人間万事塞翁が馬 山中伸弥先生編

中国の故事で、次のようなお話がもとになっています。

 ある時、塞翁(さいおう)さんの馬が、逃げ出しました。
 近所の人たちは、慰め、励ましました。
 塞翁さんは、平然としていました。
 何日かすると馬が戻ってきました。しかも、たくさんの馬を引き連れて。
 近所の人は喜びました。「よかったねえ」と。
 塞翁さんは、平然としていました。
 また、しばらくすると、おじいさんの息子が、その馬から落ちてけがをしました。
 近所の人は見まいに行き、慰め、励ましました。
 塞翁さんは、平然としていました。
 しばらくすると、戦争が起き、若者たちが兵たちに駆り出されました。
 しかし、塞翁さんの息子は、けがをしていたため、戦争にいかずにすみました。

 何が起こるか分からないし、起こった出来事も、何が将来の幸せや不幸につながっているかも分かりません。だから、一喜一憂しないでいこう、あるいは、幸せや不幸は、後になってみないと分からない、というような意味があるそうです。

 「人間万事塞翁が馬」。この言葉は、ノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥先生の研究室にも掲げられています。ご自身の次のような経験から、実感されていたそうです(近畿大学卒業生への講演)。

  • 神戸大学医学部卒業後、最新設備の整った病院に勤務できて喜ぶ。

  • 整形外科医を目指したが、手術が下手で、教官の医者からは「邪魔中(ジャマナカ」と言われ続け、高校生からの夢はかなわず、挫折。

  • 臨床医をあきらめ研究者の道に入る。

  • アメリカ留学後、帰ってきた日本ではうまくいかないことが続き、自信を失う。

  • 偶然が重なって、iPS細胞を発見。ノーベル賞を受賞・・・  

 卒業生へのエールとして、「特に、一見良くない事が起こったその時こそ、いや、これはチャンスかもしれないと考えてもらいたい」と話されていたそうです。ご自身の経験がにじみ出る言葉には、迫力と言うか、エネルギーを感じます。
 河合隼雄先生と同様に、山中先生もキャリア内容は違っても、病に苦しむ人のために自分ができることは何か・・・と考え、目の前の事に一生懸命になっていたら、自分が思いいもしなかったキャリアを積まれたところが印象的でした。

 「トラブル」「困ったなあ」と思う出来事に出遭っても、「どうして、この一件が、未来の幸せにつながっていないと言い切れるだろうか」と勝手に「不幸」と判断しないで、自分にとっての意味を考えると何か見えてくるかもしれないなあと思いました。塞翁さんみたいに、平然としていられないかもしれませんが、目の前の出来事は、きっと、未来のしあわせにつながっている思って、前を向く気持ちはもてるかなと思いました。

 みな様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです




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