「13、日本全体の富を増やすためには?③」

ライター 三浦優樹

13、日本全体の富を増やすためには?③
この項目では、前の項目で触れることができなかった点について自論を展開していきたいと思います。

日本全体の富を増やすためには、富を増やすための直接的な作業をする人間の割合を相対的に増加させる努力をすることが重要です。

この表現だけでは、いまいち分かりにくいと思いますので説明を続けていきます。

この話を分かりやすく理解していただくためには、『ラインとスタッフ』という概念を持ち込むことが肝要と言えます。

『ラインとスタッフ』とは、企業における職務の性質の違いで区別される概念です。

ラインとは、「利益を生み出す」という企業の究極的な目的を直接的に担う職務や部門を指しています。

具体的には、製造、営業、販売などの部門がラインに当てはまります。

一方のスタッフとは、企業の目的を間接的にサポートする職務や部門を指しています。

具体的には、企画、人事、総務、経理などの部門がスタッフに当てはまります。

これらがラインとスタッフの概念です。例えば、車を作る工場があったとしましょう。

この場合、車を製造する工員、車を販売する販売員、各方面に営業をかける営業マンなどがラインに該当します。

また、新しい企画を考える企画部門、優秀な人材の確保や適材適所を実現しようとする人事部門、縁の下の力持ちである総務部門、領収書などを適切に整理・記帳する経理部門などがスタッフに該当します。

これらを見てお分かりいただけると思いますが、付加価値を生み出す直接的な作業をしているのはライン部門の人たちです。

一方のスタッフは、付加価値を生み出す人たちをサポートすることで間接的に富を増やすことに貢献している人たちです。

もちろん、筆者は「スタッフ部門は必要ない」などという極論や暴論を持ち出すつもりは毛頭ありません。

ラインとスタッフは車の両輪のような関係であり、スタッフ部門の人たちも企業や日本経済を支えていく上で必要不可欠な存在であることは言うまでもありません。

ちなみに余談ではありますが、一部の企業ではラインの人たちがスタッフの人たちを見下している風潮が残っていたりします。

特に、技術系の会社ではその傾向が強いようです。

例えば、車を製造・販売している会社では実際に部品を組み立てて車を作っている工員たちが「会社の一番の稼ぎ頭は俺たちだ。俺たちが他の部門の人たちを食わせてやっているんだ」と考えていたりするわけです。

他にも、各部門の部長たちは対等な立場であるはずが、実際はラインに該当する製造部長が大きな幅を利かせていて、スタッフ部門の総務部長や経理部長が相対的に弱い立場にあるというような事例も見受けられます。

少し脱線してしまいましたので話を戻します。先述したとおり、スタッフ部門も企業を支えていくために必要不可欠な存在です。

しかし、企業の全従業員に占めるスタッフ部門の人間の割合が必要以上に膨れ上がることには問題があります。

筆者は、日本の企業は全従業員に占めるスタッフ部門の人間の割合が必要以上に高くなっていることを懸念しています。

日本の大きな企業では人事部門などのスタッフ部門の中にたくさんの部署が設置されている傾向があります。

例えば、人事部の中に『人事第一課』『人事第二課』『人事第三課』などの名称で似たような課がたくさん並んでいるケースがあります。

さらに、そのひとつひとつの課の中に『課長』『課長代理』『専門官』『主査』『係長』『主任』などの役職が設けられていて、人員が膨れ上がっているケースも非常に多いです。

これは、一度新たな部署や役職を設けてしまうと簡単にそれを廃止できない性質があることが関係しています。

新たな部署や役職ができると、そのポストに就いた人間はなんとしてでもその権益を維持しようとします。

例えば、「人事第三課は業務量の割に人数が多過ぎる。この際、人事第ニ課と合併させて廃止にしてしまおう」という動きがあれば、人事部長や人事第三課長をはじめとする人事部の人間はその動きを止めようと必死に画策に走ることは目に見えています。

こうしたことからも、スタッフ部門は人員が増えやすい反面、減らしにくい性質があるのです。

また、スタッフ部門を整理するのが難しい理由として、数値化することの難易度が高いことが挙げられます。

例えば、ライン部門に概念する営業は数値化がしやすいと言えるでしょう。

「今月の営業成績一位はまた◯◯君かー!」などというセリフは、多くの会社で聞かれるセリフです。

このように、製造、販売、営業などのライン部門は業績を数値化しやすい傾向があります。

一方のスタッフ部門はどうでしょうか。例えば、人事部の部長が「我が部署では優秀な人材をたくさん採用し、会社に大きく貢献しました」と自分たちの成果をアピールしたとしましょう。

ですが、採用した人間がどれくらい優秀で、採用しなかった人間がどれくらい採用するべきではなかったかを数値化することは容易ではありません。

最初の3年くらいは優秀な働き者だった社員が10年後には怠け者のような人間に変貌することは珍しいことではありません。

反対に、最初のうちは要領が悪く仕事が遅かった社員が10年後にはテキパキと仕事をこなす優秀な社員へと成長することだってあるはずです。

その他にも、経理部署の人間が「適切かつ迅速な経理処理を行い、会社に貢献しました」とアピールしたとしても、やはり「どのくらい適切かつ迅速に経理処理ができたのか」を数値化することは難しいでしょう。

このように、人事、経理、総務などのスタッフ部門は業績を数値化しにくい性質があります。

そのため、スタッフ部門をより適切な形に整理することが難しいというわけです。

逆説的な言い方をすれば、スタッフ部門の成果を『見える化』する努力をすることで、スタッフ部門を適切な人員に整理することが可能になります。

そうすることで、スタッフ部門が必要以上に膨れ上がることを防ぎ、その余剰分を直接的に付加価値を生み出すライン部門に充当することができるようになります。

例えば、ライン部門の人員が750人、スタッフ部門の人員が250人で合計1000人の従業員が働いている企業があったとしましょう。

そして、スタッフ部門の無駄を省き、スタッフ部門の人員を50人削減し、かわりにライン部門の人員を50人増やしたと仮定します。

この場合、今までは一人のスタッフ部門の人間で平均3人のライン部門の人間を支えていたものが、一人で4人の人間を支えることができるようになったことになります。

また、ライン部門が750人から800人に増えたことにより、直接的に生み出される付加価値の総和が増加することになります。

その結果として、日本全体の富も増えていきます。以上のことから筆者は、この『ラインとスタッフ問題』を改善・解決していくことが日本全体の富を増やす鍵を握ると考えています。

次の項目では、日本全体の富を増やすための究極的な施策について展開することで締めくくりをしたいと思います。

#社会問題 #経済


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