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「帯状疱疹後神経痛は漢方薬で防げ!治せ!」

TONOZUKAです。


本日も漢方薬についての記事です。


帯状疱疹後神経痛は漢方薬で防げ!治せ!

以下引用

既存の治療薬では難治化することの多い帯状疱疹後神経痛(PHN)だが、漢方薬を活用することで、その発症を予防したり、発症後でも症状の改善効果を得ている医師がいる。そんな先達の医師による漢方薬の具体的な使用方法を紹介する。

 帯状疱疹に対する治療としては、抗ウイルス薬と鎮痛薬の併用が標準的だろう。ただし、「帯状疱疹に対する抗ウイルス薬や鎮痛薬には皮疹そのものを直す効果はなく、傷ついた神経を修復する作用もない」。こう指摘するのは、大野クリニック(埼玉県比企郡)院長の大野修嗣氏だ。皮疹への治療効果や、神経の修復効果を狙って大野氏が抗ウイルス薬や鎮痛薬と併用しているのは漢方薬の越婢加朮湯だ。

 岩手医科大学皮膚科学教室助教の井上剛氏らの研究で、越婢加朮湯を抗ウイルス薬と併用することで、3カ月後(約90日後)の疼痛残存率は6.89%(65人中4人)、半年後(約180日後)の残存率は1.72%(64人中1人)との結果が得られている。ファムシクロビル(商品名ファムビル)投与後の疼痛残存率を調査したFAMILIAR試験(治療開始後90日の疼痛残存率12.4%、180日で7.1%、J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014;28:1716-22.)などとの比較で、帯状疱疹後神経痛への移行が越婢加朮湯の併用で抑制される可能性が示されている。

井上氏とともに、越婢加朮湯による帯状疱疹後神経痛の予防効果を報告した岩手医科大学皮膚科学教室教授の天野博雄氏は「越婢加朮湯は、消炎鎮痛作用、抗ウイルス作用、免疫賦活化作用の3つの作用から神経痛を予防する効果があると考えている」と語る。越婢加朮湯は甘草、石膏、麻黄、蒼朮、大棗、生姜の6生薬より構成されるが、「麻黄が炎症を起こしている水を汗として排出しながら、石膏で炎症を取り、さらに蒼朮と石膏の利水作用が加わることで水疱や腫脹を改善する」と天野氏。加えて「あくまで私見であるが、帯状疱疹に対し越婢加朮湯を用いると抗ウイルス薬のみで治療するより水疱が早く乾く印象がある」とも語る。さらに、甘草に含まれる物質に抗ヘルペスウイルス作用があるとの研究やインターフェロン(IFN)誘導作用があるとの報告も存在すると説明する。

 天野氏は、抗ウイルス薬に越婢加朮湯を併用することを勧めたい患者として「高齢者や透析中の患者」を挙げる。

 帯状疱疹に対する代表的な抗ウイルス薬であるアシクロビル(ゾビラックス)やバラシクロビル(バルトレックス)は投薬時に腎機能を考慮する必要があり、疼痛管理に用いる非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)やプレガバリン(リリカ)も腎機能に影響するため、高齢者や透析患者では十分量を投与できないことがあるためだ。

 越婢加朮湯は腎機能への配慮を必要としないため、高齢者や透析中の患者にも投与しやすい。ただし、石膏の含有量が比較的多いため、天野氏は「胃腸が虚弱な患者には減量するか食後内服を指示するなどの配慮が必要であり、麻黄による心拍数増加や血圧上昇も考慮する必要がある」と指摘する。

帯状疱疹後神経痛の9割以上は漢方薬で治せる

 「九州・沖縄・山口『痛みと漢方を学ぶ会』」を2017年に立ち上げて、痛みやしびれの治療に漢方薬を積極的に活用している平田ペインクリニック(福岡県糟屋郡粕屋町)院長の平田道彦氏は、「炎症が強く、水疱を伴う発赤がある帯状疱疹は熱証と判断でき、越婢加朮湯と五苓散の併用が著効する」と言う。平田氏は、図1にあるように、帯状疱疹に対して越婢加朮湯と五苓散の併用を基本とするが、熱感や痛みが強い場合は黄連解毒湯を追加している。

 加えて平田氏は、「帯状疱疹後神経痛に移行した患者にも漢方薬は有効で、長くて3カ月程度で完治させることが可能。痛みが残存してしまう症例は極めて少ない」と語る。


帯状疱疹後神経痛に対する平田氏の治療は、痛みの性状として自発痛なのかアロディニアなのかの判別をまず行い、その痛みが温めて改善するのか、そうでないかの別を重要な指標としている。入浴などで温めて改善する自発痛の場合は寒証と判断し、次に痛む部位によって漢方薬を使い分けている。頭部や顔面、頸腕部という肩から上の痛みには、葛根加朮附湯と四物湯を併用し、肩から下の痛みには桂枝加朮附湯と四物湯を併用する。「葛根には後頸部から後背部の筋肉を緩める作用があり、頸部の交感神経の緊張を緩和するため」と平田氏はその理由を説明する。一方、胸脇部の痛みには、古書に準じて香蘇散を併用する」(平田氏)とのこと。

 温めても改善しない自発痛は、熱証が残っていると判断し、温清飲を投与する。

 アロディニアを認める場合は、陰虚が基本にあると考え、六味丸と麦門冬湯の併用を基本とする。ただし、温めて改善するアロディニアには、六味丸を八味地黄丸に変更し、痒みを伴う場合は当帰飲子を加える。

 これらの漢方薬が無効の難治例には、大防風湯と桂枝茯苓丸の併用を基本とし、冷えや消化器症状の有無などを配慮して漢方薬を調整している。

 帯状疱疹の急性期から神経痛に移行した慢性期までどの時期であっても、痛みのために心身の疲労が甚だしい場合は補中益気湯を投与する。

 平田氏は「帯状疱疹後神経痛の病態は時期とその患者の体質、体力によって異なるので、痛みの性状をよく見極めて適切に漢方薬を使えば短期間で鎮痛できる」とこれまでの手応えを語る。これらの治療が効かない場合は心因性などを考慮して、柴胡剤や気剤を併用して対応しているとのこと。

 水痘ワクチンの定期接種化の影響で若年世代の帯状疱疹が増加している(関連記事:帯状疱疹が若者に急増中! その理由とは)。加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種による帯状疱疹の増加も報告されている。実際、平田氏も、COVID-19のワクチン接種後に帯状疱疹を発症し神経痛に移行した患者を診療している。「(痛みが)怖くて風呂に入れない」と言っていた患者だが、上述のような治療戦略で1週間後には「楽になった」と改善効果を得たという。

 現在、帯状疱疹後神経痛に処方されることが多いプレガバリンやトラマドール(トラマール他)などはふらつきなどの副作用が強いことが問題視されている。加えて「ずっと薬の継続が必要というのは、病態そのものを改善させる効果はないということ」と平田氏は指摘する。「薬をやめる(廃薬)ことが可能な漢方薬こそ、帯状疱疹後神経痛を根本的に治療する効果があるといえる。ぜひ、漢方薬を帯状疱疹後神経痛の治療に活用し、患者を痛みから開放してほしい」と強く要望する。






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