『コリアタウン殺人事件』感想


監督,主演:わからない

総合的な評価★★☆☆☆(2.0)

感想はネタバレを含みます。

SNS(主にTwitter)をザワつかせた謎のモキュメンタリー作品?『コリアタウン殺人事件』を見た。

amazon primeビデオで視聴可能な作品で、日本語字幕もある(この字幕がなんというか、チープで作品の雰囲気にマッチしている)ので見ようと思えば簡単に視聴できる。ただ、手ブレがひどく見るに堪えないカットも多く人におすすめできる作品ではなかった。

主人公がカメラを片手に、近所のコリアタウンで起きた奇妙な殺人事件を追っていくPOV(カメラの視線と登場人物の視線が一致した撮影手法)ホラーだった。

作品の主軸は殺人事件の捜査なのだが、一般人の主人公が調べたところで(客観的に)重大な事実が発覚したり、事件の闇を明かすようなジャーナリズム的な面白さはない。主人公は徐々に狂っていき、近所のキリスト教系宗教団体の「神父たち」を敵対視していくのだが、その根拠が主人公のいいがかりや夢の内容云々で視聴者を置き去りにしている印象を感じた。

この作品は、求職中の主人公が"捜査"にのめりこんでいくうちに妄想と陰謀論にとりつかれていく様子を描いたドキュメンタリーなのではないかと思った。しかし、主人公はカメラに映らない。主人公の視点で、主人公の編集によって彼が狂気に蝕まれていくさまを見るのはなかなかキツイ。

主人公と同棲中の彼女?がたびたびカメラに映り、主人公に助言をしたりするのだが後半になると彼の異常性を指摘し、捜査をやめさせる。おかしくなっていることに無自覚な主人公がそれを邪険にするシーンなど、信用のできない語り手というか作り手の異常性が発露してきてゾクゾクした。

ストーリー?的にはかなりグダってて、毎回主人公が朝起きてなんか家でだらだらしゃべって、街に出て調査、みたいな感じ(アドベンチャーゲームっぽい)で単調で飽きてくるのだが、元軍人?の只者ならぬ感じがするジジイが出てきたところは面白かった。

画像1

こいつ↑がキャラ濃くて主人公を導く賢人的な登場をしたかと思うと、言ってることが矛盾だらけでただのホームレスやんけ!ってなる。

こいつが何の目的で主人公と関わったのか整理しようと思ってもこいつの発現の何が本当なのかわからないので理解のしようがない。マジでなんなんだこいつ。

全編通してそうなんだけど、"未知の恐怖"を煽られる。事件の全貌もわからないし、主人公の推理もよくわからない。だれが撮影した作品なのかすらわからないし、これがだれかのホームビデオなのか、あるいは全部ひっくるめて仕組まれた作り物なのかもわからない。

自分の理解の及ばないところで主人公が苦しんでよくわからない存在に脅かされているのは不気味だった。作中に問題が解決するわけでもなく鑑賞後(これはいったいなんだったんだ......)という気持ちに支配される。

もしかしたら主人公も僕と同じように"謎"を解明しようとしてその瘴気にあてられておかしくなってしまったのかもしれない。解読できない謎に対して、納得のいく"妄想"を作り上げた結果、主人公が狂ったのだとしたら、この謎に向き合わない方がいいのかもしれない。

このエニグマは、解読不能なのだから。

筆:葉入くらむ







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?