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Pulsar Muのマスタートラックでの使い方

Pulsar Muは、Manley「Variable Mu Limiter Compressor(通称「バリミュー」)」のエミュレーションで、公式サイトで「The Ultimate Glue Compressor」と謳われているとおり音を「glue(接着)」するのを主な目的とするステレオコンプレッサー。評価が高いプラグインなのでセールで購入したものの、使い方がイマイチわからんという方も多いのではないだろうか?

Pulsar Muは、コンプレッサー、リミッター、アナログ系サチュレーターとして使用できる。ここではマスタートラックに挿す場合を想定した場合の使用法について、ざっくりと紹介していきたい。

特徴

ダイナミクスをコントロールするコンプレッサー的な挙動はもろんだが、Pulsar Muは真空管の「色付け」によってキャラクターを付与できる点が大きな特徴だ。奥まった音を「一段前に」出すことができるのが他のコンプレッサーとの違いだといえるだろう。

そのため、コンプレッサーは別に用意してMuは単に色付け目的で使用することも可能。その場合、Muで最初に色を作って、後段にコンプレッサーを挿すのが正解かもしれない。

使用手順

次にマスタートラックにMuを挿す場合の具体的な手順を紹介していく。様々なパラメーターがあるが、以下の順番で調整していくとよいだろう。上述のようにがっつりコンプレッションをかけるのではなく、色を付けたり音を前にだすことが目的であれば、それほど細かい設定は必要ない。

1. DUAL INPUT

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まずはここでリダクションが「3」程度になるよう調整する。値を少し入れただけでメーターが大きく振れてしまう場合は、ステレオに上がってきている音量自体が大きすぎるということ。ヘッドルームが「-5~6db」くらいになるように調整しよう。調整できる余地を残しておくことで、マスターで音量をかせいだり、ラウドネスをコントロールしたりすることがしやすくなる。

2. OUTPUT

次に、DUAL INPUTで設定したリダクションに対してOUTPUTで音量を揃える。

3. M/S処理(オプション)

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ミッドに音が集中しているときなどは、必要に応じて次の3つのスイッチを下に振ってM/Sモードにし、「R/S」でサイドの成分を上げていく。

LINK CONTROLS:コントロール(=パラメーター)のリンク
L-R M-S:L-Rはステレオモード、M-SはM/Sモード
LINK SIDECHAIN:サイドチェインのリンク

サイドチェインセクションの活用

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Pulsar Muには実機のバリミューには搭載されていないサイドチェインのセクションが付属しており、これが便利だと方々で話題になっている。キックを逃がしたいときや、ダッキングをしたい場合などはここで適宜調整する。

SIDECHAIN
INT:挿しているトラック自体の内部信号に反応(ドラムのキック成分を逃がしたい時など)
EXT:指定した外部のトラックの信号に反応(サイドチェインでダッキング効果を作る場合は「EXT」を選択する)
LOOK:入力信号を「先読み」するか「後読み」するかの設定。左回し(AHEAD)にすると信号を事前検出(先読み)してアタックを無くし、ピークをしっかり抑え込むことができる。BEHINDにすると後読みとなりトランジェントが透過していくのでアタックを強調できる

SIDECHAIN EQ

サイドチェインに対するEQ。ローカット、対象とする周波数の設定およびゲイン調整、高域のAIR感の調整

LISTEN

各項目をソロの状態で聴ける機能

オーバーサンプリング

Pulsar Muはオーバーサンプリングが全体のサウンドに影響する。クオリティーの向上を狙ってオーバーサンプリングする場合、x2、x4、x8ではキャラクターが変わるため、PCのスペックが許せば聴いてしっくりくるものを選ぶのが望ましい。

(補足)アナログモデリングを使用する際の注意点

アナログ機器では、想定している入力値を超えると意図しない歪みが出ることがある。アナログモデリングのプラグインではその挙動をシミュレートしていることが多いので、プラグインが正しく動作するようトラックの入力レベルは上げすぎないようにしよう。

VUメーターなどで適宜確認して、入力レベルが適正かどうかを確認するのがよいかもしれない。

まとめ

Pulsar Muは、CPU負荷が高くなく、使い勝手のよい真空管タイプのコンプレッサーだ。 超高速で動作するコンプレッサーではないのでトランジェント・コントロールには向いていないが、マスターに挿すことで適度に色付けができ、音が前に出てくるので、使い始めると重宝するかもしれない。

なお、コンプレッションをがっつりしたい場合は、Pulsar Muの後に別のコンプレッサーを挿してコンプを多段掛けするのもよい効果的。ぜひいろいろと試してみてはいかがだろうか?

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