2020年はアバターストア元年(4) ~リスペクトって何?~

前回のおさらい

アバター文化の抱える問題(おさらい)

・ユーザーとアバターのマッチング問題(第1回
・アバターの使い道がない問題
・言語の壁(第2回はここまで)
・法人利用問題(第3回
・規約規格化問題(今回はここ)
・アバターコピー問題

前回はアバター文化圏のパイを増やすべく、アバターの用途拡大のためにはアバター以外の用途開拓、そのための法人利用の体系化が重要なものの、その際にプラットフォームとクリエイターの目的意識の違いが両者の摩擦を引き起こしてしまうことについて述べました。

今回はその目的意識とはなんのことなのか、すれ違いを回避するにはどうしたら良いのかについて書きたいと思います。

○目的意識のすれちがい

目的意識の違いはプラットフォーム企業とクリエイターの考え方の違いから引き起こされます。ただどちらもコミュニティの発展を考えているのは確かだと思います。

プラットフォーム企業からすると、利益還元こそがクリエイターに対するリスペクトであり、ユーザー(取引先)の利便性を上げて効率よく経済を回す(かつ自分も儲かることで持続発展可能とする)ことでコミュニティに貢献することが至上命題になると思います。

VRCモデルデータベースは企業ではありませんが、基本的には同じ考え方で作りました。現在運営(私)が収益を得るような構造になっていないので片手落ち感はありますが・・・

一方、クリエイターが目指すものは自分の作品が評価される、コミュニティの資産を増やす(盛り上げる)ことであると思います。現在のアバター文化を支えている同人クリエイターならそれはさらに顕著でしょう。この評価というものが金銭的な対価とは限らない作品・作者に対するリスペクトという曖昧なものを含んでいるため、企業とのすれ違いが起こるのだと思います。

○リスペクトって何?

このリスペクトとは、作者が作品をコントロールしていること、作品は作者のものであるという前提を支持することであると思います。

これは例えば金銭的に対価を払う場合、それは作品のレンタル料であるということです。ここがいわゆるプロの仕事との明確な違いです。アバターに限らず、この手のプロの仕事の場合は諸々の権利を移譲する契約を(書面の有無に関わらず実質的に)結んでいるはずです。それが同人の世界になると金銭的なやり取りがあったとしても、作者が不快に感じる使い方をされたらTwitterで荒ぶります。たとえ規約(契約)で抑えられていない内容であったとしてもです。あるいは規約に書いてないことは守られなくてもしょうがないが、いかなる内容であってもユーザーは規約を遵守するべきという考え方の人もいます。いわゆる規約のお気持ち運用と言われる所以だと思います。

企業からすると大変リスクに感じると思います。しかしクリエイター側からすると、金銭的なやり取りがあったとしても作品は自分のものなので当然のことです。BOOTHの規約が「できることリスト」であることや、書かなくても著作権は失わないのに「著作権は放棄しない」と書かれていることはその表れではないかと思います。さすがにレンタルです、と書いているモデルは見たことがありませんが。

以上のことから、企業が同人の世界でクリエイターをリスペクトするためには、事前に全ての権利を移譲するよう契約するか都度作者に確認を取る(仁義を切る)必要があります。

前者の場合はクリエイターからすると作品を完全に手放してしまうリスクを負います。その分が価格の高騰につながります。さらに企業からすると交渉時点で契約内容を晒されるリスクを負います(実際に不当な契約を押し付けられたという炎上事件は数え切れないほど起こっています)。

後者の場合は単純に工数増です。連絡時のリードタイムも塵も積もれば山となります。

(注)上記の内容は少々過剰なところはありますし、互いに納得できる契約を結んでいるケースが表に出てきていないだけ、ということもあるかと思います。

○プラットフォームの役目

同人世界のリスペクトという概念は、企業と非常に相性が悪いというお話を上の章でしましたが、そこにプラットフォーム、アバターストアの価値があると思います。

こと同人世界のリスペクトに関する問題は、基本的には認識の違いが起こす問題です。なので企業もクリエイターも契約前・契約後(問題発生時)に認識のすり合わせができるシステムがあれば良いとなります。

極端に言ってしまえば両者がしっかりと割り切れるシステムです。ここで、経済を回すことを優先して企業にもクリエイターにもいい顔しようとするとTwitterはお気持ちで溢れ、企業はリスクを感じて撤退することになると思います。

これって、結局は立場を問わず利便性を上げるとこだと思います。具体的には規約の規格化とそれに対する検索機能(契約前)個別の契約に対するDM・チャットチャンネル(契約後)です。ちょうど、Vケットストアでは「Uni-Virtuai License」通称UVライセンスと、テーラメイド・オーダメイド機能に付随した仲介機能の実装が公表されましたね。

そして規約の規格化ではクリエイターが作品の一部を手放すこと(規約に盛り込めない内容が出てくること)、DM・チャットチャンネルでは企業が工数を割くこと(それが利益に直結しなくても)を割り切る必要があります。Skebでクリエイタークライアント双方にガイドラインが提供されているように、互いに必要な割り切りをプラットフォームから説明するUIが重要ではないでしょうか。

○まとめ

プラットフォームは利益還元クリエイターは評価(リスペクト)が大事
・リスペクトは金銭以外に、作者が作品に対してコントローラブルであると支持することを含む
・そのため企業には都度仁義を切る工数炎上リスクがある
プラットフォームの役目は両者がきちんと割り切れるよシステムを作ること(それでユーザーが減っても)、クリエイターは作品の一部を手放すこと、企業はリスペクトのための工数を割くこと、の3つの割り切りが大事

○余談

今回の内容が私が一番書きたかった内容です。随分長くなってしまいましたが、次回で最後です。これまでの内容をまとめて、僕の考えた最強のアバターストアとアバターの価値ってなんだろう的な話をしたいと思います。

(追記)第五回書きました。アバターの価値と闇商売、そして最後にシリーズのまとめです。

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