(2/2)勉強の哲学(千葉雅也著)を読んで

「勉強とは自己破壊である」というのは私にはすごく分かるんです。この命題は奇を衒ったわけでもなく、謙遜でもないし自虐でもありません。本当にそうなのです。
私も中学生までは周りのノリに乗れて友達もそれなりにいたのですが、高校ぐらいから(勉強ではないですが)本を読むようになって、周りのノリに乗れなくなったり分からなくなったりしました。コミュニケーション能力も落ちた気がします。何かを主張しようとするとき、その主張とは別様の主張が同時に頭をよぎり玉虫色の表現になったり、口を滑らして抽象的な語彙がポロッと出たりして相手を困らせたりしたこともあります。またそう簡単に軽いタッチの言葉(ヤバいとか)を使えなくなったり、求められていない蘊蓄をしゃべりそうになったりもします。
ただ、勉強とは自己破壊であるということを読んで、頭に浮かんだのが、宮台先生のアート論です。アートとは人の心に傷をつけるものだといいます。
娯楽は、例えばシャワーを浴びてサッパリするや、映画を見てカタルシスを得るはそれを体験する前と後で自分が同じ地平にあるといいます。
それに比べてアートというのは人の価値観や生き方(倫理)に関わるもので、それを体験した後では、体験する前と同じ生活を営めなくなります。よって、ホメオスタシスからズレているわけですから、ある種の不快さを伴う。
自己破壊を伴う勉強はアート性がある、と玩具的に言ってみます。

次に勉強の哲学における方法論を論じてみたいと思いますが、あまり理解できませんでした。意味わかんないこと書いていると思いますが、気にしないでください。キーワードはアイロニーとユーモアです。
前提として、環境のコードとは不確定性とともにあり、それ故に変更可能性が常に存在します(3人で犬の話をしていても、3人が話す犬の会話内容が同一ではありません)。
アイロニーとは謂わばツッコミのことで、何らかの環境のコードについて根拠を深く問うことを言います。
例えば公園でペットのワンちゃんがいて、皆で「かわいいよねー」って言い合っている。そこではペットのワンちゃんを褒めるというのが環境のコードです。或いはそういう風に言い合って仲間意識を高めると言うのも環境のコードといえるでしょう。そこに「かわいいとなぜ言えるのか」とか「かわいいとは何か」と言い、ツッコミを加えるわけですね。それが思考の技の一つです。
とはいえ、なぜ、なぜ、とアイロニーが過剰になりすぎると、究極の真理を求めてしまいます。究極の真理を求めようとしても、それは得られない。なぜなら上述したように言語というのは本質的に環境依存的で、それを無視して意味づけがされないからです。
アイロニーが過剰になる前に、つまり環境のコードを深追いするのではなく、コード自体を変換します。それをユーモアと言います。アイロニーがツッコミなら、ユーモアはボケですね。
先程の例なら、「そのワンちゃんって、つまり私のくるぶしってことだよね」と言ってみる。他の二人は私のくるぶしという新しいコードに順応しなくてはならなくなります。このようにコードを変換していくのが、思考の2つ目の技です。
しかし、それもやり過ぎると話が無制限につながり、広がっていってしまうのでどこかで切断しないといけません。その切断の基準にこそ、その人の享楽的なこだわりがあります。

これを勉強の話につなげると、上述のアイロニーとユーモアを、自分を構築しているコードに対して行います。
まず自分の生活の場面を思い浮かべて、そこにどんなコードがあるのか疑いを向け、問題化させます。つまりアイロニカルに考えてみます。できるだけ抽象度を上げて、大きな構造的問題を考えることがコツです。そして一つのキーワードを出します。
そして、問題の追及に軸足を置きつつ、別のキーワードを連想することでヴァリエーションを増やします(=ユーモア)。
そして新たに出たキーワードに対して追求するか、はたまた連想するか・・・とやっていくと際限なく勉強の範囲が広がっていくので、どこかで仮固定的にベターな結論を出します。そのどこかの基準が、自分の享楽的なこだわりなのでした。
享楽的なこだわりには前提がなく、端的に無意味です。ただ仮固定的に中断するために必要でした。その享楽的なこだわりにも環境のコードがあるため、今度はそこにアイロニーをかけていき、またユーモアで広げ・・・といったことを行い享楽的なこだわりをも変化させていきます。
以上のプロセスを経て、勉強によって環境のコードによる束縛から抜け、可能性をたくさん考えられるようにします。

後半の方法論は面白そうなので、次回具体的に(途中まで)やってみます。できるかどうかわかりませんが、それをすることで言わんとすることも分かるかと思うので。
ちなみに本書では自分の享楽的なこだわりを見つけるためのワークとして、欲望年表をつくるというのがあるのですが、やってみました。キーワードは「土着性」、「本質性」、「直接性」でした。

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