2018年4月の記事一覧
びーるのみたいうた
つきなみなみにそそぐとこ、
やおらねがえりはねうさぎ。
こぼれたつきのゆくすえは、
ふかくふかくありました。
とっぷりくれたあかつきに、
のぼったつきのうたかたよ。
お子さまランチの温度
こどものこゝろを忘れない。
そんな大層なものはなくとも、お子さまランチが好きだ。
お子さまランチの歴史を遡れば、それは
人の世むなし、銀閣寺が銀ではないことに怒り狂った応仁の乱のさ中であったか、いや銀閣寺は応仁の乱のあとだった。それとも愚痴無知のソクラテスの頃にあったのかは知らない。
大層ではないそれが、大人になったいまは大層である。
然れどお子さまランチ。
わたしは、お子さまランチ
不自由なふたり。
彼は鴨居に取りつけた鉤に紐を垂らし首を吊っていた。彼女は台所の隅で四角い卵焼きを焼いていた。
鴨居からだらしなく垂れる首と紐の相性が良くないせいで、彼はいつも死ねずにいる。
四角い卵焼き器は、いつも燻っているおかげで彼女の焼く卵焼きは黒焦げてしまう。
彼は彼女のために死にたいし、彼女は彼のために卵焼きを焼きたい。
彼らは愛されている。
冬のひと
粗末にしたわけでなく漫ろにあった。
寥寥とにほひを果無むこともあった。
冬を被り、春に剝ぐ。
それは咲くために散った。
着せられていたものは暖かだった。
At night when I hear the Little Prince
正しいは悪ですと、彼は云った。
そうかもしれません。
大好きが離れていく。
嗚咽すら叶いません。然は然り乍ら、
こゝろを蒔くのです。
発酵
生乾きの洗濯物へ埋まるそこは、
金魚鉢の底に似た。咲く水藻絡み合うにほひに
豈図らんや懐旧の情浮き沈むとは、
翩ひらおよぐ。