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首のないことを選んだニケ

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解離
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#夢の花し

バイク乗りだった友人と、伊良湖岬をツーリングしていた。それは、彼女が最期に走った道。高台の鐘をふたりで鳴らすと、彼女はわたしの頭をひと撫でし光りへと吸い込まれていった。相変わらずの心配性だ。

不自由なふたり。

彼は鴨居に取りつけた鉤に紐を垂らし首を吊っていた。彼女は台所の隅で四角い卵焼きを焼いていた。 

鴨居からだらしなく垂れる首と紐の相性が良くないせいで、彼はいつも死ねずにいる。

四角い卵焼き器は、いつも燻っているおかげで彼女の焼く卵焼きは黒焦げてしまう。

彼は彼女のために死にたいし、彼女は彼のために卵焼きを焼きたい。

彼らは愛されている。

あの日、

声が掠れて、背中にありがとうって指で描いた。
懐かしい夢をみた。

いつのまに江ノ電から新幹線に乗り換えたのかな。
夢の加速度にtはない。
 
夢と夢のあいだには歩道橋があって、
陽が落ちる。

むかし、夕焼けに栞をはさんでおいたんだ。
もう思い出せないけど。 
 
 

夕焼けにはさんだ栞|悠凜|note(ノート)https://note.mu/yuurin/n/n34f2292ad344