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悩めるDTMerのための「ゼロ秒思考」入門

皆さんは作詞・作曲・編曲、あるいはミックスで、あーでもないこーでもないと思い悩み、結局いつまで立っても曲が出来上がらない、という経験はないだろうか?

時間がないからと言って納得がいかないアイデアを「えいや」で進めると後で後悔するし、かといって時間をかけまくっても良いアイデアが出るとは限らない。DTMerならそんなジレンマを抱えることもあるだろう。

そんな着想→試行→失敗→改善のループを時短しつつ、さらに質も高めたいと思った方は、『ゼロ秒思考』を取り入れる価値がある人だ。


「ゼロ秒思考」とは

定義と目的

「ゼロ秒思考」とは、A4用紙に1つのトピックを1分以内に一日10ページ書く思考の技法のことである。この思考方法の目的は、ずばり以下の2点だ。

・素早く深く考える
・心を穏やかに保ち、気持ちを整理しつつ、頭を最高速で回転させる

『ゼロ秒思考』P.33

つまり、思考スピードを最大まで速める「思考の効率化」と、心を落ち着かせる「感情の鎮静効果」が得られるということ。多忙でストレスフルな現代人にとって、非常にメリットの大きい技法ではないだろうか?

黙考がなぜダメか?

人は誰でも、日々あーでもないこーでもないと頭の中で堂々巡りしている。あなたも例外ではないだろう。

だが、アイデアや不安は心に浮かんでは消え、形になっていかないのが問題なのである。書き留めないので蓄積されず、アイデアも深まらないの。それでなんとなくネットで検索し、あまりよいアイデアが見つからず、すっきりしないままあっという間に1、2時間が過ぎていく。。

こんな悪循環を繰り返してはいないだろうか?

時間のかけすぎ・かけなさすぎ

ならば時間をかけて考えたら、その分の成果が出るかというと、残念ながらほとんどの人にとってそうではないようだ。考える時間の長さとアウトプットの量・成果はほとんど比例しないと著者は言う。速い人は驚くほど速いが、遅い人は救い難く遅い、それが現実なのだ。

ただし、人によってはスピード重視という名のもとに、調査や確認をせず無防備に動いてしまう人もいる。

本来は「素早く情報収集をし、全体像を考え、代替案を立案し、比較検討し、決定後は強力に推進する」のがセオリだー。仮説を立てたなら、少なくとも仮説の根幹はすぐ確認、検証しておく必要がある。

概要

このような堂々巡り(長考)や無鉄砲さ(短考)は、どちらも成果を生みにくいアプローチといえる。そこで登場するのが、1分間という超短時間で脳を最高速で回転させることで成果を叩き出す「ゼロ秒思考」である。

つまり、(長考による)時間のロスや(短考による)失敗を失くすための最適解が「ゼロ秒思考」だと言えるだろう。そしてこの思考方法は以下の手順で構成されている。

①A4用紙を横置きにする
②1件1ページ
③1ページに4〜6行まで
④各行20〜30字
⑤1ページ1分以内
⑥毎日10ページ書く

『ゼロ秒思考』P.60

効能

要はA4用紙を使用したメモ書きなのだが、このメモ書きがあなどれない。なんとメモ書きには感情をコントロールする鎮静効果があるのだ。メモを書いて気分が落ち着くのは、人目をはばからず感情を思いのままに吐き出せ、可視化することで状況を客観視できる。それによってその物事の原因や解決方法、すべきでないことが見えてくるということ。

書き方

基本

タイトル

A4用紙を横置きにし、左上にタイトルを書いて下線を引く。タイトルは疑問形でも「〜する方法」などでもよい。

日付

右上に省略形で日付を書く。「2022-12-31」など

本文

各行をダッシュ(―)ではじめ、左詰めで書く(後から右に書き足すこともあるため)。

行数は4〜6行で、文字数は20〜30字を推奨。短すぎると具体性が低く、頭の中のもやもやを言語化する練習にならない。「SをVする」だと短くなってしまうので、「SをVして〜できるようにする」「〜にするために、SをVする」など目的がはっきりしていたほうが良い。

