix] Elaine Dewar, op cit. p. 269-271.
[x] Ibid., p. 277.
[xi] What is Agenda 21/2030 Who’s behind it? Introduction, https://sandiadams.net/what-is-agenda-21-introduction-history/
[xii] Larry Bell, Agenda 21: The U.N.’s Earth Summit Has Its Head In The Clouds, Forbes, June 14, 2011, https://www.forbes.com/sites/larrybell/2011/06/14/the-u-n-s-earth-summit-has-its-head-in-the-clouds/?sh=5af856a687ca
[xiii] John Izzard, Maurice Strong , Climate Crook, 2 December, 2015, https://quadrant.org.au/opinion/doomed-planet/2015/12/discovering-maurice-strong/
[xiv] What is Agenda 21/2030 Who’s behind it? Introduction, https://sandiadams.net/what-is-agenda-21-introduction-history/
[xv] Maurice Strong An Appreciation by Klaus Schwab, 2015, https://www.weforum.org/agenda/2015/11/maurice-strong-an-appreciation
[xvi] Dr. Eric T. Karlstrom, The UN, Maurice Strong, Crestone/Baca, CO, and the “New World Religion”, September 2017, https://naturalclimatechange.org/new-world-religion/part-i/
 
本記事の掲載元はGlobal Researchです
Copyright © F. William Engdahl, Global Research, 2023
 
寄稿者:
F. William Engdahl


訳者注記
誤訳や訳漏れがある可能性がありますので、記事の内容を参考にする場合は必ず下記リンクの英語原文に依拠してください。
英語原文:https://www.globalresearch.ca/dark-origins-davos-great-reset/5797113
 
関連記事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?