西洋剣術と銃刀法①
2022年6月28日更新
西洋剣術を指導する仕事をしていると法律に関する質問を受けることが少なくありません。やはり習う側の人間も銃刀法のことが気になりますよね。
数年前からコスプレイヤーさんからの質問なども多く見られるようになり、10年前と比べると知られるようになったと思いますが、ここで改めて解説したいと思います。
銃刀法とは?
正しくは銃砲刀剣類所持等取締法といいます。長いので銃刀法と呼ばれています。
文字を展開すると、
銃砲や刀剣類を所持すること等について取り締まる法律
となりますが、もっとわかりやすく言うと
”あぶないもの”を持っている人を取り締まる法律
となります。
とっても細かいことを言うと、”あぶないもの”を取り締まる法律は銃刀法以外にもいろいろあるのですが、それらを細かくお話すると終わらないので、この記事では銃刀法を中心にざっくりとお話したいと思います。
「刀剣類」の定義
銃刀法第2条2項には刀剣類の定義が書かれています。
長い条文でしっかりとわかりにくく説明されていることがわかると思いますが、この条文のポイントは、
1. 刃渡り15cm以上の刀、槍、なぎなた
2. 刃渡り5.5cm以上の剣、あいくち、ナイフ
という2点です。
細かく分類するとわかりにくくなるので、まずは5.5cm以上というところを覚えると良いと思います。
「刃物」の定義
銃刀法にはもうひとつ、「刃物」についても規定があります。
銃刀法が刀剣類に関する法律ということは知られていますが、「刀剣類」と「刃物」という区別については知られていません。
「刃物」に関する法律は銃刀法の第22条です。
こちらも長い条文でしっかりとわかりにくく説明されていることがわかりますが、「刃体の長さが6cmをこえる刃物」という新しい概念が出てきます。
銃刀法をインターネットで調べると第2条と第22条が並べて紹介されていることが多いので、そのページを読んだ人は
1. 刃渡り15cm以上の刀、槍、なぎなた
2. 刃渡り5.5cm以上の剣、あいくち、ナイフ
3. 刃体の長さが6cmをこえる刃物
というように3つ並べてしまうので混乱が生じます。
例えば、
刃渡りと刃体ってどう違うの?
刀、槍、なぎなた、剣、あいくち、ナイフと刃物はどう違うの?
というような疑問が出てきたらそれが混乱のはじまりです。
そして、なんとか理解しようとして強引にこれらを全部まとめてしまうのです。
一回頭の中をクリアーにしましょう。
落ち着いて条文をよく読むとわかるのですが、第22条では「刃物の定義」については触れられていません。
第2条と第22条という数字が似ていること、それと「○センチメートルの○○」という書き方が似ていることから混乱しやすいところなのですが、刃物の定義は以下の通りです。
「刃物」の定義
この説明でなんとなくおわかりいただけるでしょうか?
ポイントは、「人を殺傷することができる」ということと「鋼と同等の性能をもつもの」ということです。
この定義を踏まえると、銃刀法第22条では
①刀剣類以外で
②6cmをこえる刃体を有した
③人を殺傷できる器物
を携帯してはダメですよ。
と言っていると解釈することができます。
「模造刀剣類」の出現
ここまでのお話で、第2条では刀剣類について言及し、刀剣類に含まれない刃物類を第22条で言及しているということはおわかりいただけましたでしょうか?
「刀剣類」と「刃物」についてざっくりと解説しましたが、一般的な日常生活のことだけであればこの2つだけで十分です。ただ、日本には忘れてはならない刀剣類がもうひとつあって、それこそが我々に最も関係する刀剣類なのですが、一般的に「模造刀」と呼ばれています。
法律的には「模造刀剣類」と言いますが、銃刀法が作られた当初、このカテゴリーはなかったんです。ただ、刀剣類や刃物による事件が発生したときに、どのどちらにも分類されない、どちらとも言い難いものが出てきてしまった。
さぁ、困ったということで「模造刀剣類」というカテゴリーを作ったわけですが、「刀剣類」と「模造刀剣類」の違いについてもいろいろとややこしいことになっています。わかりにくい法律がさらにわかりにくくなってしまったので、説明も大変なのですが、模造刀剣類については私たちにもっとも密接なお話なので、別の記事でしっかりとお話したいと思います。
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