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首のないことを選んだニケ

99
解離
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2018年4月の記事一覧

びーるのみたいうた

つきなみなみにそそぐとこ、
やおらねがえりはねうさぎ。
こぼれたつきのゆくすえは、
ふかくふかくありました。

とっぷりくれたあかつきに、
のぼったつきのうたかたよ。

お子さまランチの温度

お子さまランチの温度

こどものこゝろを忘れない。
そんな大層なものはなくとも、お子さまランチが好きだ。
お子さまランチの歴史を遡れば、それは

人の世むなし、銀閣寺が銀ではないことに怒り狂った応仁の乱のさ中であったか、いや銀閣寺は応仁の乱のあとだった。それとも愚痴無知のソクラテスの頃にあったのかは知らない。
 
 
大層ではないそれが、大人になったいまは大層である。

然れどお子さまランチ。

わたしは、お子さまランチ

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ひとりスイミー

ひとりスイミー

田圃をおよぐ蛙の輪唱と、引き売りの粧う鄙の空。
放熱に金魚は沈思を枕に眠る。

降るや戯へに金魚の嘘

降るや戯へに金魚の嘘

ひとに溺れるしあわせを知っている。
枯渇すらも、それは生と死を重んじるのだろう。

なかぐるみなどない。
すくなくとも、 
 

いまに偽りはない。

兎甘いかしょっぱいか

兎甘いかしょっぱいか

散る散ると、
金魚然として排水溝に殉じる。

とつおいつになく、暗がりに
照照と赤い目の兎つ追いつ

流れてきた。

不自由なふたり。

彼は鴨居に取りつけた鉤に紐を垂らし首を吊っていた。彼女は台所の隅で四角い卵焼きを焼いていた。 

鴨居からだらしなく垂れる首と紐の相性が良くないせいで、彼はいつも死ねずにいる。

四角い卵焼き器は、いつも燻っているおかげで彼女の焼く卵焼きは黒焦げてしまう。

彼は彼女のために死にたいし、彼女は彼のために卵焼きを焼きたい。

彼らは愛されている。

冬のひと

粗末にしたわけでなく漫ろにあった。
寥寥とにほひを果無むこともあった。

冬を被り、春に剝ぐ。
それは咲くために散った。

着せられていたものは暖かだった。

At night when I hear the Little Prince

正しいは悪ですと、彼は云った。

そうかもしれません。
大好きが離れていく。
 
 
嗚咽すら叶いません。然は然り乍ら、
こゝろを蒔くのです。

発酵

生乾きの洗濯物へ埋まるそこは、
金魚鉢の底に似た。咲く水藻絡み合うにほひに

豈図らんや懐旧の情浮き沈むとは、
 
 
 翩ひらおよぐ。