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「くりかえす鼻血〜前編〜」

皆様こんにちは。今回のすくナビの担当は竹村と、血液疾患が専門の坂田です。テーマは「鼻血(ハナヂ)」です。これを適切に説明するには、1回のブログではおさまりきらないので、すくナビ初の前後編の2回でお送りします!今回の前編の担当は竹村です。

今回は“教えて!近大先生〜血液疾患編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。

今回のご質問です。

「5歳の男の子です。鼻血がよくでるのですが、大丈夫でしょうか?」

早速ですが、結論です。

「ほとんどの場合、問題ありません。適切な方法を知り、落ち着いて対応しましょう!」

この結論にいたる理由について3つにわけてお話しします。

1. 鼻出血の原因には局所的要因と全身的要因があり、小児では局所的要因が多い。
2. 鼻中隔にキーゼルバッハ部位という細かな血管が集まる部位があり、外的要因でその部位から出血しやすい。
3. 止血時にはキーゼルバッハ部位を意識して、落ち着いて5-15分程度圧迫する。

1. 鼻血(鼻出血)の原因には局所的要因と全身的要因があり、小児では局所的要因が多い。

こどもが鼻血(鼻出血)をだすことは多いです。こどもが鼻血をだす原因は、大きく2つあります。鼻の中に問題があり鼻血がでる「局所的要因」と、全身に影響のでる病気のひとつの症状として鼻血がでる「全身的要因」です。
この前編では主に「局所的要因」についてお話しいたします。下の表1)をご覧ください。

表1

こどもは局所的要因の中でも特に、外傷により鼻血をだすことが多いです。ご自身のことを思い返すと、鼻をいじってしまい鼻血がでた、という経験のある方もいると思います。
これにはアレルギー性鼻炎が影響することもあります2)。こどもの場合は、ダニやほこりを原因としたアレルギー性鼻炎が多いです。このタイプの鼻炎は、季節を問わず鼻がたれたりつまったりします。それが気になって鼻をいじってしまうというわけです。早いと2-3歳の幼児でもアレルギー性鼻炎のお子さんもいますので、発熱もないのにしょっちゅう鼻がでて触ると鼻血がでる場合は、アレルギー検査を行っても良いかもしれません。

2. 鼻中隔にキーゼルバッハ部位という細かな血管が集まる部位があり、外的要因で、その部位から出血しやすい。

前の項で鼻をいじって鼻血がでることが多いと書きましたが、これには「キーゼルバッハ部位」の存在が関係しています。キーゼルバッハ部位とは、鼻の左右をわける壁(鼻中隔)の鼻先の下側にある場所です。下の絵をご覧ください。私の描いたヘタな絵で恐縮ですが、オレンジ色の円で囲んだ部分がキーゼルバッハ部位です。なお、キーゼルバッハは、ドイツの耳鼻科医であるヴィルヘルム・キーゼルバッハに由来します。

キーゼルバッハ部位

キーゼルバッハ部位には、上の絵の様に細かな血管が集まり網の様になっています。そのため、ここに外的な力が加わると出血しやすいのです。

3. 止血時にはキーゼルバッハ部位を意識して、落ち着いて5-15分程度圧迫する。

鼻血を止めるには、キーゼルバッハ部位を意識して、落ち着いて圧迫します。すなわち、鼻の根元ではなく尾翼(小鼻のふくらみ)を押さえます。体勢は坐位または少し前屈みにします。下の写真1)をご覧ください。

写真1)

鼻つまみ法

鼻つまみ法では、母指と示指で尾翼をつまむようにして、約5-15分圧迫します。母指圧迫止血法では、母指で出血側の尾翼を圧迫します。この方法では、圧迫しない側の鼻腔で鼻呼吸が可能なので、比較的続けやすいです。
いずれの方法でも、血を止める際にはこどもがじっと安静を保つことも大切です。小さなこどもでは、鼻血がでたことに動揺し、泣いてしまうこともあります。養育者はそんなこどもに寄り添う姿勢を見せ、止血できることを説明します。また幼児では、いずれの止血法であっても、養育者の膝の上に座らせ安心できる状態で止血するのも有効です。
一方で、これらを心がけながら5-15分圧迫しても止血できないこともあります。その時は、医療機関を受診する必要があります。医療機関では薬剤を用いた止血をするとともに、一般的な原因によらない鼻血の原因を検索します。「くりかえす鼻血〜後編〜」では、止血の仕組みを説明するとともに、一般的な原因によらない鼻血の原因(全身的要因)についてお話する予定です。

ここまでのお話で、鼻血がよくでるが大丈夫か、という疑問にお答えしました。そしてその結論が、ほとんどの場合で問題なく、落ち着いて対応すればよい、ということがご理解いただけたでしょうか。この様な話を直接聞きたい、または実際に検査を受けてみたい、という方は近畿大学病院小児科を受診してください。また、受診の希望はないけど、ご質問やご意見などがあれば、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。

近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。

竹村 豊

1) 橋本亜矢子、小児科診療 2019; 1037-1041
2) 白倉真之他、JOHNS 2020; 1381-1383


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