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療法士が身近な地域で貢献するために知っておきたいこと(第3回)高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施とは?

1.健康延伸に向けた取り組み

 内閣府は平成30年の経済財政諮問会議にて,健康延伸に向けた取り組みとして,以下の重点取組分野を設定し,2つのアプローチで格差を解消すると示した1).
①健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進
②地域間の格差の解消
 また,経済財政運営と改革の基本方針2018では,予防・健康づくりの推進として,「高齢者の通いの場を中心とした介護予防・フレイル対策や生活習慣病等の疾病予防・重症化予防,就労・社会参加支援を都道府県等と連携しつつ市町村が一体的に実施する仕組みを検討するとともに,インセンティブを活用することにより,健康寿命の地域間格差を解消することを目指す(一部抜粋)」2)と記されている.
 さらに,まち・ひと・しごと創生基本方針2018では,疾病や健康づくりの推進による地域の活性化として,「人生100年時代を見据えて健康寿命の延伸を図るため,地域における高齢者の通いの場を中心とした,介護予防・フレイル対策(運動,口腔,栄養等)や生活習慣病などの疾病予防・重症化予防を一体的に実施する仕組みを検討する(一部抜粋)」3)とも記されている.
 しかしながら,高齢者の抱える身体的脆弱性や慢性疾患,認知機能の低下,社会的繋がりの低下といった課題は相互に関係しているものの,一人の高齢者に対し,保健事業や介護予防等のサービスがバラバラに行われている状態が課題としてあげられていた.また,後期高齢者の保健事業は健康診査が中心で,社会参加等を含む多様な課題まで視野に入りづらく,幅広い対象者へのアプローチが困難であった.さらに,介護予防等における生活機能の向上に向けては,疾病予防等の医学的観点を盛り込むこととされていない点も課題であった.それらを解決するために,2018年より「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」が推進されている.

2.保健事業と介護予防の一体的な実施

 高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施とは,①地域の高齢者の医療,介護,健診の個人データから,地域の健康課題を整理分析と,②様々な課題を抱えている可能性のある高齢者を把握し,アウトリーチ支援等を通じて,必要な保健事業や介護予防のサービス等に結びつけ,③保健事業において,社会参加を含む多様な課題まで視野に入れた取組としていくことで,個別状況に応じて様々な取組を活用しながら、効果的な事業をコーディネートしていくものである.ただ残念なことに,構想当初は,地域を担当する医療専門職には「保健師・管理栄養士・歯科衛生士」のみが記載されており,「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士」の名称はなかった.2020年3月の厚生労働省の通知にてようやく,地域を担当する医療専門職に,医師,歯科医師,薬剤師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士等が明記された(図1,2)4).これによって,地域を担当し地域支援に参画する明確な道が,リハ専門職にも開かれたのである.

図1 高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施(市町村における実施のイメージ図)
図2 企画・調整等/地域を担当する医療専門職の概要 出展: 厚生労働省:高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施について・https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/000596656.pdf

参考資料

1)    平成30年4月12日経済財政諮問会議 加藤大臣提出資料(一部改変)・ https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000335684.pdf
2)    内閣府:経済財政運営と改革の基本方針 2018 について ・https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/2018_basicpolicies_ja.pdf
3)    内閣府:まち・ひと・しごと創生基本方針 2018 について・https://www.chisou.go.jp/sousei/info/pdf/h30-06-15-kihonhousin2018hontai.pdf
4)    厚生労働省:後期高齢者医療の調整交付金の交付額の算定に関する省令 第6条第9号に関する交付基準について・https://www.japanpt.or.jp/info/asset/pdf/01_200331.pdf

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