見出し画像

らいさまに会いに行く

「えいッ!やあッ!!」

並べられた怪しい木々には、怪しいキノコが生えていた。

「毒キノコだからさ。誰か食べておなか痛くなったら大変だもんね!」
「うんッ!」
純ちゃんと一緒に叩き落とした怪しいキノコは、
ほんとは髭のおじさんが、山の中で大切に育てていた椎茸。

「らいさま(雷)に打たれて育った、怪しいキノコだと思ったんだもん。」

理屈にもならない理屈を並べて言い訳する私に、
収穫をすっかり台無しにされたおじさんは、
「・・・まあ子供のしたことだから、しゃああんめ」
「だいじ、だいじ。(大丈夫、大丈夫。)」

頭を下げまくる母の横で、
「少しきかないくらいが、な。」と優しい目。

今もことあるごとに
「貴方が小さい頃、栃木でほら、・・・」と繰り返されるその場所では、
きっとまだ、らいさまの椎茸が育てられているに違いない。

あの髭おじさんは、きっとらいさまだったに違いないもの。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?