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どうしてバタリアンなのか

私が生きてきた昭和のこと。

あれは多分80年代の話。やっと一家に一台のビデオデッキが普及し始めたのだと思う。
若かった母は流行に敏感で、様々な映画を借りてきては見せてくれた。

オーメン、キャリー、エクソシスト、死霊のはらわた、13日の金曜日、エルム街の悪夢など。

偏っている。
そして子どもが見て喜ぶとは思えないチョイス。完全に母の趣味全開である。

当時、東映まんがまつりなどにも連れて行ってくれたので、ドラゴンボールで盛り上がる私を横で見ていたはずだ。
なのになぜ。

母のチョイスの中で印象に残っているのは「バタリアン」である。
ゾンビは喋るし、ドロドロだし、とにかく衝撃を受けた。

最近になって改めて見てみたが、ホラー映画には付き物のセクシーなシーンあり、コメディ要素もあり、ゾンビの造形も素晴らしいバランスの取れた良い映画だった。

ただ私が見たのは幼稚園、もしくは小学校低学年の事である。
刺激が強過ぎるだろう、母よ。

母は当時、映画を見る時に必ず食べるものがあった。
フライパン型で販売されている、ガスコンロで作るポップコーンとコーラである。
出来立ての熱々ポップコーンを紙コップにいれてくれた。
初めてコーラを飲んだのもその時だ。
部屋に広がるポップコーンのバターの香りや、パチパチ弾けるコーラの甘い刺激を今でもはっきりと思い出せる。

現在私は母となり、自宅映画のお供にレンジで作るポップコーンとコーラを用意して家族と楽しんでいる。
ポップコーンを食べる我が子を後ろから見ていると、あの時の自分と母を思い出し、何だか胸がいっぱいになった。

その時見ていた映画は「仄暗い水の底から」である。
母の事をとやかく言える立場ではなかったが、これだけは言いたい。
母は洋画派、私は邦画派である。

ちなみに母は健在で、先日私に「テリファー」を勧めてきた為、丁重にお断りした。
母と娘というのはいつまで経っても分かり合えないものなのかもしれない。







#映画にまつわる思い出

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