例:
✗アジェンダを決める

○会議のアジェンダをきちんと決め、事前に通知して期待設定をする

『ゼロ秒思考』P.92

ページ数

毎日10ページ書く。まとめて書くのではなく、思いついたときにさっと書くのがコツ。思いついた瞬間に書き留めることで頭の働きがよくなり、発想がさらに刺激されるからだ。

しかもアイデアとは基本的に一期一会なので、書き留めないと消え去って二度と現れないかもしれない。

時間の延長

1分以内に書いてさらに書き足したいときは15秒延長可能とする。

目的

日記ではなく、頭の中のもやもやをメモという行為によってダイナミックに吐き出していく「脳のお掃除」。

禁止事項

A4用紙を使った所定の書き方以外の方法に自己流でアレンジしてしまうこと。ノートや日記帳はもちろん、PCやデジタル機器を使った入力も本来の目的を達成できないのでNGだ。

クリップボードを使う場合

A4用紙をクリップボードに挟んで書く場合は、クリップが右側に来るように置く。そうすることで左詰めで書きやすくなり、ページをめくったときにタイトルが見やすいから。

移動中

A4用紙を広げられない状況下では、用紙を三つ折りにし、一番上に来る部分に普通にメモを書く。

発展型

発展型として、サブタイトルを追加し、メモを左右に分けて書く方法もある。その場合、アウトプットが2倍になるため書く時間も2分とする。

例としては、以下のような分け方が可能。タイトルに合わせて最適なものを考えよう。

「これまでの取り組み」↔「今後」
「現状の問題点」↔「対策」
「現象、症状」↔「本質的な問題点」
「競合他社のアプローチ」↔「当社の取り組み」
「強み」↔「弱み」
「第一案」↔「第二案」
「自分の役割」↔「〇〇(チームメンバーなど)の役割」

『ゼロ秒思考』P.174

整理と管理

メモの整理

4〜5日分溜まったら、5〜10程度のカテゴリーに分け、A4のクリアフォルダにラベルを貼って整理する。ラベルはクリアフォルダの右下から3センチほど離れたところに貼るのが良い。記入はボールペンではなく、マジックを使うこと。

例えば著者は以下のようなカテゴリーに分けているとのことだ。

①将来のビジョン、やたいこと:今後やりたいこと、方針や指針
②人とのコミュニケーション:人付き合い関係
③チームマネジメント:チームメンバーの動かし方
④新しいアイデア:ひらめいたアイデア
⑤考えたこと:上記以外で考えたことや考察したこと
⑥情報収集:生産性や効率を上げる情報収集について
⑦聞いた話:他人から聞いた話をできるだけ細かく書く(例外)
⑧ミーティング:会議の議事録(例外)

『ゼロ秒思考』P.197

メモの管理

上記の方法でクリアフォルダにカテゴリー分けして整理した直近メモは、机の左端に置いておく。全体の厚みが5〜7センチを超えてきたら、通し番号を付け古いフォルダは別に保存する。

毎日10ページかくと1年で3600ページになり、クリアフォルダ12個分になるので、可能であればダンボールなどに入れて保管しておく。

見直し

メモは3ヶ月後に1度、6ヶ月後にもう一度だけ見直し、後は見直さない。

見直すときは、上から新しい順になっているメモを、フォルダごとに逆順にそろえ、一番古いものを植えにして、日付順に並べ替える。数分でできるので、このときに流し読みする程度でよい。

まとめ

いかがだっただろうか?

「ゼロ秒思考」を習得すれば、アイデア出しや問題解決をこれまでになくすばやく簡単におこなえるようになる可能性は高い。みなさんもぜひ取り入れてみたらいかがだろうか。

では、良いDTMライフを!


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